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対となる能力

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「当時の野党はそれなりに強く、満を持しての政権交代」
 ということであったが、やることなすことが、最悪で、結果は数年ですぐに、元に戻ったということになった。
 さすがに、その時の野党よりも、さらに、ひどい野党になっているので、前の時のように、
「やらせてみよう」
 などという考えは、もはや。
「亡国へ一直線」
 ということになるだろう。
 それが、今の時代における、
「最速で、奈落の底」
 ということになり、これが、老人のいう、
「国家の寿命」
 というものを分かりやすくしているということなのだろうか?
 老人は、どうして、
「国家の寿命が分かる」
 というのか?
 それを、今から話をしてくれるということであった。

                 大団円

「ちょっと、場所を変えよう」
 と言って、店を出た老人は、山本を伴って、歩き始めた。
 夜のとばりはしっかりと降りていて、すでに、寝静まっているところもあるのではないか?
 とまで思えたが、まだ時刻は九時過ぎくらい、普段であれば、
「宵の口」
 ともいえるくらいの時間だった。
 老人が連れていってくれたのが、
「街の北部の象徴」
 と言ってもいいくらいの場所である、
「小高い山にある、鎮守様」
 であった。
 馴染みのある場所であったが、そこは、今まで、
「自分一人で佇むところ」
 と思っていただけに、まさか誰かに連れてこられるなどということがあろうはずもないち思っていたので、気持ちとしては、複雑な思いであった。
 鳥居をくぐり、神社に入ると、そこには、見覚えのある境内がそびえているのだが、いつもに比べて、少し明るくなっているように思えてならなかったのだ。
 明るさが影響しているのか、境内も、いつもに比べて、少し狭くなっているかのように感じる。
 こんな夜中に立ち寄ることは、そんなに頻繁にあるわけではないので、その明るさと広さの関係が、
「普段と違う」
 という感覚で、露骨に感じることができるというのは、ある意味では、新鮮な気がするのであった。
「それにしても、この老人はいったい、どういうつもりだというのだろう?」
 店にいる間は、普通に話をしているつもりであったが、店を出てから、ここまで、完全に、この老人に洗脳されているかのように思えたのだ。
 しかし、歩きながら冷静になっていくにつれて、
「今日は最初から、洗脳されていたかのように思える」
 と感じていた。
 店の雰囲気も、今日はまったく違っていたように思えるわけで、マスターが、普段とまったく変わらなかっただけに、余計に自分と、老人の間の関係が、店の中で浮いていたかのように感じた。
 そのことを、マスターは分かっていたのかどうか分からないが、その素振りは、分かっていようがいまいが、委細お構いなしと言ったところであろうか。
 ただ、マスターが、途中から、話をすることを拒否していたような素振りがあったが、それが、唯一の違和感だったと言ってもいい。
 しかし、そのおかげで、老人との会話に違和感を感じることなく入ることができたのだから、それも、
「自然ななりゆき」
 ということで、
「マスターには、変わったところがなかった」
 というには、十分ではないだろうか?
 そんなことを考えていると、老人との話を思い出す。
 最初は、
「タイムトラベル」
 の話から、徐々に、
「歴史の話」
 に移行してきた。
 その移行にも、違和感があったわけではない。
「実に自然に、話を持っていけた」
 と、我ながら、話の展開を、
「新鮮だった」
 と感じることで、うまく導けたと感じたのだ。
 老人は、その時のことをまず口にした。
「先ほどの店での会話に、そのヒントはあったんじゃがな」
 というではないか。
「ヒントですか?」
 と、いろいろ思い出してみるが、会話を思い出そうとすると、今度は、次第に、一つのことに集中させようとすると、おぼろげになってくるのを感じるのだった。
「覚えていないのか?」
 と感じたが、それが、今までの自分の感覚と違っているように思えるのだった。
 だが、違っているといっても、
「まったく分かっていない」
 というわけではない。
 自分の記憶や意識の中で、
「よく分かっていることのように思うのだが」
 という感覚でありながら、その思いが今では、
「凝縮されたかのように感じる」
 ということであった。
 それを感じた時、
「ああ、そういうことか」
 と感じた。
 その時、同時に老人も顔が緩んで、微笑みかけてくるのを感じた。山本が理解したことがその瞬間に分かったかのようであった。
「そうだ、今この場では、主役はこの老人だった」
 と思った。
 この老人が、
「なぜ、国家の寿命が分かるのか?」
 ということであった。
「わしはな。タイム何とかというのは、正直信じているわけではない。理屈に合わないことは信じられないというのが、今まで生きてきたうえでのモットーであってな。その多いは今も変わっていないんだよ。だが、そんな中で、一つだけ、矛盾しているかも知れないが、理屈が分からないことで、信じられないことだが、信じないわけにはいかないと思っていることがあるのじゃ。それが、この神社と、店で起こっていることなんだ」
 という。
「それはどういう?」
 と聞いてみると、老人は、境内を遠い目で見つめるように見ているのを横目で見ると、明るくなったと思った境内だったが、その明るさがさらに老人の目には、明るく見えてくるのであった。
 その明るさは、瞬いているようで、まるで、目の前で、火が燃え盛っているかのようにであった。
 そして今度は、もう一度境内に目を移すと、そこは、普段と変わらぬ明るさで、そして、広さもいつもの広さだった。
「見たじゃろう?」
 と言って、さらに続ける。
「ここは普段からもう少し明るい場所なんだが、鳥居から境内を見ると、その明るさが凝縮されたように、目に移り。そこで意識が境内から自分に移りこむ。しかし、ほとんどの人はそれを意識しない。なぜなら、完全に写りこんでしまうと、移りこんでしまったということを、忘れてしまうからだ」
 というのだ。
「じゃあ、今の遠い目というのは、それを忘れないようにするためですか?」
 と、理解できたわけではないのに、そのことを感じた山本は、自然にそのことを口にできたのだが、
「そうじゃ」
 と、老人が口にしたのも、別に意識してのことではなかった。
 老人が、
「きっと、あなたは、夢を見たという感覚になっていると思うじゃ。その夢というのは、出来事が夢を見ているような内容という意識なのかも知れないが、実はそうではない。客観的に見て。相手が夢を見ているかのように見えるのを感じると、それが、夢の世界というものを、外から見ていることで、いろいろな感覚がマヒしてくると感じているのではないかな?」
 というのを聴いて、
作品名:対となる能力 作家名:森本晃次