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「共犯の因果応報」と「一周回った完全犯罪」

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「いずれは警察に捕まってしまう」
 ということを考え、
「それならば、最初から自首することで、捜査員や裁判においての心証を少しでもよくしておこう」
 と考えるくらいしかありえない。
 ただ、それであれば、いまだ、捜査がまったく進んでいない状態で、出頭してくるというのはおかしいだろう。
 気が弱い男であれば分からなくもないが、少なくとも、今までチンピラとしては、
「百戦錬磨」
 ということで、
「第一線における鉄砲玉」
 とみられている男が、簡単に自首してくるというのは、ありえないといえるのではないだろうか?
 しかも、
「やつは、やくざの組からすれば、重要な役目ということでしか表に出てこないような男なので、もし、彼が本当にやったのだとすれば、組としては、保身を考えるということからも、自首すると言っても、止めるのではないだろうか?」
 というよりも、
「組が、やつの罪を他のやつにおっかぶせるくらいのことをして守ってやるくらいではないか?」
 それを思えば、やはり、
「組の重要な場面ということでの、やつの出馬だった」
 と言ってもいいだろう。
 そのあたりが、実際に、
「辻褄の合わない、矛盾である」
 といえるのではないだろうか?

                 通り一遍の捜査

 警察の今のところの捜査は、それまで、まだほとんど時間も経っていないということで、文字通りの、
「通り一遍の捜査」
 というものだった。
 その内容としては、
「まずは、被害者のその日の足取りからであったが、被害者の和田という男は、その日の午後から、有給休暇というものを取って、病院に行ったということだった。
 その日は、朝から風邪気味だということで早退をしたのだが、それが、
「半休」
 という形になったのだ。
 実際に、午後は病院に行って、解熱剤を注射してもらったことで、そのまま帰るつもりだったという。
 そこまでは、すぐに足取りとしては分かったのだが、そこから先が、すぐには分からなかったのだ。
 というのは、
「やつが、夕方には、飲み屋で飲んでいた」
 ということは、その後の足取りを誰かが見ていたり、一緒に行動をしている人がいればのことであった。
 しかし、実際には、病院を出てから、飲み屋に行くまでの3時間近くというもの、やつが、
「どこにいて、誰と何をしていたのか?」
 ということが分からなかった。
 今でもそれが分かっているわけではなかった。
 どうしてそれが分かったのかというと、
「被害者には、恋人がいて、本当であれば、仕事が定時で終わり、その後、彼女と待ち合わせて、一緒に食事に行くはずだった」
 ということを、会社の人間は知っていたというのだ。
 被害者の和田という男は、
「ウソがつけない」
 というタイプの男だった。
 というのは、
「正直者」
 ということよりも、
「ウソをつくことで、違った印象をまわりに見られたくない」
 ということであり、
「印象操作をしたくない」
 というところがあって、いい意味で言えば、正直者と言ってもいいのだろうが、それよりも、
「勝手な想像を自分に持たれたくない」
 ということからであった。
 彼は、
「人を利用する」
 ということに掛けては、その実力には定評があるのだった。
 だから、
「人を利用するには、自分を正直者だとまわりに思い込ませる必要がある」
 と考えていて、だからこそ、正直者だということを信じ込ませる必要がある。
 それは、
「いい意味での正直者だ」
 というのは当たり前だが、
「都合の悪いことでも、正直だ」
 と思わせないと、うわべだけのことだと思わせて、信用してもらえなくなると考えていたのだ。
 それを思えば、
「人から、中途半端に嫌われないようにしたい」
 ということと、次元が違っているといえるであろう。
「嫌われないようにする」
 ということと、
「正直者ということで信頼してもらえる」
 ということは、
「似て非なるもの」
 ということであり、
「まったく違うものだ」
 と自覚することで、まわりには、今度は自分から、
「情報操作をする」
 ということにならなければいけないということであろう。
 だから、
「特に彼女に対しては、ウソはつかない」
 と思っていた。
 実際に、その日、彼は、
「飲みに行かなければいけなくなった」
 ということであり、本来なら、一緒にいった人からも、
「誰にも言わないでくれ」
 と言われたのだが、さすがに彼女に対してだけは、ウソがつけなかった。
 ただ。
「相手が誰か」
 ということだけは、かたくなに言わなかった。
「相手は男の人で、仕事関係の人だ」
 とは言ったが、彼女がそれを信じたかどうか分からない。
 しかし、彼には、彼女が、
「信じる信じない」
 というのは関係ないことであった。
「ただ、自分が考えていることが間違いない」
 ということであれば、それでよかった。
 正直なのは、
「中途半端ではない」
 ということであり、それが自分のモットーだということで、彼女にも、
「ただ、伝えた」
 ということであった。
 もし、
「これで彼女が、俺のことを嫌ったとしても、彼女は、それだけの相手なんだ」
 と思って、
「彼女を諦める」
 というくらいのことは、別に構わないとまで考えていたのであった。
 だから、
「その日、俺は誰かと一緒に飲みに行った」
 ということは、彼女の耳には入っていた。
 ただ、それが誰なのかということは分からないというのは、犯人側にとっては、
「別に大きな問題」
 ということではないはずだ。
 しかし、犯人側の計算外として、
「あの男が、彼女に、一緒に飲みにいくということを告げたということで、自分たちの計算外のことをしているのではないか?」
 という疑心暗鬼に陥ったことであった。
 実際には。その日だけのことであれば、そうもなかっただろう。
 しかし、犯人グループは、どうやら、前から、被害者を葬ろうと計画を立てていて、その計画が、
「思っているのと、少し違った方向に行っている」
 ということで警察とすれば、
「何か、警察にスパイを送り込む」
 という必要があったのだ。
 実際には、席巻の時に、担当弁護士と話をすることになるのだが、その弁護士が、
「組織に関係のある弁護士」
 ということで、その時に情報を得ていた。
 西田が、その弁護士と関係があるということを隠しさえすれば、何とかなるというわけで、表向きには、
「組織とはほとんど関係のない」
 という弁護士を雇うことで、弁護士というものが、
「依頼人の利益を守る」
 ということであり、それに徹している弁護士を見つけてくることで、その作戦は、半分はうまくいくというものであった。
 実際に、警察の情報はほとんど得られなかったことで、組織と出頭してきた西田には、計算外だったと見えるが、実は他にも考えていることがあり、
「半分」
 というのは、そのことだったのだ。
「事件は、思ったよりも簡単に解決した」