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もろ刃の剣の犯罪

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「成功すれば、本当に完全犯罪であるが、失敗する可能性が高いから、余計に、犯罪としては、その脆弱性が強く、
「実際には、ありえない事件」
 ということになるのではないだろうか?
 そして、もう一つ分かったこととして、
「警察は、被害者が誰であるか?」
 ということに関して、まだ情報がないようだった。
「これでもかとばかりに、事件を宣伝しているのに、被害者が誰なのか分からないというのは、ちとおかしいのではないか?」
 と感じた。
 これは、犯人が、犯罪の発覚から、被害者の身元が分かるまでという間に、時間の経過が必要だと思っているということではないだろうか?
 この事件には、他の事件のように。
「すぐに分かることが分からなかったり、普通はなかなか発見されないように、犯人が考えるようなことが最初から明らかだったり」
 と、おかしなところがいろいろあるのだった。
「この事件でも、ライトノベルで読んだように、事件の合間に時間を掛けなければいけないところがあり、全体の時間経過から考えて、いずれは見つかるというところに余計な時間を掛けないようにと考えているのかも知れないな」
 と感じたのであった。
 だが、身元は、正直、すぐに分かったのだ。
「被害者がなぜ分からなかったのかというと、その被害者は、女性だと思われたが、実は男性だった」
 ということであった。
 もちろん、解剖すれば分かったことであるが、今の時代であれば、
「性転換手術」
 というものが、
「今の時代であれば、市民権を得ている」
 と思われているのかも知れないが、
「まだまだ世間に知られては困る」
 と思っている人も多いことだろう。
 だから、警察はこのデリケートな問題を捜査する時、なるべく、極秘に捜査することにしているのだった。
 これは、
「まだまだ、コンプライアンス違反としての、問題が大きいので、警察がそこに触れてしまうと、責任問題に発展する可能性がある」
 ということであった。
「警察の行き過ぎ捜査が招いた訴訟」
 などということになると、対面を重んじる警察としては、厄介な問題だからであろう。
 だから、被害者の身元というのは、
「ごく一部の人間」
 にしか分からなかったのだ。
「なるほど、性転換をした人間であれば、異常性癖と言われても仕方がない」
 と警察は思っていた。
 しかし、そう思えば思うほど、
「犯人側にとって、好都合なのではないか?」
 と感じた。
 今回の犯罪において、これらが、
「模倣犯である」
 と考えると、
「何を隠すための模倣犯なのか?」
 ということを考えたのだ。
 ライトノベルが模倣犯となったものは、
「動機を隠す」
 ということでの犯罪であったが、これは、今回の犯罪において考えると、
「もちろん、動機を隠すということに変わりはないだろう」
 とも思え、それを考えると、
「模倣犯の目的の一番は、動機を隠す」
 というところにあるのかも知れないと感じた。
 しかし、それだけではない何かが、この事件に含まれていると思えた。
 完全犯罪というものがどうしても頭に引っかかっているのは、
「事件の特異性」
 というものからだった。
「耽美主義的な発想」
 であったり、
「猟奇殺人を思わせるかのような、性転換が絡んでいる」
 ということから、
「ひょっとすると、この人を殺した犯人には、この人を殺すという動機のない犯罪なのではないか?」
 と思えたのだ。
 警察も最初は確かに、
「被害者の身元」
 の公開を渋っていたが、
「もう隠し切れない」
 というところまでくると、それまで捜査してきたことを、少しずつ明かしてくるようになった。
「被害者は、意外といろいろな人から恨まれている」
 ということで、
「犯人は、この中にいる」
 ということで、たくさんの動機を持った人間をしらみつぶしに当たることで、絞っていこうという考えであった。
 確かにたくさん人がいるわけだが、逆に人海戦術を使ってでも、一人一人を潰していけば、犯人にたどり着けるということになると、たかをくくっていたのだ。
 そして、結局、最後には、
「パズルのピースが合わない」
 ということになり、どうなるかというと、
「一人一人潰していくと、結果、誰も残らなかった」
 ということになるのだ。
 さすがに、また一人一人をしらみつぶしに洗うというのは難しいことで、そこで、
「彼に恨みがある人間」
 というのを、捜査線上から外さなければいけなくなり、結局は、
「事件は振り出しに戻った」
 ということになるのだ。
 そこまでに、どれだけの時間が掛かったというのか、それを考えると、警察も、
「くたびれもうけ」
 ということになってしまうのであった。
 そして、捜査員は、その時初めて、
「これが完全犯罪というものか?」
 と初めて、この事件で、捜査における完全犯罪というものを感じることになるのだ。
 事件捜査というのは、
「減算法」
 で行うことが普通である。
 表に出ていることから、捜査することによって、情報を集めてくる時点では、加算法ということになるのだろうが、それがいわゆる、
「初動捜査」
 というものである。
 しかし、状況がある程度分かってきて、推理できるだけの情報が揃ってくると、そこから、
「余計なものを排除する」
 ということで、警察の推理が始まるというものである。
 だから、捜査員とすれば、最初に、
「これは完全犯罪ではないか?」
 ともし、完全犯罪が頭をよぎるとすれば、最初しかないといってもいいだろう。
 しかし、今回の犯罪に関しては、状況が揃ってくるにしたがって、完全犯罪というものが頭をもたげ、捜査で次第に、視界が狭まってきたところで、またしても、今度は、
「捜査における完全犯罪」
 というものを感じるのであった。
 二度目に感じる完全犯罪というキーワードなので、今度は余計に、その感覚が強くなってくる。
 初めての時は、おぼろげであったが、二度目では、ハッキリとその言葉を感じるようになると、須藤も、同じように考えるようになっていた。
 そして、
「完全犯罪を行う上で、一番考えられることとして、そこに、交換殺人という言葉が潜んでいる」
 と感じるのであった。
「交換殺人というのは、実行犯と教唆を行う人間との二人がいて、それぞれ実行犯には、動機がなく、そして、教唆というべき真犯人には、完璧なアリバイがある」
 というものである。
 しかし、これは、完全なもろ刃の剣であり、
「最初に実行犯として犯行を犯した人間が、完全に不利だ」
 ということだからである。
 何といっても、最初に自分が殺してほしいと思っている人間を殺してもらうことで、その時点で、その人は安全だといってもいい。
「実行犯が自首する」
 などと言い出さなければいいわけで、実行犯が自首すれば、いくら教唆の話をしても、警察は信用してくれるわけはなかった。
 しかも、
「交換殺人」
 ということを言わなければならず、それをいうことは、自分が殺人の教唆を白状しなければならないということで、さらに罪を深めるということになるだろう。
作品名:もろ刃の剣の犯罪 作家名:森本晃次