もろ刃の剣の犯罪
だから、交換殺人というのは、片方にはいいかも知れないが、もう片方は、すべての責任と犠牲を抱え込んでしまうということになるのだ。
普通の精神状態であれば、それくらいのことはすぐに思いつくのだろうが、計画する方とすれば、
「必ず相手に計画を実行させなければならない」
ということで、厄介なことになる。
しかし、
「交換殺人というのは、成功すれば、完全犯罪となる」
といって、相手に、そのことを思い込ませれば、暗示に掛けることで、
「成功させなければいけない」
というほど切羽詰まった人で、あるだけに、計画に乗ってくる可能性は十分にあるというものであろう。
今回の犯罪は、歪なことが多すぎて、
「猟奇殺人」
「耽美主義」
「異常性癖」
という、変格派探偵小説と呼ばれるものを、実際には、しっかりと計画された犯行計画が潜んでいるという、それこそ、
「もろ刃の剣の犯罪」
ということになるだろう。
実際に、この事件を計画したのは、須藤であり、須藤が模倣した計画の元になった小説というのは、
「佐久間教授が、学生時代に描いた小説だった」
ということであった。
「佐久間教授が、須藤の大学において、ミステリーサークルの先輩であった」
ということが、この事件解決の裏にあったことは、一部の人しか知らない。
警察の中にも、
「交換殺人」
「模倣犯」
という考えで動いている人がいたのだ。
その人がいなければ、事件解決には及ばなかったといえるだろう。
( 完 )
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