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もろ刃の剣の犯罪

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 今回は、たまたま電車の時間の間が悪かったのでタクシーを利用しようと思ったのだが、実際には、電車で帰ってもいい時間帯ではあった。それは、自分に限ったことではなく、特に、金曜日の夜などという、普段から多い日ということであれば、そもそもが無理なのかも知れないが、そういうわけではないということで、タクシーもうまく拾えたということであろう。
 おかげで、帰りつく前に、コンビニで軽い食事を買い込んで、食べていると、すぐに睡魔が襲ってきて、気が付けば、いつも寝る時間くらいになっていたのだ。
 だからと言って、早く目が覚めたというわけではない。
 そもそも、須藤は、
「ショートスリーパー」
 であった。
 夜中に何度も目が覚めて、トイレに行くか、そのまままた寝てしまうかということは、日常茶飯事、だから、この日も、4時前に目が覚めたのだが、それは、一つは、
「仕事のことが気になって」
 ということでもあった。
 昨夜は9時に退社することになったのだが、実際には、
「やりたいことをすべて終わった」
 というわけではなかった。
 あくまでも、
「キリが良かった」
 というだけで、
「次の節目になるまで仕事を続けてしまうと、今度は、最終電車に間に合うかどうか」
 ということであった。
「結局タクシーを使うことになるのでは?」
 ということになるのだが、実際に、
「そこまで仕事をしても、それでも、終わったわけではない」
 ということを考えると、
「明日に回した方が、仕事の効率がいい」
 と考えたのだ。
 無理にその日、仕事をするよりも、リセットする方がいいと思ったのは、
「最近、疲れがたまっている」
 と感じたからであった。
 疲れがたまっている時、仕事の段取りで、一度、
「このまま仕事をするか、リセットするか?」
 ということを考えてしまった場合、
「リセットする方がいい」
 ということを、自分で理解できるようになっていたからだった。
 一度、どうしようかと悩んでしまって、無理にでも強行しようとすると、そこから先は、自分の中で、
「自由が利かない」
 ということになるのであった。
 それまでは、仕事に集中しているおかげで、
「気が付けば、もうこんな時間」
 ということで、
「時間の有効活用ができている気がして、疲れというものが、充実感と満足感に変えてくれる」
 ということになり、疲れも、心地よいものとなるのであったが、
「辞め時というのを間違える」
 ということになれば、
「実際の時間は、感じている時間のわりに、なかなかすぎてくれない」
 ということになるのだ。
 自分では、スムーズに言っているつもりでも、実際の時間が過ぎていないのだから、
「まったく進んでいない」
 という錯覚に見舞われてしまう。
 そうなると、
「まるで、無駄な時間を過ごしたかのように感じる」
 と思えてくるのだった。
 もちろん、仕事をしているのだから、
「無駄な時間」
 などというものがあろうはずがない。
 それでも、そう思えてならないということは、自分の中で、
「何のために仕事をしているのか?」
 という疑問を呈することになり、その感覚は、
「まるで、時間が逆回りしてしまっているかのようだ」
 と思わされるに違いない。
 そうなってしまうと、その日だけではなく、翌日まで尾を引いてしまうかも知れない。
 仕事が気になって、睡眠が中途半端になってしまい、翌日はっ前の日の疲れと、中途半端な睡眠のせいで、自分で思っているほどの頭がまわらないということになり、それが憤りとなって、苛立ちに繋がると、
「余計なことしなければよかった」
 と考えるのだ。
 もちろん、
「プロジェクトを完成させるまでには、一度や二度くらいは、無理をしないといけない」
 ということもあるかも知れない。
 しかし、
「なるべくなら、そんな事態は少ないに越したことはない」
 と思うので。
「無理を押し通すことはない」
 と感じ、タクシーを使うのも、自分の中で無理をさせないということに結びついてくるのであった。
 だから、その日は、
「通勤ラッシュに遭うこともないわ」
 ということで、早めに家を出れるのがありがたかったのだ。
 それに、もう一つ考えたのは、
「会社に行って、一仕事終わらせれば、ちょうど近くの喫茶店でモーニングが食べれるので、時間があったら、そこに行こう」
 と考えたのだ。
 そこは、最近では珍しい。まるで、
「昭和の純喫茶」
 というものを思わせるところで、就職してから唯一といってもいい、
「馴染みのお店」
 だったのだ。
 だから、始発で会社にいくのは、今までにも何度かあったことで、プロジェクトのない時であれば、
「二度寝」
 としゃれこむのだろうが、プロジェクト中は、自分が第一線で仕事をしている時も、始発でくることが多く、自分の中では、
「いつものことだ」
 と考えているのであった。
 だから、この日も、始発で駅までやってくると、
「駅までは真っ暗だったが、電車を降りると、ほぼ夜が明けるくらいまで明るくなっていた」
 といってもいいだろう。
 始発というのは、6時前くらいに都心部の役に到着する。自分としては、
「11月くらいだから、6時というと、まだまだ真っ暗だ」
 と思っていたが、意外とそうでもなかった。
「そういえば、前に早朝出勤をしたのは、まだ暑さが残る時期だったかな?」
 ということで、必要以上に日の出が遅いのではないかという感覚を持っていたのであろう。
 というのも、それだけ、一気に寒さが襲ってきたからであろう。
 さらに、帰りは、定時に帰れることはまれにしかなかったので、いつも、日が暮れてから会社を出ていた。
 そういう意味で、季節感というものが、ほぼなくなっている中で、一気に寒気がしてくるのだから、錯覚も致し方のないことになるであろう。
 電車の中は、一つの車両に数人しか乗っていなかったが、自分の中では、
「思ったよりも多いな」
 という感覚であった。
 そしてその時同時に感じたのは、
「この時間に乗っているこの人たちのほとんどは、毎日、この時間に出勤している人なんだろうな?」
 ということであった。
 スーツの人が多いことで、
「人によっては、7時出勤という時差出勤なのかも知れない」
 とも感じた。
 これは今に始まったことではなく、世の中が、
「24時間営業」
 という店が増えてきたことで、都心部も、
「眠らない街」
 ということになったことで、それだけ、シフト制の人も多いことだろう。
 これが都心部が始発の電車であれば、
「飲んでいて、終電に間に合わなかった人が帰っているということなのかも知れないな」
 と思ったので、
「上りと下りで、まったく違った光景がみられるかも知れないな」
 と思ったのだ。
 下りであれば、夜通し起きていて、疲れ果てて電車に乗り込んでいる人が多く、上りは、これから仕事ということで、頭の中は臨戦態勢が整っているといってもいい状態であろうから、頭の中もすっきりしていることだろう。
作品名:もろ刃の剣の犯罪 作家名:森本晃次