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もろ刃の剣の犯罪

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 寒さで体が凝り固まってしまうと、一度下手を打つと、なかなか起き上がることができないということになるであろう。
 それを考えながら、まわりも気にしながら歩いていると、今度は、
「必要以上なところを見ないようにしないといけない」
 と考えるようになった。
 必要以上に見てしまうと、
「錯覚を引き起こす可能性は高まってくる」
 と考えたのだ。
「こういうサーチライトの中では、錯覚が一番怖い」
 と思っていた。
 というのも、
「普段は、真っ暗な道として意識して気を付けているのに、今日からはその必要はないということで、安心しきってしまうのが、一番の油断大敵というものではないか?」
 と感じるからであった。
 普段と違うということを意識してしまうというのは、
「自分が気を付けなければいけないということがどういうものなのか?」
 ということを、必要以上にならない程度に気にする必要があるということであった。
 普段という言葉、いつもであれば嫌いだった。
 というのは、あくまでも仕事の上でということであるが、
「普段と同じことをしていても、成長はない」
 と考えるからで。それは、自分が現場の第一線にいる頃には、先輩や上司から教えられ、今度は、自分がそれを部下に教える番だったからだ。
 しかも、今の立場とすれば、口で説明するわけではなく、
「背中を見て、会得してもらう」
 という立場に差し掛かっているのであった。
 そもそも、自分も、
「口で説教を受けたわけではない」
 ということであった。
「自分も、先輩の背中を見て、勉強し、独学で学んだのではないか?」
 という、
「自分を顧みる」
 ということで、
「人のふり見て我がふりなおせ」
 ということわざにあやかって、
「部下の手本にならなければいけない」
 ということを分かっているのであった。
 だから、自分の行動も、
「なるべく意識しなくても、勝手に身体が動くというくらいにしておく必要がある」
 と、
「仕事の上で」
 という条件付きで、考えているのであった。
 だから、その日も、
「公園の芝生を横目に見ながら、あまりまわりを見ないようにしながら、公園を一気に通り過ぎる」
 ということを最優先で考えたのであった。
 その日は、ちゃんと足元を見ていたので、危ないこともなく、まわりを下手に意識することもなく通り過ぎていった。
「一瞬のことだったな」
 と感じながら、そのまま駅に行くための、地下道に近づいて行ったのだった。
 翌日は、なぜか早めに目が覚めた。気が付けば午前4時頃、
「二度寝するか?」
 とも思ったが、その気はなかった。
 今までに二度寝をすると、起きるのにきついと思い、さらに、目覚めの時、頭痛が襲ってくる確率を考えると、
「このまま、会社にいくか?」
 と考えたのだ。
 今からであれば、始発電車に間に合うだろう。早く行って、仕事を始めて、公こそ早く変えればいいわけのことで、それを考えると、すっかり目が覚めていたのであった。
「何も残業したくてしているわけではない」
 と思っていた。
 できるなら、残業手当をもらうよりも、早く帰る方がいい。どうせもらっても、使う暇があるわけでもない。酒に消えるか、パチンコに消えるかということで、今のような残業をしていると、パチンコになど、いけるはずがない。
 パチンコ屋は、だいたい十一時までが営業時間なので、残業なしで仕事を終えて、すぐにいかないと、時間的に中途半端である。
 出始めが、閉店前くらいであれば、いくら大当たりが続いていたとしても、機械を止められてしまえば、それで終わりということになるのだ。
 それを考えると、
「残業を終わってパチンコ屋に行くのは辞めた方がいい」
 と思うのだった。
 かといって、飲み屋というと、以前は、馴染みのお店もあったが、最近はご無沙汰であった。
 そもそも、彼は人見知りなので、遠ざかってしまった店には、気を遣ってか、なかなか生きにくいというものだ。
 普通であれば、
「あら、珍しいわね」
 といって、久しぶりに顔を出したことで、喜んでくれると思うのだろうが、この時の、
「珍しいわね」
 という言葉を、皮肉だと思い込んでしまうところがあるのが、須藤の悪いところといってもいいだろう。
 だから、最近は、飲み屋に行くとしても、誰か一緒にいくくらいしかないのであった。
 しかも、一緒に行く連中は、自分よりも忙しかったりして、部署も違うので、なかなか時間が合うこともない。そうなると、飲みに行くこともなくなってしまうのも当たり前だというものだ。
 だから、最近では、
「残業するのが当たり前」
 と思っていた。
 普通であれば、
「残業手当がもらえるから、何とか頑張れる」
 と思うのだろうが、須藤は、
「宵越しの金は持たない」
 という感覚で、
「もらったものを貯金しよう」
 という気はなかった。
 だから、他の人から見れば、
「贅沢だ」
 というようなことを、平気でしていたのであった。
 というのは、
「疲れた時など、電車の時間まで間があるという時は、電車を待っているのが億劫になるので、タクシーを使って帰る」
 などということを平気でしていた。
 一回使えば、四、五千円ということで、
「本当にもったいない」
 といえるだろう。
 しかし、飲みに行っても同じくらいのお金を使うことになるので、
「別にもったいないとは思わない」
 と感じていた。
 もちろん、詭弁であることは分かっているが、逆に、
「モノは考えよう」
 といってもいいだろう。
 それを考えると、タクシーを使うことがいいことなのか悪いことなのか、その時の感情によって変わってくるのであった。
 そもそも、
「残業代の分を使うのだから、別にもったいなくもない」
 と思っていて、お金に執着がある人だけが、
「残業した分を使う」
 と考えると、もったいないと思うが、
「元々あったお金を使う」
 と思うと、そうでもない気がする。
 同じお金であるが、考え方によって、もったいなさというものをいかに感じるかということが違ってくると思うのは、
「自分が年を取ってきた証拠なのか?」
 と思うのだった。
 前の日は、午後九時に会社を出ても、時刻表を見ると、電車が出たばかりで、次の電車まで、駅構内で、20分以上待たなければいけないことは分かっていた。
「タクシーを使うか」
 ということで、タクシー乗り場のあるターミナルにいくと、タクシーは結構待っていて、客はいなかった。
 最近のタクシー業界は、タクシー業界に限らずであるが、運転手の人手不足という問題が起こっていて、
「深夜に近づくにしたがって、客の方がタクシーの数を上回り、なかなか配車が手配できない」
 という状態になるということを知っていたので、不安であったが、その日はラッキーだったということであろうか。
「いや、時間的に、穴場の時間だったのかも知れない」
 とも思えた。
作品名:もろ刃の剣の犯罪 作家名:森本晃次