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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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失せ物探し 探偵奇談26 後編

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あしたてんきになあれ



帰宅し手を洗って居間に行くと、紫暮が胡坐をかいた足に猫を置いて本を読んでいた。騒動が一段落し、とりあえず平穏が戻って来た。瑞はなにげない日常にほっとする。大会に向けてやることは山づみだ。着替えようと自室へ行こうとした瑞を、紫暮が呼び止めた。

「瑞、ちょっと座りなさい」
「え?」
「京都に帰る前に、瑞に話しておくことがあるんだ。座って」
「え…やだよ…」

まだ何も言ってないだろう、と紫暮は苦笑した。瑞は、こうやって話があると前置きされることが怖い。祖母が病気で、もう助からないということを伝えられたときを思い出すからだ。トラウマと言っていい。これから怖い話をされるのだという嫌な前振り。

「別に重い話じゃないから。とにかく座れ」

お説教か?と身構えた瑞だったが、紫暮から出たのは驚くべき話だった。

「俺、京都府じゃなくてこっちの教員採用試験受けることにしたんだ。もう出願してある。七月末には試験を受けにまたこっちに戻ってくる」
「…え?は?」

兄は京都で教職に就くものと疑っていなかった。続けて紫暮は衝撃的なことを告げた。

「こっちで就職できたら、俺は須丸の籍を抜ける。じいちゃんの養子になってこの家を継ぐことに決めた」

なんだって?

「父さんも母さんもじいちゃんも、承知していることだ。あとはおまえが許してくれるなら、俺はそうしたいと思ってる」

突然のことに、瑞は返事ができない。理解が追いつかない。紫暮は構わずに続けた。

「母さんは一人娘で兄弟もいない。京都にお嫁に行ったから、この家がじいちゃんを最後に終わってしまうことをすごく心配して、自分が家に残って婿養子をもらえばよかったのかってずっと思い悩んでいたんだ」
「思い悩むなんて……俺、そんなのちっとも知らなかった…」

母のそんな素振りや様子を、瑞は微塵も感じ取らなかった。瑞自身は家のことなどこれまで何も考えてこなかった。そうか、祖父の代でこの家は終わってしまうのだ。

「父さんも、母さんを京都にお嫁にもらったことで、ずっとこの家のことを何とかしたいって考えていてくれた。定年退職してから二人でここに戻ることも考えたみたいだけど、そのときまでじいちゃんが元気かどうかはわからない」