失せ物探し 探偵奇談26 後編
家族を亡くし、大切な物すべてを奪われ、孤独に死んでいった少女。
「瑞に名前を読んでもらえて、ちゃんと行くべきところに行けたんだな」
よかったな、と伊吹がいつもの優しい声で言った。そして瑞もまた、穏やかに頷くのだった。
必ずしも必要な力ではないかもしれないと、瑞は言ったが、郁はそうではないと思う。瑞には必要なのだ。使命とでもいうのか。たくさんの人を悲しみから救うために与えられたのかもしれない。
「てなわけで解決〜!俺らの合宿もとりあえず安心そうだねえ」
「みんなありがとう」
「いいよいいよー。ポンコツな瑞くんもかわいかったけどね、まあハッピーエンドってことで」
予鈴が鳴り、颯馬が立ち上がる。じゃあまたねーとにこやかに去って行った。
「また放課後にな」
伊吹も行ってしまい、二人きりになった。
「一之瀬もありがとう。俺のお世話」
「え?そんな。、あたしは殆どなにもしてないし…」
なんだか照れくさくて目をそらしてしまう。
「でも、見ててくれた。俺のこと」
目を逸らした郁のことを、瑞は視線をそらさずに見つめているのがわかった。
「俺が、ポンコツじゃなくなっても、ちゃんと見てて」
その声がとても真摯で、どこか切羽詰まっていて、郁は思わずその顔を見てしまう。
「一之瀬に、見ててほしい…」
作品名:失せ物探し 探偵奇談26 後編 作家名:ひなた眞白