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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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失せ物探し 探偵奇談26 後編

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「頼む、返してくれ」

瑞は懇願した。背後の気配がすうっと言葉を飲み込んで、耳を傾けている気配。

「すごく大切なものなんだ…」

自分と祖母を繋ぎ、かつての自分自身とを繋ぎ、そしていま、大切な人たちと繋がっている力なのだ。
この力があったから、伊吹に出会えた。郁を好きになれた。颯馬と友だちになれた。祖母の思いを知って、ほんの少し。自分は優しくなれた。

「俺がこの世界で生きていくために…そして大切な人守るために必要な力なんだ」

少女は沈黙しているようだった。瑞は己の手をそっと外す。目は閉じたまま、真摯に彼女に語りかけた。

「きみのような…困っている子や泣いている子を助けたい…。俺にはそれができる。気づかずに通り過ぎるのじゃなく、足をとめて涙をぬぐってあげたいんだ」

それはかつて、祖母が望んだことだった。もう瑞は、怖がりな子どもではない。立ち止まって目を向けて、耳を傾けて、手を差し伸べることができる。それがとても尊いことだとわかる。

「俺にしか、できないことなんだ」

だからどうか返してほしい。自分には必要なんだ。


じ ゅ う き ゅ う …


声が、ゆっくりとカウントを始める。焦りのせいか、喉の奥が瞬時に乾いていくのがわかった。


は ち な な …


(だめか…いや、諦めるな…)

この子をわかってやりたい。夢の中で激昂していたこの子の気持ちを。思いを。美しいものに囲まれて幸せそうな彼女の奥に潜む、その悲しみに気づいてやりたい。自分になら、それができる。瑞にしか、できないのだ。