失せ物探し 探偵奇談26 後編
声でわかる。この遊びのどこに子どもの頃夢中になったのか不思議なくらい、単純で面白みがない。
「大人数でやるから楽しいんだろうな」
「ですよねえ。まあ今回は仕方ないですよ。続けますよ?せえの」
歌声が響き渡る。目隠しで視界を奪われ、それに加え視えないものを視る力も失われている。そこに交霊術にも似た古い遊びをしているという現実。それが怖い。心底恐ろしい。
…どれくらい続けただろう。
繰り返すうちに、瑞は不思議な気分になってくる。
考える力が少しずつ鈍っていくような感覚だ。みんなの歌う声がどこか遠い。地面に屈んでいるはずなのに、足元の感触が喪われ、ぽっかりと浮かんでいるような感覚。これが境目をぼかすということだろうか。
ここはどこだっけ?
俺は何してるんだっけ?
何を待っているんだっけ?
誰と、遊んでいるんだっけ?
もう目隠しをとってしまいたい。明るい世界に帰りたい。だけどできない。遊びをとめることがどうしてもできない。聞いたことのある声が遠ざかる。みんな、どこへ行ったのだ?
猛烈な不安に襲われた次の瞬間。
う し ろ の し ょ う め ん だ あ れ …
(来た…)
氷のように冷たい手のひらが、目を覆う瑞の手を背後から包み込んだ。瞼を通して透けていたわずかな光も塗りつぶされ、漆黒の闇が下りて来る。
その声は、明らかに異質だった。遊戯の中でどんどん曖昧になる現実とそうでない場所。霊力を失っている瑞にも、背後にいるその存在がはっきりと認識できる。
あ た っ た ら 、か え し て あ げ る …
笑う声。
は ず れ た ら 、 た い せ つ な も の を
も う い っ こ ち ょ う だ い …
背中に冷たい汗が流れる。間違えたら。もし、間違えたら。
大切な物をとられてしまう。
瑞が無意識に大切にしていた視えないものを視る力と同じように。次は何を失う?嫌だ。怖い。
それなのに、わからない。名前なんて、そんなの…。
作品名:失せ物探し 探偵奇談26 後編 作家名:ひなた眞白