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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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失せ物探し 探偵奇談26 前編

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うしろのしょうめん



帰宅した瑞は、昨夜から老人会の旅行に出かけた祖父に代わり、夕食作りに取り掛かる。教育実習のため京都から一時的に同居している兄の紫暮(しぐれ)が、もうすぐ帰ってくる時間だ。炊飯器のスイッチを押す。瑞のわがままで祖父の家に転がり込んでいるから、自分のことは自分でやるのは勿論だし、家事だってすすんで行っている。

ガラガラと引き戸の開く音がして、紫暮が顔を覗かせた。長い実習も残り一週間となった兄は、実習以外にも弓道の稽古、大学の課題、就職活動に向けた勉強と、瑞には想像できないような忙しい日々を送っているのだと思われる。

「ただいま。あれ…?お客さんは?」

紫暮は怪訝そうな顔で居間を見渡す。

「お客さん?そんなのいないけど」
「だって玄関に草履が――」

紫暮が踵をかえし、やがて戻ってくる。腑に落ちないという顔をしている。

「…俺の気のせいかな。でも確かに、赤い鼻緒の…」

何を言っているんだろうか。忙しくて頭がどうにかしてしまったのだろうか、と笑ってやろうとしたそのとき。

ぺたぺた、と廊下を走る足音。

「え、猫?」

この家には近所の飼い猫、そして野良猫がよく遊びに来るのだ。瑞は居間から顔を出してみる。

曲がり角の向こうに、何か布きれのようなものがフッと揺れて消えていくのが見えた。

(赤い…晴れ着…?)

それを知覚すると同時に、あの瞳が脳裏にフラッシュバックする。少女人形の絵を映したあの写真。晴れ着を着ていた…。

「おまえさ」
「!」

背後から紫暮に声をかけられ、驚いて振り返る。

「何か変な物、連れ帰ってないだろうな」

言葉に詰まる。身に覚えがあるとすれば…やはりそれはあの写真しかない。







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