失せ物探し 探偵奇談26 前編
眠れない。瑞は寝返りを打って壁の方を向いた。誰かに見られているような感覚がはがれない。それは闇の中からの視線かと思えば、自分の背中から感じることもある。
(気持ち悪い…)
家の中に「少女」のいる気配が満ち満ちている。絵の少女が出てきてしまったというのか?最近紫暮が、絵にまつわる不可思議な体験をしたのだが、それを思い出してしまう。あれは確か、絵を描いた人間の妄執が絵に入り込んでしまい、同じく魂を持ってしまった絵の中の女が、現実世界に影響を及ぼしていた、そのような事件だった。
(やばいなあ…どうしたもんか)
あの箱を見つけることも、開くことも、まるで仕組まれていたみたいだ。あの少女の意思のような気がする。
(水…)
喉の渇きを覚えベッドを抜け出した。台所に向かうまでの夜闇が、いつもより濃く深く感じる。家人のものではない気配が満ち、空気の淀みが生まれているような息苦しさ。
(この感じ…)
昼間、あの寮の掃除をしていたときと同じだ。
あの絵を見たときと同じ、心の中を覗かれているような、腹の中に冷たい水を流し込まれたような。
すぐそばにいると確信したとき、背後で鈴を転がすような、笑い声が聞こえた気がする。
「えっ」
う し ろ の し ょ う め ん だ ― あ れ …
瑞の顔に伸びて来た「それ」がひやりと顔を覆った。突然のことに息がとまりそうになる。同時に、鋭い痛みが目に走る。
「って…!」
鋭い痛みに手を振り払うと、視界は開け、瑞の両眼を覆っていた「それ」は離れた。
作品名:失せ物探し 探偵奇談26 前編 作家名:ひなた眞白