失せ物探し 探偵奇談26 前編
「何だそれ?ごみか?」
「や、この段ボール、もう汚いから中身確認して捨てようと思ったんだけど…」
これを見せてはいけない。咄嗟にそう思い、瑞は段ボールを抱えて立ち上がった。
「ここで生活していた人の私物っぽい。勝手に捨てるのよくないから、一応主将に確認してくる」
「はーい」
瑞は足早に部屋を出る。あまりよくないもののような気がする。かといって捨てることは憚られた。まるで生きているかのような少女人形。あの目が、今も箱の中から瑞を見ているような感覚が離れない。誰の目にも触れさせてはいけない。
(どうしよう…)
瑞は逡巡した挙句、それを部員達が出入りしていないボイラー室の奥に隠した。何食わぬ顔でみんなのもとへ戻る。まだ心臓が音をたてており、脳裏にべったりとあの瞳がこびりついている。
誰が。何のために。どうしてこんな場所に。あんなものを置いていたのか。そのわけのわからなさも不気味で、嫌なものを見たなと瑞の気分は沈む。
「今日はここまで!午後の授業に間に合うように片付けろよ」
駒形の声が響いてその場はお開きとなった。いつの間にか雨が降り始め、周囲にはじっとりと重い湿度に覆われている。
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作品名:失せ物探し 探偵奇談26 前編 作家名:ひなた眞白