失せ物探し 探偵奇談26 前編
「大会の日程と併せて、今年はこちらから合宿の期間と使用場所指定をさせてもらうことになりました。えーと。まず弓道部」
「はい」
「昨年まで使用していた県外の施設が修繕中とのことで今年は利用不可。それから陸上部」
「えーうちもー?」
陸上部主将の駒形とともに、伊吹は顔を見合わせる。
「陸上部はグラウンドの使用権が優先されていることもありますので、例年使用している運動場内のセミナーハウスの使用権をテニス部に譲ってもらいます」
やったーとテニス部主将が無邪気に喜んでいる。テニス部からは毎年、虫の多い山奥にある自然の家は嫌だ、そしてママさんテニスと合同でコートを使っていることもつらい、という不満が出ていた。
「じゃあ俺らと弓道部はどこ使えってんだよー」
駒形の言葉に伊吹もそうだそうだと抗議する。合宿は絶対に必要だ。
「寮を使ってもらいます」
りょう、と伊吹と駒形は声をはもらせた。うちの高校は寮ないじゃん、と柔道部主将が言った。伊吹だってそんなの聞いたことない。
「あるぜ、寮」
言ったのは野球部主将の畠山だった。
「あるといっても、建物だけで、誰も住んでないけどな」
「そう、昔あったんですよ。学校の向かいにある球場の隅に。野球部はそこで練習してるから見たことあるでしょう」
「うん、三階建ての古い建物だ。雑木林ん中にあるな。ぼろいよ」
野球部の練習場所は学校の向かい、道路を挟んだ先にあるだだっぴろいグラウンドだ。現在の市営球場ができるまでの間、広い敷地では盛んに試合が行われていて、駐車場の跡地なんかも広いのだという。
作品名:失せ物探し 探偵奇談26 前編 作家名:ひなた眞白