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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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失せ物探し 探偵奇談26 前編

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当てられた子が、次の鬼になる。そういう遊び。よくよく考えれば、終わりのない不可思議な遊びだ。

「じゃあやっぱり、遊んでるつもりなんだな」

伊吹が言った。悪気はないということなのか。それでも、無邪気に感覚を奪っていくというのは残酷だ。子どもならではの残酷さというのか…。

「颯馬にはその子が視える?」

瑞に問われ、颯馬は眉をひそめる。

「なんかいるのはわかるんだけど、輪郭がはっきりしないんだよねえ。少女人形と言われても、俺にはそれすらわかんない。姿かたちは見えないの」
「瑞に憑いてるのは、人形っていうより、人形に憑いてる念なんだろう?」
「そうですねえ。人形って人の形をしてるから、魂が入りやすいって言うでしょう?そもそもの原因は、おそらく魂が入った人形なんだけど、「人形そのもの」でなくて「絵に描かれた人形」っていうのが、俺が視えづらい原因だと思う。さらに写真という媒体を通しているから二重にフィルターが掛かってる状態ってこと。もっと言えば、中身の魂は、更に人形という殻を被ってるから全くわかんない」

瑞の霊感が失われ、様々な要素が重なり颯馬にも実体がつかめないというのなら、これはもうどうすればいいのか…。郁はそんな仄暗い気持ちになったのだが、颯馬は心配しないで、と明るく言った。

「こーゆーのに詳しい人、俺知ってるから」
「え?颯馬のじいちゃんか?」
「ううん。うちの神社にもさ、祈祷だのお祓いだのをお願いするひとがたくさん来るわけ。その中には、やばい物を持ち込む人もいるんだ」

呪物とか。颯馬は言った。ようは、いわくつき、訳ありの品のことらしい。

「そういうのを研究したり、個人的な興味で見せてほしいっていう変わったひとも世の中にはいるわけ。呪いだの呪物だのに詳しいひとが」

そういったひとに聞いてみようと、颯馬はそう言うわけである。

「だからとりあえずその写真、うちで預かるよ」
「でも颯馬に障(さわ)りが出る可能性があるぞ」
「そうだねえ。でもそれは心配ないと思う。うち、呪いはばんばん跳ね返しちゃうから」

そう言うと颯馬はにこやかに笑う。いつだったかの呪い事件で、颯馬を呪うために作られたヒトガタが、颯馬の力だか神社の子の力だかで、粉々に粉砕されていたことがあったのを郁は覚えている。彼は強い守護を持つ人間で、その源流は家系で祀る神様の加護であるのだという。

「どっちかってゆーと、俺が手にした瞬間写真ごと吹き飛んじゃうほうが心配。そうなったら鑑定もくそもないから、瑞くんの力の取り戻し方も分かんなくなっちゃうしね」

<改ぺージ>

そんなわけで、写真そのものは持ち帰らず、写真をスマホで撮影し、画像として持ち帰るということに決まった。

「俺は、野球部に話を聞いてみる」

伊吹が言った。

「あの寮の不思議な言い伝え?を知ってるみたいなんだ」

お願いします、と弱々しい声で瑞が頭を下げた。

「えっと、じゃあ、あたしも何か…」

颯馬と伊吹が瑞のために役割を買って出たのを見て、郁も控えめに手を上げた。自分に何ができるとも思えないが、これまで瑞にはたくさん救われてきた。何や役に立ちたい。しかしその次の言葉が出てこない。えっと、えっと、と口ごもりながら考えていると、伊吹が笑った。

「一之瀬はそばにいて、色々な面でサポートしてやってよ」
「え?」
「五感を補っていた力がなくなったっていうから、こいつは今幼児みたいなもんだろ。同じクラスだし、いろいろ助けてやって。大会前の大事な時期だし」
「は、はい…」
「アハハ幼児だって!確かにいまの瑞くん、犬のうんことか気づかずに踏みそう!階段踏み外して落っこちそう!イテッ!」

またもや失礼なことを言って大笑いする颯馬の頭をパンとはたいて瑞が怒った。

「さっきからオメーは!」
「暴力反対!」
「伊吹先輩と一之瀬はともかく、颯馬の力なんか借りん!」

そういって勢いよく芝生から立ち上がった彼だったが。

「ギャ!」

ずるんと片足を滑らせてよろめくと、側に立つ外灯の柱に額をぶつけて悶絶した。

「須丸くん!大丈夫!?」
「いいいいい…」
「えーちょっと瑞くんてば…さすがの俺も笑えないくらいポンコツになってるじゃん」

颯馬が少し引いている。

「保健室行って来い。一之瀬頼むよ」

オデコを押さえて呻いている瑞を連れて、郁は保健室に向かった。大会前なのに、こんな調子で大丈夫なのだろうか、と心配になりながら。






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