小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

正のスパイラル

INDEX|5ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

「人を脅しているわけでも、脅して、その後に金品を要求したり、命を取ったりするわけではないからだ」
 ただ、
「相手を傷つけたりすれば、暴行や傷害罪に当たり、万引きなどの犯罪を強要すれば、強要罪に当たったりするだろう」
 とはいえ、
「あくまでも、それが苛めが原因であった」
 とは言っても、それを
「苛め」
 としての罪ということではない。
 だから、本来であれば、根本的な解決方法ではなく、虐める側が、
「犯罪に引っかからない方法」
 を使えばいいだけだということになる。
 まったく根本的な解決になるわけではなく、結果として、虐められている側に、
「神も仏もないものだ」
 ということで、
「誰も助けてはくれない」
 ということになることを思い知らされるだけのことである。
 伊東教授は、少年時代のいじめられっ子だったことを、大人になるにつれて忘れるようになってきた。
 そして、その苛めが、
「昭和の頃の、苛めのようなもの」
 という意識を持っていて。
「平成以降の苛めとは種類が違うものだ」
 ということをちゃんと自覚していた。
 だから、
「自分が受けていた、苛めのようなもの」
 というのは、今はもうなくなっていて、そのかわり、
「種類としては似ているが、それ以上に凶悪で、理不尽な苛め」
 というものが、今の時代には蔓延っているということを、理解もしているのであった。
「確かに今のような苛めを受けていたら、今の自分はいなかったかも知れない」
 そういう意味でも、
「いい時代に生きてきた」
 とも思えた。
 伊東教授は、一度30歳代に結婚したが、5年ほどで離婚している。
 子供もおらず、今はずっと一人で暮らしてきた。
 40歳代半ばくらいまでは、
「まだまだ結婚できない年齢ではない」
 と思っていたが、40歳代半ばで一度、同い年くらいの女性と付き合ったが、せっかくいい雰囲気になりながら、別れることになったのを機会に、
「もう、結婚は考えない」
 と思うようになった。
「ここから先は、自分の好きなように生きよう」
 と考えるようになったのだ。
「好きなように」
 というのはどういうことなのかというと、
「好きな歴史研究に勤しめばいいんだ」
 ということであった。
 大学の方も、
「自分には、そこまで期待しているわけではなさそうだ」
 ということも分かっていて、その分、大学からの研究費用もそこまではないのだが、
「ないならないで、自分にできるだけのことをすればいいんだ」
 と思うことで、気が楽になるのだった。
 実際に、大学の研究において、基本的には、
「誰もが疑問に思っている歴史の謎」
 の研究をしようと思っていた。
 それが3つの研究であり、
「乙巳の変」
「本能寺の変」
「坂本龍馬暗殺」
 の3つであった。
 これは、それぞれに、
「大きな時代の節目ことにそれぞれあることだ」
 ということで、
「古代」
「中世」
「近世」
 とそれぞれに存在する事件であった。
「古代」
 の代表である、
「乙巳の変」
 というのは、いわゆる、
「大化の改新」
 と呼ばれるもので、
「中臣鎌足と、中大兄皇子が企んで、当時の最高権力者であった蘇我入鹿暗殺を行ったという一種のクーデター」
 であった。
 この事件の問題は、
「被害者である蘇我入鹿であるが、今までは、蘇我氏が賢慮奥におぼれて、皇族を滅ぼそうとしていたのを、中臣鎌足と中大兄皇子が、それを阻止しようとして、行った暗殺だった」
 といわれているが、
「果たしてその真相は?」
 ということであった。
「本能寺の変」
 というのは、中世、特に戦国時代という時代に、
「風雲児」
 と呼ばれ、新しい改革を次々に行っていた織田信長が、天下統一という一大事業を目の前にして、部下の明智光秀に謀反を起こされ、暗殺されたという事件であった。
 ここで問題になってくるとは、この事件に、
「黒幕がいたのかどうか?」
 という、
「黒幕存在説」
 というものであった。
「光秀の単独犯なのか?」
 それとも、
「黒幕説」
 というものがあったのか?
 ということが問題であった。
 そして、今度は、幕末において、近世の日本を、
「開国したことによって、日本を、外国の中の日本として見た場合に、どのような国家にすればいいのか?」
 ということを考えていた坂本龍馬を、ほとんどの、
「幕末の志士」
 は、鬱陶しく思っていたことだろう。
 そこで、暗殺に踏み切ったのだが、歴史的には、
「犯人は誰なのか?」
 ということが分かっていない。
 実行犯は後から出てきたというが、それも、
「身代わりに自首させられた」
 というようなもので、政治的な野心を持っての犯行ではないことで、黒幕が誰なのか分かったわけではなく、その謎は今も続いている。
 この3つの事件は、
「それぞれの時代に、それぞれの思惑があり、それぞれ違う形での謎を残していることで、日本史における三大暗殺事件」
 となっているというわけである。
 時代としては、すでに、かつての大日本帝国から日本国となっているわけで、今の時代であれば、その事実がどうであったのかということが、今の政治や世の中に、何かのかかわりを残すということはありえない。
 だから、
「その謎を究明できたとしても、困る人は誰もいないだろう」
 つまりは、
「近世ということで、今の時代から一番近い、坂本龍馬暗殺事件であっても、その犯人が判明したといっても、その犯人が、今の歴史や政治に何らかの影響をおよぼすということはありえないのだ」
 ということである。
 だから、
「歴史研究家」
 というのは、その事件をどんどん掘り下げ、いろいろなところで、この、
「三大暗殺事件」
 というものを、研究しているに違いない。
 実際に、伊東教授も研究していたわけであり、その結果というものが、発表されることはなかった。
 というのも、歴史研究をしている伊東教授に対して、
「脅迫をしてくる:
 という輩がいたのだった。
「歴史研究をしている人間に脅迫をするなんて、あまり考えにくいことだ」
 と思っていた。
 実際に、研究をしていた内容としては、
「乙巳の変」
 と、
「本能寺の変」
 の二つだった。
 どちらの方が研究材料として興味深かったのかというと、伊東教授とすれば、
「乙巳の変」
 の方であった。
 その理由とすれば、
「歴史が古く、最近でこそ、いろいろ言われるようになった蘇我入鹿であるが、その汚名返上ということに関して、興味深い」
 と考えていた。
 それは、自分の子供の頃とも重ね合わせるところがあり、今の蘇我入鹿研究は、
「子供の頃の苛めに似たもの」
 というのが、
「子供の頃の自分と、どう違っているのか?」
 ということを考えさせる意味でも、興味深かったのだ。
「いまさら子供時代のことを思うなんて」
 というのも、無理もないことなのだが、
「子供の頃というのは、自分の立場というのが、よくわかっていなかった」
 ということであった。
 そのくせ、
「苛めに遭うその理由は分かっていた」
 というのは、
「自分が、まわりに対して、それまで、何も分からない」
 いや、
作品名:正のスパイラル 作家名:森本晃次