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正のスパイラル

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 で、攻略が目の前になっているにも関わらず、信長に対して。
「苦戦しているから、上様の援軍をいただきたい」
 などと泣きついているのだ。
 これは、
「光秀に加勢させようとした」
 と考えたとして、おかしくはないだろう。
 ただ、その時の領地問題を光秀に信長が進言するかどうかというところまでは計算外だったのかも知れない。
 ひょっとすると、秀吉が、毛利遠征の時の約束として、
「毛利をこちらの手中に収めることができれば、光秀の領地を自分がほしい」
 とでもいったのかも知れない。
 光秀ほどの策士であれば、確かに畿内をうまく収めることはできるだろうが、下手をすれば、
「自分が危なくなるかも知れない」
 ということで、信長が、
「光秀を、少しでも遠くに」
 と思ったとも考えられる。
 それこそ、秀吉が黒田官兵衛に対して。
「次の天下人は誰だと思う」
 と聞いておいて、
「それはお前だ」
 といわんばかりの返答をしたことで、
「これは自分が危ない」
 と考えた官兵衛が、
「家督を息子に譲り、早々に隠居した」
 ということからも分かるというものである。
 それを考えた時、
「光秀も、同じように、信長から疎まれたのかも知れない」
 と考えると、秀吉の作戦も分かるというものだ。
「下手に、領地を奪って、いきなり、遠くに追いやってしまうと、官兵衛が、本能寺の変を起こすかも知れない」
 と考えたからだ。
 何といっても、官兵衛というと、
「中国攻めの際、本能寺の変を最初に聞いた時、「これからは殿の天下です」ということを言ったとか」
 それを考えれば、秀吉の作戦は、あまりにも的を得ていたといってもいい。
 それはきっと、
「自分がかつて、光秀と信長にしたことが、官兵衛と自分となって、戻ってくる」
 と考えたのかも知れない。
 だから、
「本能寺の変」
 の黒幕というのは、
「羽柴秀吉説」
 というのが、一番の有力な説ではないか?
 それを考えた時、
「ただし、これは、秀吉が考え、ターゲットが光秀だったからうまくいったことなのかも知れない」
 それぞれに、
「光秀、信長、秀吉」
 と性格もまったく違い三人だったことで、その性格の違いが、
「相手のことを分かる人には分かるが、分からない場合は、まったく分からない」
 ということになるだろう。
 光秀は頭はよかったかも知れないが、その変わり、どうも融通が利かないというところがあったかも知れない。
 秀吉などは、
「戦上手」
 でもあり、
「人たらし」
 といわれる、
「人心掌握術にもたけている」
 ということで、
「彼は、天下人になるべくしてなった」
 という意味で、黒幕としても、十分な人物なのではないだろうか?
 それが、
「朝廷、幕府説」
 という
「団体による黒幕説」
 ではなく、
「個人の黒幕説」
 ということで、一番有力である、
「秀吉説」
 というものであった。
 この秀吉説というものを考える、
「もう一つの根拠」
 としては、
「三人の力関係」
 というところにあった。
「この三人は、本当であれば、一触即発だった」
 といってもいい関係で、
「しかし、三すくみの関係となっていたので、身動きが取れないだけだった」
 といえるだろう。
 しかし、三すくみ関係というと、
「自分から動けば、自分が生き残れない」
 というのは分かり切ったことであり、
「一番の方法は、自分が強い相手を動かして、そこで押し出された相手が、自分に対しては強い相手を殺してくれれば、あとは最後に、残った自分が強い相手をゆっくりと料理すればいい」
 ということになるのだ。
 つまりは、
「自分が生き残るために、相手を動かす」
 という方法である。
 だが、その場合には、
「自分が黒幕だと分からないようにしないといけない」
 ということで、
「自分の加勢に来させるように信長に進言した」
 ということなのも知れない。
 その時の、秀吉が援軍を送ってほしいという書状が残っていない以上想像でしかないが、秀吉ほどの人間が、そう簡単に、信長に泣きつくなどありえない。
 何といっても、
「信長の方面軍の中では一番の下っ端」
 そんな弱音を吐いていれば、いずれ、叩かれることは間違いない」
 ということもあり、
「そろそろ、信長の役目は終わった」
 とでも言わんばかりに、
「たくらんだ」
 ということになるのかも知れない。
 ただ。その際の、黒幕説ということで、長宗我部というのを自分に取り込んでおく必要がある。
 そういう意味で、
「信長に対し、光秀に長宗我部の四国支配をさせてはいけない」
 ということを進言したのも、秀吉ではないか?
 と考えれば、
「秀吉というのが、どれほどの策士であったか?」
 あるいは、
「彼についている策士がどれほどたくさんいたか?」
 ということである。
「黒田官兵衛」
「羽柴秀長」
 そして、本人の知略も含めれば、
「天才の集団だった」
 といっても過言ではないだろう。
 そんな黒幕を、
「秀吉説ではないか?」
 と、仮設を立てたのが、伊東教授であった。
 しかし、そんな伊東教授が、急にその説を覆すように考えるようになった。
 それも、
「論文を書き上げて、出版した後」
 になってからのことだった。
 それがいつだったのかというと、
「四国に研究旅行に行って、帰ってきてから」
 ということであった。
「何があったというのか?」
 伊東教授が、
「引退する」
 と言い出したのは、それから少ししてのことだったのだ。

                 裏と黒幕

 そんな伊東教授の不思議な行動を、山岸准教授は、
「冷静な目」
 で見ていた。
 そもそも、伊東教授というのは、
「勧善懲悪」
 といってもいい性格で、決して
「悪に染まる」
 というタイプではなかった。
 ただ、
「義理堅い」
 というタイプの人間でもあったので、自分が世話を受けた相手が、何かの派閥に入っていたりすると、
「自分がいかに動けばいいのか?」
 と考えてしまう。
 基本は中立なのだが、恩を受けた相手に、
「頼む」
 といわれると、簡単に断ることもできない。
 やはりそうなると、
「受けた恩の重さと、その懲悪の程度とを、天秤に架ける」
 ということになってしまうのだろう。
 しかし、勧善懲悪の観点で考えると、
「天秤に架ける」
 というのも、自分にとっては、かなりのジレンマであることに違いない。
 今までにも何度かそのような立場に追い込まれたことがあった。
 まだ若い頃だったので、何とかなってきたわけだが、ある程度の年齢になると、
「教授としても、その立場から、簡単に行動するわけにもいかない」
 ということになる。
 自分の行動が、
「若い連中」
 特に、
「自分を慕ってくれる研究員」
 の行動を制限してしまうということは、
「絶対にあってはいけない」
 と思っている。
 だから、研究員には、
「皆、自分の立場を表明する時は、上司の意見や。まわりに影響されないようにしておくれ」
 といっていた。
 そんな教授の考えに惹かれて、皆ここまでついてきただろうから、
「そんなことは分かっている」
作品名:正のスパイラル 作家名:森本晃次