青い瓶(本人登場)
影はやがて凝らした視界の中で、徐々に大の字に見えるようになり、さらに睨めつけているうちに、人の身体のように節々が出来た。
私はその姿を見ていた。
いや、目をそらすことが、出来ない。
そもそもこんなほとんど『理不尽』とすら言えそうな不思議なことがあっていいのか?
誰かが創った不格好なばかりの青い瓶が、
――なんでこんな奇妙な光景を私に見せるのか?
理由は、分からない。
でもそれはそのとき、私にとって何か大切な何かな気がした。
それはほとんど本能的とすら言えそうな、直感以上の何物でも無かったけれど、でもほとんど確信的に間違いなく、
――『見続けないといけない』と、私に強いた。
その揺らぎは跳ね、踊り、くねって、
やがて、
しおれ、踊らなくなり、くたんと座り込んだ。
その様に――私は、強烈に胸が、心が痛んだ。
『立ってよ』
私は心の中でそう呟いた。
すると、その座り込んだ揺らぎが首の辺りを少し傾げた気がした。
しかしまた座り込んだ格好になり、顔(と言っていいのか分からないけど)は俯き下の方を向いた。
『ねえ、立ってよ』
だから私はまた心の中でその揺らぎに語りかけた。
――揺らぎは、私に応えた。
今度こそ揺らぎは私にその顔を向けた。
そして、揺らぎと私は目が合った。
――悲しげな顔をしたその揺らぎは、
実に、
――私と、同じ顔をしていた。