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(新)大日本帝国

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「奥さんに対してのしわ寄せはひどいもので。それによって、不満が爆発する母親が、離婚を言い出すということも当たり前になってきた」
 ということである。
 今までであれば、
「離婚すれば、生きていくすべが分からない」
 ということで、我慢していた奥さんであったが、それが、
「自分も働きに出る」
 ということで、
「何とか、暮らしていくことができる」
 ということが分かってくる。
 しかも、以前であれば、
「離婚というのは、恥であり、戸籍を汚すことになり、実家に戻っても、家族からは、厄介者扱いされるだけで、肩身の狭い思いをしないといけない」
 ということから、
「どんなに嫌でも、離婚ができない」
 という状態だったのが、
「嫌な相手と、ずっと一緒にいる必要はない」
 ということになるのだ。
 しかも、
「男女雇用均等」
 という考え方から、
「女性の自立」
 というものが叫ばれ出して、
「自立した女性が、強い」
 ということになり、
「実際に離婚というものも、爆発的に増えてきた」
 と言ってもいいだろう。
 結婚というと、女性は、
「永久就職」
 というイメージが強かった。
 これは、バブル時代までの社会体制である、
「終身雇用」
 というものに匹敵する考え方だった、
「終身雇用」
 という時代には、
「年功序列」
 というものが基本的には存在していて、
「長年会社に勤めあげれば、その年数とともに、出世していく」
 ということであった。
 だから、
「転職してしまうと、一から」
 ということになり、
「いくら頑張っても、行きつく先は決まってくる」
 ということになり、
「転職は、我慢できない人が行うもので、忍耐力がない」
 と言われても仕方がなかっただろう。
 しかし、バブル崩壊後は、終身雇用というものが崩壊した。
 一つには、
「人件費がかさむ」
 ということで、
「賃金の安い、パートやバイトに仕事を任せる」
 というものから、
「社員は社員でも、正社員ではない、派遣社員」
 という人に任せるという時代になってきたのだ。
 そんな時代になってくると、
「正社員は、必要最小限でいい」
 ということになる。
 そして、正社員というものは、
「責任を取るためにいる」
 ということで、
「管理職であったり、指示を出しても、その責任のすべてを請け負う」
 という人にやらせる。
 ということになるのだ。
 確かに、
「派遣社員というものに比べれば、給料は高いかも知れないが、わりに合わないのではないか?」
 ということであった。
 管理職ということになれば、まず、
「残業代が出ない」
 ということであった。
 その変わり、
「管理職手当」
 というものがあるわけだが、残業代に比べれば、かなり安いという人もいるだろう。
 それも、
「会社によって違う」
 と言ってもいい、
 それこそ、
「ブラック企業」
 というものに就職すれば、ひどい目に遭うということであった。
 だから、
「正社員よりも、派遣社員の方がいい」
 という人が多くなり、会社を辞めて、派遣社員として働く人が増えたのだ。
 企業としても、派遣社員というのはありがたかった。
 というのは、
「アルバイトやパートと違い、契約は個人としているわけではなく、派遣会社としているので、もし、個人がこれ亡くなったり、辞めるということになれば、派遣会社の方で、責任をもって、次の人をあてがってくれる」
 ということで、
「わざわざ、求人をしないでもいい」
 ということである。
 さらに、
「急にその人が、その日、突然の病気などで来れなくなったりしても、他の人を頼むということもできるというものだ」
 もちろん、
「専門知識を有する」
 ということであれば、難しいが、単純作業などであれば、
「臨時で人を手配することもできる」
 という点で、派遣社員は重宝されるということであった。
 さらに派遣社員は、会社側から見て、
「あの人はちょっと会社に合わない」
 ということであれば、派遣会社の営業に相談し、
「別の人に変える」
 ということもできる。
 しかも、その間、教育機関ということで、派遣会社側に非があることでの交代であれば、その研修期間中は、
「少し時給を下げる」
 ということもできるわけで、アルバイトやパートに比べれば、
「派遣会社の営業を介する」
 ということで、
「融通が利く」
 ということになるのであった。
 そんな社会情勢において、安藤の家でも、家族が混乱に陥ったのであった。
 父親は、リストラに遭い、母親は、パートに出かけていたが、父親が、リストラに遭ってしまったということであっても、まだ、
「父親の威厳」
 という、
「家長制度」
 というものを振りかざすような状態だったことと、
「リストラに遭ったことでのストレスを、家族に向ける」
 という態度が見えることから、さすがに母親も、堪忍袋の緒が切れて、
「離婚」
 ということになったのだ。
 離婚してから、息子の四郎を連れて、実家に戻り、実家の手伝いをしながら、近くのスーパーでパートをしていた。
 そのうちに、
「派遣制度」
 というものが、主流になったことを知ると、派遣会社に登録をして、
「派遣会社から派遣される」
 ということで、今度は、一般事務の仕事に就いたのだった。
 学生時代から、パソコン操作などは、慣れていたので、パートを始めても、苦にはならなかった。
 まだ、パソコンというのが、社員全員の机の上にあるようになってからそんなに経っていないので、
「パソコン操作を苦にしない」
 という人は重宝されたのだ。
 部長からの信任も厚く、その時になって
「働くというのって、意外と楽しいものだ」
 と考えるようになったのだ。
 パソコン操作ができるようになると、
「グラフィック関係」
 というものに興味を持って少し勉強することで、会社の資料であったり、宣伝のh−無ページなどのデザインも任されるようになった。
 実際には、
「プロのホームページ制作の企業に任せる」
 というわけだが、その内容の摺り寄せなどというのを、行うということで、
「正社員よりも役に立つ」
 と言われることで、
「母親の興味はすっかり、仕事の方に向いてきた」
 ということであった。
 それが災いしてか、息子の四郎のことがおざなりになっていた。
 家では、四郎の祖父祖母がいるのだが、どうしても考え方が、
「昔人間」
 ということで、子供とは合わない状態で、しかも、中学生になった頃からの、反抗期というものは、他の子どもと類を漏れず、同じようにやってきたということであった。
 どうしても、祖父祖母からすれば、どこか、封建的な考え方に見えて、
「これじゃあ、父親と変わらないじゃないか?」
 と思っていて、母親に何かを言っても、
「お母さんは忙しい」
 と言って相手にしてくれないのだった。
 そのうちに、学校で、そのやりきれない気持ちをイライラでまわりにぶつけるようになると、
「当然のごとく」
 というべきか、
「苛めの対象」
 ということになったのだ。
 そうなると、言わずと知れず、
「引きこもり」
作品名:(新)大日本帝国 作家名:森本晃次