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研究による犠牲

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 ということなのか、それとも、
「人間が今までは耐えられたものが耐えられないほどに、技術は進歩したが、その分、人間が弱ってきたということなのか?」
 と、いうことで、
「人間は、技術の発展と引き換えに、退化という犠牲を払っているのかもしれない」
 と感じさせられた。
 人間の身体は、科学の進歩についていけなくなったということであれば、
「寿命がどんどん延びていく」
 というのはどういうことであろう。
 平均寿命がどんどん延びていくということで、ここ数十年前からの、大問題となっている、
「少子高齢化」
 という問題。
 それこそ、
「高齢者は、姥捨て山のようだ」
 と言ってもいいかも知れない。
 以前は、
「定年といえば、55歳で、定年になれば年金がもらえて、その年金だけで、悠々自適な生活が送れた」
 ということで、今くらいに定年を迎えた人は、
「その時に定年退職した人を、そんな悠々自適な老後を楽しんでいる」
 と感じていたので。
「いずれは、自分も定年を迎えて、悠々自適な生活を」
 などと思っていると、まったく違った世界が待っていたのだ。
 定年が60歳まで伸びてしまい、さらに、年金がもらえるのが、65歳からということである。
 しかも、その年金額というのは、働いていた頃にもらっていた給料の、何と、
「半分以下」
 ということで、
「定年後も働かないと生活していけない」
 という時代になっていたのだ。
 実際には、高齢者を支えるはずの、
「働き盛りのサラリーマンが、どんどん減ってきている」
 減ってきているというよりも、
「人口がいないのだ」
 つまり、
「子供を作ると、生活していけない」
 ということで、子供の出生率がどんどん下がってくる。
 昔であれば、労働人口の確保」
 ということと、高度成長時代ということもあり、
「安定した給料」
 というものがあり、社会の構造が、
「年功序列」
「終身雇用」
 というものが当たり前だったので、給料も安定した時代というのがあったのだ。
 しかし、そのピークもバブル経済までで、それが一気に崩壊したことで、
「社会が崩壊した」
 と言ってもいい時代になってきた。
 それまでのバブル経済は、
「本当はすでに崩壊していたのに、それを感じさせないほどだった」
 と言ってもいい。
 何といっても、
「実態のない、泡のような経済なのだから、その崩壊に気づかない」
 というのは、無理もないことなのかも知れないが、それにしても、経済学者や有識者などが雁首揃えて、
「誰も分からなかった」
 というのは、本当だろうか?
 分かっていて、気づかないふりをしていたのかも知れない。
 確かに、浮かれたバブル経済の中で、
「陰りが見えている」
 などというと、
「ほらを吹くんじゃない」
 ということで、
「せっかく経済が上向きなのに、水を差すようなことをいうと、今の経済が、音を立てて崩れていくことになりかねない」
 として、保守的な人間は、
「なるべく騒ぎ立てることをよしとしない」
 と思っているに違いない。
 だから、
「経済学者も、分かっていても、黙っているしかない」
 と思うようになったかもしれない。
「経済学者として、警鐘を鳴らすのが仕事なのに」
 ということであるが、それを聴こうとしないのであれば、どうすることもできない。
「俺たちは、自分のことだけを考えるしかないんだろうな」
 としか思えないということであろう。
 そんな社会の中で、
「殺された男というのが、どういう人物なのか?」
 とその時は誰も分からなかった。
 第一発見者は、倒れている男の断末魔のその表情を見ていると、凝視できなくなっていた。
 相手の目線から逃れようと、少しずつ相手の角度から離れようと、立っている位置を変えてみたが、
「その顔から逃れることができても、その視線から逃れることができない」
 ということが分かってきたのだった。
 急いで、110番をすると、ほどなく警察がやってきた。
 さすがに、緊急連絡をしただけに、パトランプを鳴らしての到着だったが、やってきた刑事は、本当に、刑事ドラマで見た様子を思い出させ、
「下手にかかわらない方がよかったか?」
 と思わせるほどだったのだ。
 あわただしい雰囲気に、当たりは見舞われたが、二人の刑事と、制服警官が数名に、鑑識と思しき、県警の腕章をつけ、背中にF県警察と書かれた服を着ているのが、鑑識のようだった。
 さすがに、手慣れたもので、そそくさと捜査が、そして、厳かに行われた。
 まずは、
「亡くなった人に対しての礼儀」
 ということで、手を合わせてからの実地検証であった。

                 ミステリーと探偵小説

「殺された男が、なぜここにいたのか?」
 というのが、第一発見者である、
「新島信二」
 の思いであったが、これは、やってきた刑事二人と共通した発想であった。
 これが、繁華街の裏路地などであれば、
「喧嘩になった」
 ということか、あるいは、
「店でトラブルがあって、用心棒のような連中が、過剰な脅しを行ったのか?」
 などということが考えられる。
 しかし、
「早朝のこんな静かな場所で」
 ということになると、
「この場での殺害ということが、一番の違和感である」
 と感じさせられるであろう。
 だが、刑事はいろいろな発想が浮かんでいた。
「誰かに呼び出されて殺された」
 という考え、
「最初から殺害目的だった」
 ということであれば、静かなこの場所で、人のいないであろう時間を選ぶのは当たり前のことだ。
 ということになるだろう。
 となると、刑事が気になったのは、
「争った跡があるかどうか」
 ということであった。
 しかし、この考えは、少々無理があるように思えたのだ。
 というのも、刑事が話していることとして、
「どうして、凶器がそのあたりに落ちている石ころなんだ」
 ということであった。
「そうですね、最初から殺害目的であれば、凶器を持ってきているはずですからね。それに、殺害目的であれば、確実に殺せるものを使うはずなので、石ころで殴打するだけでは、本当に死んだかどうか分からないですよね」
 と、もう一人の刑事が言った。
 鑑識に聞いてみると、
「被害者は、争った痕はなさそうですね」
 ということであった。
「そうなのか、やっぱり死因は、石による殴打」
 ということになるのかな?
 というので、
「いいえ、石で殴られて、首も絞められているようですね。これは明らかに、殺害の意志があったということではないでしょうか?」
 と、鑑識がいうのだった。
「被害者の身元」
 というのもすぐに分かった。
 財布がそのまま残っていて、
「物取りであったり、流しの犯行という可能性は低いように思いますね」
 というと、
「そうだろうな、物取りということであれば、何も殺害までする必要はないだろうからな」
 ともう一人の刑事がいうと、
「でも、被害者に顔を見られて、仕方なくということもあるかも知れませんよ」
 というと、
「うーん」
 と、確かにそれもあるとばかりに、考え込んでいた。
作品名:研究による犠牲 作家名:森本晃次