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「トリックのカモフラージュ」
　というものが始まる。
　そこで一番考えられるということとして、
「他のトリックとの併合」
　というものだ。
　他のトリックは、最初から、
「トリックの種類は分かっている」
　ということになるので、このような併合を考えた時の、
「主のトリック」
　というものは、
「一人二役」
　ということでないとダメだ。
　ということになる。
　しかし、実際には、それ以外のトリックがメインのものとなり、一人二役が、
「念のため」
　ということであったり、
「メインのトリックを成功させるための手段として使う、サブという形で、一人二役が考えられる」
　ということになるのであろう。
　それを考えると、
「犯罪事件」
　というものを、いかに機械的に考えるか？
　ということも必要ではないだろうか？
　そこに私情が入ったりすると、せっかくの計画が、瓦解してしまう可能性がある。
　だから、
「共犯を必要とする」
　という犯罪は気を付けなければいけない。
　トリックによっては、
「共犯者の存在は不可欠」
　ということで、
「探偵小説なのでは、ありかも知れないが、実際の犯罪であれば、不可能なのではないだろうか？」
　と考えられる。
　それを思えば、
「一番不可能だ」
　と思われることとして、
「交換殺人」
　なるものが考えられるのではないだろうか？
　交換殺人というのは、
「成功すれば完全犯罪だが、普通はありえない」
　と言われているものではないだろうか？
　交換殺人というのは、絶対に、共犯者が必要である。
　いや、共犯とは少し違うイメージで、
「どちらも、主犯であり、どちらも、共犯だ」
　ともいえるし、
「計画者や、言い出しっぺというものが、主犯だとすれば、もう一人は、共同正犯だといえるのかも知れない」
　犯罪において、
「共犯が多ければ多いほど、失敗する可能性が高い」
　と言われるものである。
　それがどういうことなのかというと、
「犯罪が露呈する可能性が高い」
　ということである。
「主犯の思ってもいない行動を共犯にされてしまう」
　ということであったり、
「主犯の想定外で、共犯者が精神的に弱かったりして、罪の意識であったり、良心の呵責に耐えられずに、自首してしまう」
　ということになれば、すべてが水の泡ということになるであろう。
　だから、共犯者を立てるとして、その人が、
「どういう人なのか？」
　ということを分かっていないと、
「墓穴を掘ってしまう」
　ということになりかねないといえるだろう。
　特に、
「交換殺人」
　というのは、その犯罪の性格上、
「一番難しい犯罪だ」
　といえるのではないだろうか。
　これこそ、
「成功すれば、完全犯罪」
　ということに一番なりやすいということであるが、
「露呈する可能性も高い」
　ともいえる。
　それが、
「もう一人の実行犯の存在」
　であった。
　その人は、共犯と言っても、
「共犯であり、実行犯」
　でもあるのだ。
　だったら、
「共犯などいらないのではないか？」
　ということであるが、実はここが肝心なことであって、主犯である自分と、共犯とが、
「殺したい相手の実行犯ではない」
　ということだ。
　つまり、代理殺人と言ってもいいわけで、その代理で。自分が殺したい人間を、実行犯が殺している間に、自分は完璧なアリバイを作っておく。
「殺意がある人間に、完璧なアリバイがあるのだから、それ以上疑われることはない」
　というわけだ。
　もし疑うのであれば、アリバイトリックを解く必要があるわけで。
　実際には、
「アリバイトリックが、あるわけではない」
　ただ。
「実行犯が別だ」
　というだけのことである。
　だから、実行犯は、被害者とはまったく利害が何もない人間であり、最初から警察に疑われることもない。
　つまりは、
「その実行犯が、犯行現場の近くにいたとしても、それは、動機がまったくなく」
　さらに、
「被害者と面識がない」
　ということになれば、疑われる理由など、どこにあるというのであろうか？
　そういう意味で、
「成功すれば完全犯罪」
　ということになるのであった。
　そう、あくまでも、
「成功すれば」
　というのが、前提である。
　ということは、
「失敗する可能性がかなり高い」
　ということになるのであろう。
　リスクがかなりあるということで、
「ハイリスクハイリターン」
　の状態を、果たして冒険しながらもするだろうか？
　犯人が、
「目的は相手を殺す」
　ということであり、その後、
「自分はどうなっても構わない」
　などと思ったとすれば、それは、
「完全犯罪というものをするのも、悪くない」
　と思うかも知れない。
　あくまでも、目的は、
「憎き相手を殺すこと」
　ということであり、
「目的さえ達成できれば、自首してもいいし、自殺してもいい」
　などと思っているとすれば、
「もし、犯行が露呈したとすれば、そのまま自殺すればいい」
　というくらいに考えていた場合、
「成功とは言わないが、目的は達成できた時点で満足」
　ということになるだろう。
　それが、計画者ではなく、あとから加わった人間にでもいえることだ。
　だとすれば、問題はもう一人ということになる。
　ということは、
「まさか、相手は死を覚悟でやっているとすれば、犯罪は露呈しても構わない」
　と思っていたとすれば、
「自殺の時の遺書に、すべてを書かれていれば、もう一人は終わりである」
　ということになり、相手はたまったものではない。
　ということになる、
「完全に裏切られた」
　ということになり、下手をすれば、
「自分がすべてたくらんだ」
　ということで、自分が、最後はひどい目に遭うということになるというものだ。
　それを考えると、
「自殺すればいい」
　ということはあり得ない。
　そうなってしまうと、完全な敗北ということになり、
「完全犯罪はありえない」
　ということを示してしまうことになるだろう。
　これは、
「犯罪者側の精神的な弱さ」
　というものが影響してのことであり、それこそ、
「一番人間らしいという部分が、肝心なところで出てきた」
　ということになるであろう。
　それが、一つの、
「交換殺人の瓦解」
　ということになるだろう。
　そして、もう一つ考えられる、
「交換殺人というものを不可能ならしめる」
　ということで、それは、
「犯罪者心理」
　というよりも、
「理論上の矛盾」
　ということであろう。
　これは、冷静に考えれば、すぐに分かるということであり、それが分からないだけ、
「犯罪に対してのめりこんでいて、成功するということを信じて疑わない」
　ということになるのだろう。
　というのは、まず、
「交換殺人というものの性質」
　ということから考えられることであった。
　交換殺人というのが、
「完全犯罪だ」
　と言われるゆえんは、
「動機のある人間に、完璧なアリバイを作る」
　ということと、
「実行犯が、実際に被害者と面識もなければ、まったく縁もゆかりもない人間である」
　ということからであろう。
　しかし、そうなってしまうと、