表裏の感覚による殺人事件
などの公共施設的なものができてから、新しく家が建てられるようになって、人の入居が始まり、
「曲がりなりにも、一つの街」
という様相を呈してくるまでに、20年とかからなかったということである。
建物に関しては、建ち始めてから結構早かった。
「こんなにスムーズな開発も珍しい」
といえるだろう。
この辺りの土地は、
「建物を建設する」
ということに関しては、結構問題のない」
というところであった。
土台もしっかりしている上に、そこまで建物を建てるために適してい会い土質でもないということで、工事を進めるうえでの問題はほとんどなく、計画通りに、それほど誤差もなく、うまくできたということであった。
「さすがに、高層マンション群を建てる」
などというわけではないので。この辺りの土地は、
「二つの地域に分かれていた」
ということであった。
一つは、
「分譲地」
というものを売ってから、購入者が建設会社と相談して、
「自分の作りたい家を建てる」
という、
「ホームメイドな方法」
というものと、逆に、最初から建物も最初から建っていて、
「そこを買う」
というやり方であった。
これは、一長一短があり、
「前者の、分譲地の独立購入」
ということであれば、まずはメリットとしては、
「オリジナリティ満載で、自分な好きな家を好きなように建てられる」
ということであり、デメリットとしては、
「最終的な入居までに、時間が掛かる」
ということ、
「土地と建物がそれぞれ独立しているので、その分、お金がかかる」
ということである。
逆に、
「できた建物ごと購入する」
ということであれば、
「すぐに入居が可能」
ということであり、
「土地建物がセット」
ということで、購入金額を、少しでも安くあげることができる。
それを考えると、
「一長一短」
ということであり、
「果たしてどっちがいいのか?」
ということを考えると、
「購入者としては、やはり、早くの入居を望んでいて、建物とセットでの購入が多かったのだ」
そのため、最初はテストということで、
「半々」
くらいにはしていたが、そのうちに、家を建てるようにして、比率を購入者に合わせるようになった。
これは、実は、購買側にもありがたいこと、
「もし、購入者が、土地だけ購入が多かったとすれば、話が厄介になる」
ということである。
なぜなら、
「土地建物セットが多いということであれば、建物を建てるということでいいわけだが、これが逆ということになると、一度立ててしまった建物をどうするか?」
ということになるだろう。
「取り壊すか?」
ということになると、却って厄介なので、それを考えると、
「建物の再利用」
ということで、
「組み立て式の建物」
というのが、実際にはあったりする。
「一階部分と、二階部分の表で組み立てておいて、実際に入居という際になると、組み上げていくだけになるから。普段であれば、入居までに数か月かかるところが、
「組み立て式であれば、1カ月もかからない」
ということになるだろう。
それを考えると、
「この両面で考えたやり方はよかったかも知れない」
と考えた。
このまま、土地購入後の建物をどうするか?
ということであっても、
「組み立て式ということで、すぐにできますよ」
という宣伝をしておけば、
「うまく出来上がる」
ということになるのだった。
そんな比較的、
「購入者側に立っての、気を遣った分譲住宅というのはなかなかない」
ということで、
「今の時代にマッチしている」
と、静かなブームとなり、それが、地元紙に紹介されたことで、知名度が上がったのか、いろいろなところから、取材に来ることが増えたということであった。
モデルルームも、休みの日になると、結構な人が訪れるようになり、おかげで大盛況ということもあり、宣伝も積極的に取り組むようになると、いろいろなところからの、
「タイアップなどが起こってきた」
たとえば、
「地元大手」
というスーパーチェーンで、大々的な宣伝をしてもらったり、逆に、
「土地を購入してもらえれば、指定した引っ越し業者であれば、引っ越し費用をタダにする」
という契約であったり、
「購入家具も、指定した家具であれば、総額から30%オフで購入できる」
ということも、
「キャンペン期間中」
に行ったりしていた。
それくらいしても、儲かるというくらいに、この辺りで営業を始めた頃は、この辺りの土地は結構高く売れたのであった。
しかも、いろいろな業界とのタイアップは、
「お互いにウィンウィンの関係」
ということで、
「損をすることがない」
ということで、活気に溢れた街だといってもいいだろう。
ある意味、その時がピークで、今は少し下火になってきたことから、
「あの時に売りに出たということで、タイミング的には最高だった」
といえるだろう。
まだまだ、土地も余っていて、一時期のラッシュに比べれば、足元にも及ばないが、
「安定した購入実績」
ということで、
「優良企業」
というお墨付きもあり、購入意欲のありそうな客の来訪が、結構頻繁にあるということであったのだ。
だからこそ、
「この土地では、会社的には、まだまだ安心できている時期だった」
ということである。
しかし、そんな時に、
「住宅街の中」
というわけではないが、一応、
「エリア内」
ということもあって、会社としても、
「少しまずい」
と思うのではないだろうか?
まだ、死体発見という状況で、
「捜査も、初動捜査の段階なので、騒がれてはいないが、警察の対応によっては、なかなか難しい」
ということになるだろう。
犯罪というもの
初動捜査の段階で分かったことは、そんなにはなかった。
逆に、
「疑問が残った」
ということで、
「その疑問を解決しないと、事件は進展しないのではないか?」
という考え方もあるが、逆に、
「その疑問が解決すれば、事件は一気に解決する」
ともいえるだろう。
それこそ、探偵小説の中にある、
「トリックの解明」
というものと似てると言えるかも知れない。
というのは、
特に、最初からトリックがどういう種類のトリックかということが分かっていて、その謎を解くということが多いことからも分かるというものだ。
「密室トリック」
「アリバイトリック」
「死体損壊トリック」
などと言われるものが、その例であり、逆に、
「トリックの種類が分かってしまった時点で、犯人の負け」
というものもあるが、種類は少ない。
考えられるものとすれば、
「一人二役トリック」
というものくらいであろうか?
一人二役トリックというのは、確かに、
「この事件のトリックが、一人二役だ」
ということが分かってしまうと、そこで、犯人には致命的である。
ということになる。
そのために、犯人が、
「一人二役」
というものをトリックとして使うのだとした場合、
「一人二役」
ということが分かってしまっては困るということで、そこから、
作品名:表裏の感覚による殺人事件 作家名:森本晃次