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表裏の感覚による殺人事件

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 と言った。
 断崖絶壁とまではいかないが、かなりの急勾配で、次第に、勾配がなだらかになっていて、そこから先は、木が植わっていて、
「まるで林のようだ」
 と言ってもいいだろう。
 男が転がっていたのは、そのあたりだった。
「おそらく、転がり落ちて、そのまま気に当たり、反動で、その場に止まったのではないか?」
 と考えられ、
「もし、その場で止まらなければ、そのまま林の中に突っ込んでいき、被害者の死体発見が遅れたかも知れない」
 と刑事は考えた。
 実際に、鑑識も同じことを考えていたようだった。
 死体検分をしている班と、刑事と同じ視点から、
「どうやってこの場に死体が放置されることになったのか」
 ということを調べる班とで別れたのであった。
 死体検分をしていた人には、すぐに、その血敵が、
「どうして道に点々としていたのか?」
 ということが分かったようだ。
「どうやら、頭を殴られたようですな。直接の死因は、司法解剖してみないと分かりませんが、石か何かの鈍器で頭を殴られ、意識が朦朧したところで、このガードレールに身を任せるようにして、落っこちてしまったのではないでしょうか?」
 という見解だった。
「死亡推定時刻はいつ頃ですか?」
 と刑事が聞くと、
「これも、司法解剖に回さないと詳しいことは分かりませんが、おそらく、昨夜の、8時前後くらいではないでしょうか?」
 ということであった。
「そうですか、だとすると、この血滴の乾き具合からも、その見解で一致するということですかな?」
 と刑事が聞くと、
「ええ、そうですね、私どもも、その確認でここまで上がってきたんです。おそらくは殴られて、意識が朦朧としたところで、ここから転落したと考えるのは、一番妥当だと思います。そう考えた時に、死体があった場所に違和感はありませんからね」
 ということであった。
「ということは、死体を誰かが触ったということはないということになるんでしょうか?」
 と訊ねると、
「ええ、そうですね。今見たところでは、死体を動かした形跡はありません」
 ということであった。
「ところで、誰かと争ったということは考えられませんか?」
 と刑事が聞くと、
「何しろ、ここから落ちたということであるなら、今の時点ではなんとも言えませんね。ところどころに細かい傷がありますが、それが争ってついたものなのか、それとも、落ちる時についたものなのかということは、何ともいえません。少なくとも、衣類などに、つなりの土がついているので、転がり落ちた時の衝撃は相当なものでしょうね」
 と鑑識がいうので、さらに、刑事は谷底のような断崖を、死体が転がっているあたりに向かって見下ろしたのだ。
 実際に転がり落ちた衝撃が、断崖には残っていて、その時のことを想像してみたが、その瞬間、ゾッとする感覚を、二人の刑事は感じたのだった。
「これは結構、すごい谷になっているんですね」
 と刑事が聞くと、
「ここから、頭を殴られた形で、落ちたのであれば、ひとたまりもなかったでしょうね?」
 と、鑑識が言った。
 刑事は、それを確認し、実際に死体のそばに行ってみた。
 そこに転がっているのは、一人の中年男性で、コートにスーツにネクタイと、見た目は、明らかに、
「普通のサラリーマン」
 という雰囲気だった。
 鑑識の一通りの調査が終わり、刑事は、男の身元を知ろうと、服のポケットwまさぐり始めた。
 コートの内ポケットに、財布とパスケースがあり、そこに、数枚の同じ名刺が入っていて、そこには、
「株式会社E商事、営業部課長、山口智明」
 と書かれていた。
 それを手に取って見ているうちに、
「桜井刑事、免許証が見つかりました」
 ということで、桜井刑事と呼ばれた刑事も、一緒にその免許証を覗き込んだ。
「山口智明、45歳」
 ということで、名刺の肩書も、年齢から考えれば、普通であった。
 桜井刑事は、その名刺を見ながら、
「門倉刑事、E商事というと大企業だな」
 と、もう一人の刑事に聞くと、
「ええ、そうですね。僕の高校時代の友達にも、大学卒業後に入社したやつがいました」
 と言っていた。
 二人の会話を聞いている限りでは、桜井刑事の方が、いくらか先輩のようだった。
 見た目は二人とも、30歳代中盤というくらいの、現場刑事としては、若手からベテランに差し掛かるくらいの、中堅というところであろうか。
 二人の間の経験がそうさせるのか、
「二人には、若さというエネルギッシュなところを残しながらも、一見で、刑事だと分かるオーラのようなものが発せられるという雰囲気を持っている」
 と言ってもいいだろう。
 桜井刑事も、門倉刑事も、鑑識の人とも、何度も一緒に仕事をしている、パートナーのようなものなので、遠慮しながらも、意見交換することで、
「お互いに、尊敬しあっているからこその、意見交換から、事件の真相に近づく第一歩」
 というものが生まれてくると思うのだった。
 さすがに、まだ早朝ということもあって、会社に連絡を取っても、誰もいない可能性があるということで、免許証に書かれている住所に連絡を取ってもらうことにした。
「それにしても」
 と、桜井刑事が一言呟いたが、
「はい?」
 と、門倉刑事は、興味深そうに、桜井刑事を覗き込んだ。
「いや、免許証の住所から考えると、なぜ昨日の夜の8時という時間に、被害者がここを歩いていたのかということが疑問にならないだろうか?」
 というのであった。
「確かにそうですね。家に帰るとしても、この住所は、結構離れていますからね」
 と門倉刑事は言った。
 実際に、ここに書かれている住所は、管轄外の住所であるというくらいに、離れていて、この辺りで、人に殴られて死んでしまうとすれば、違和感があるということであった。
 それに気づいた桜井刑事は、
「この近くで、車が放置されていたりしないか、それを探してみないといけないんじゃないかな?」
 と言った。
「ということは、被害者は、ここまで自分の車できて、何らの理由があって、ここまで来て、誰かに殴られたということになるんでしょうか?」
 とかど蔵刑事がいうので、
「その可能性が高いと思うんだ。だから、車が放置されているとすれば、この近くなんじゃないかと思ってね」
 という。
 すると、鑑識の一人が、
「被害者の服の中から、車のキーが見つかりました。電子ロックのキーなので、近くからでも、反応があれば、被害者の車なんじゃないかと思います」
 ということであった。
 今の時代は、路上駐車は、よほどの何かがなければ、
「違法駐車」
 ということになるので、実際に、
「違法駐車」
 というものは減ってきたが、それは、都心部でのことで、こういう住宅街も、昔に比べれば減ったとはいえ。その光景を見慣れてくると、今度は徐々に増えてきたような気がした。
「世の中において、慣れというのは恐ろしいもので、法改正があって最初の頃は、警察も警備を強化しているが、次第におろそかになってくる」
 ということであった。
 どんどん法改正が行われるのは、いいことなのかも知れないが、それが、前の法律が浸透してくる前に次があって、それが、
「重点課題」