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表裏の感覚による殺人事件

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 この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。今回もかなり湾曲した発想があるかも知れませんので、よろしくです。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。呼称等は、敢えて昔の呼び方にしているので、それもご了承ください。(看護婦、婦警等)当時の世相や作者の憤りをあからさまに書いていますが、共感してもらえることだと思い、敢えて書きました。ちなみに世界情勢は、令和6年3月時点のものです。時代背景と時代考証とは、必ずしも一致するわけではありませんので、ご了承ください。一種のパラレルワールドでしょうか?

                 坂の下の被害者

 一人の男が殺された。殺害現場は、普段は人通りの比較的少ないところで、しかも、夜だった。駅からの路線バスで、約20分。降りてからは、閑静な住宅街へ帰る人がほとんどで、少し坂を上っていく人が多かった。
 しかし、事件が起こったのは、坂を下っていくところで、それでも、いつも数人は乗客がいるので、
「殺人事件を起こせば、誰かが目撃するのではないか?」
 ということくらいは、容易に想像がつくことくらいは分かりそうなものである。
 いくら夜と言っても、まだ、8時台であった。この時間帯では、バスの本数も多く、さらには、道を走っている車も多い。人通りがなくとも、車からの目撃者があってしかるべきである。
 さらに最近では、
「煽り運転」
 ということの絡みから、ドライブレコーダーを積んでいる車も多い。
 目撃者となっていなくても、
「犯行時間に現場を走っていた」
 ということであれば、ドライブレコーダーに残っている可能性は十分にあるといってもいいだろう。
 そうなれば、
「目撃情報」
 というよりも、一足飛びに、
「動かぬ証拠」
 ということになるだろう。
 第一発見者が死体を発見したのは、朝になってからのことだった。早朝の6時ころから、付近をジョギングしている人がいて、その人が発見したのだ。
 それまでは、真っ暗だったということもあって、気づかなかった。犯人とすれば、
「もう少し発見は遅いだろう」
 と考えたかも知れない。
 死体があった場所は、人目につかないところであり、その場所を歩いてでもいない発見することは、まず無理というものだ。
 死体があったのは、歩道の右側にあるガードレールを超えて、谷になっているところの中腹に転がっていた。
 だから、最初から、
「ガードレールを乗り越えて下を見る」
 というような行為をしない限り、できることではないだろう。
 しかも、そこは少々高いところにあり、高所恐怖症であれば、まず下を覗くというようなことはしない場所で、それでも、覗き込もうとするのであれば、それは、よほどの違和感というものがなければいけない。
「何を好き好んで、下を覗くなどということをするでしょうか?」
 と、第一発見者は言ったことに対して、事情を聴いた刑事も、
「うんうん」
 と頷いて納得するしかなかったほどだ。
 だが、第一発見者が、ガードレールから身を乗り出すようにして覗き込むだけの十分な理由が、そこにはあったのだ。
「歩道には、血痕がついていた」
 というのが、その理由であった。
 まるで、
「吹き出しの爆弾マーク」
 のような、いや、
「ウイルスというものを絵に描いた時のような」
 下に落ちて、破裂した状況となっている、
「滴り落ちた、血滴とでもいうような」
 そんな結婚が、いくつも落ちていて、時間が経っているので、すでに凝固している状態だった。
 第一発見者も、「尋常ではない」
 と思ったかも知れないが、さすがにいきなり、
「殺人事件だ」
 とまでは思わなかったといっている。
 確かに、道に血痕が残っていて、それが点々としているだけでは、
「刺殺された血痕にしては、そんなに多くはないかな?」
 と思ったというが、よく考えてみると、
「凶器が刺さったままだったとすれば、そこから血が噴き出すのを防ぐだろうから。これくらいの血痕であっても不思議はない」
 ともいえるだろう。
 しかし、第一発見者は、まだ死体を発見する前であったが、不気味さの残っている血痕に、明らかなる動揺があったので、冷静な判断力に欠いているようだった。
 普段から、犯罪捜査をしている刑事たちでも、さすがに殺人事件ともなると、一様に緊張感が走るというもので、さすがに他の事件とは、最初から意気込みが違っているというものだ。
「殺人事件」
 というのは明らかな凶悪犯罪。
 そこにどんな理由があろうとも、
「犯人は憎い」
 というものだ。
「憎い犯人を捕まえるためには、捜査する側も、真摯に受け止め、事実を一つ一つ整理することで、真相に近づく」
 ということになる。
 そのためには、初動捜査から、聞き込みと、
「最初が肝心だ」
 ということは、経験からも十分に分かっていることだろう。
 第一発見者が、警察に通報してきたのが、朝の6時半くらいだっただろうか。刑事が現場に着いたのが午前7時くらいだった。刑事が到着すると、第一発見者の男性が待っていて、
「なるほど、ジャージを着ていることから、ジョギングか散歩をしていたのは間違いないだろうな」
 ということであった。
 二人の刑事と鑑識が数名来ていたのだが、刑事がその場を見た時、足元に残っている血痕を見て、自分もさっと血の気が引いてくるのを感じた。
「こういう現場は、何度立ち会っても、緊張する」
 と感じたのだ。
 刑事は、第一発見者を下がらせておいて、現場検証を先に行っていた。最初の血痕は、次第に、ガードレールに向かって伸びていた。
 最初の間隔から次第に、血滴は、少しずつその間隔が狭まっているということが分かってくると、
「歩くスピードが、ゆっくりになってきたということか、意識が、朦朧としてきたということになるのかな?」
 と一人の刑事がいうと、
「おそらくそうでしょう。最初の血滴から、ガードレールに向かって、直線ではないですからね」
 と、もう一人の刑事が言った。
「ということは、フラフラしているということにあるだろう。意識が朦朧としているんだろうな」
 ということで、二人は、その血滴を踏まないように、その歩いたであろう被害者の様子を想像しながら、自分たちも想像できる範囲で、動いてみた。
 すると、想像して動いた状態でも、血滴の滴り方には、何らおかしなところはなかったので、
「おそらく想像通りなのだろう」
 ということで間違いないと思われた。
 そして、ガードレールに近づいて下を見ると、
「ここから落ちたということか」
 と一人の刑事がいうと、もう一人は抗うこともなく、同調し、頷いたのだった。
 二人の刑事は、ほぼ同時にガードレールから下を覗いた。
「ここから落ちたのであれば、普通に落ちたとしても、ただじゃあ、済まないだろうな」
 と一人がいうと、
「そうですね。少なくとも、骨折くらいはするでしょうね」