知恵と本能
「皆真剣に結婚を考えていて、変な人に当たることはない」
ということで、その変わり、
「値段もそれ相応にかかる」
ということである。
それ以外というと、一昔前くらいであれば、お見合いパーティというようなものがあった。
それは、主催するイベント会社のようなところが、会場を借りたり、自分たち所有の会場で、午後と夜の二回くらいで、それぞれにコンセプトをもって行うものであった。
コンセプトといっても、条件であったり、募集メンバーの範囲であったりする。
例えば、
「40歳代の男女」
であったり、
「年収いくら以上」
などというもので、範囲を決めておくと、参加者、特に女性側からすれば、安心して参加できるというものだ。
そして、参加費用も、男性は、大体三千円から五千円くらいの間だが、女性は千円という格差を設けることで、男女比を均等に保つように計算されていた。
これによって、たまに弊害もある。
女性は。簡単に参加できるということで、中には、ほとんどのパーティに参加しているということであるが、もし、男性がそれを知ったとしても、男性も複数参加しているわけで、
「人のことはいえない」
ということになる。
そもそも、複数回に申し込んでいたって、悪いことではない。むしろ、
「それだけ積極的ということで、いいことではないか」
といえるだろう。
その人とカップルになったにも関わらず、また女性が他の会に出席していたのだとすれば、それは、
「男性側に魅力がなかった」
ということになるのではないだろうか?
もちろん、中には、真剣交際というよりも、
「半分、冷やかし」
という人もいるだろう。
しかし、それも、ごく少数で、安いとはいえ、お金がかかっているのだから、ほとんどが真面目に考えているとみていいだろう。
それでも、一度カップルになった女性がまた参加していると男性が知ると、
「これから、せっかく仲良くなっていこうと、いろいろこれからの交際について考えていたのに」
ということで、ショックと、興ざめから、
「お見合いパーティなんて」
と、もう二度といかなくなるという人もいるだろう。
パーティの内容として、まず、参加人数は、男女ともに、20人以下くらいというのが、大体のパターンではないだろうか?
そして、男女比も、そんなにあるとやり方から、なかなか進行が難しいこともあり、そうなると、
「今回は中止」
ということになりかねない。
実際に当日になると、会場に事前予約をしている人がやってくる。会費を払うと、着席するわけだが、会場は、奥に、
「1対1」
の席が用意されていて、まずは、そこに、男女ともに、番号が示され、その番号のバッチと、紹介カードのようなものが渡される。
そして、
「パーティ開始前までに、紹介カードを埋めてください」
と言われるのだ。
だから、パーティに参加する人は、開始20分以上前くらいからきているのが、
「暗黙の了解」
ということであろう。
そのカードに記入する内容は、
「自分のプロフィール」
である。
「個人情報にかかわることは任意になっているので、あとの、趣味であったり、特技、仕事の体制。例えば、休みがシフト制であるとか、平日休みなどを列記する」
ということになっている。
時間の関係上、この紹介カードというのは、しっかり埋めておくことが、自己アピールに綱がるというものだ。
これが面接であれば、
「履歴書」
や、
「職務経歴書」
と同じだといえるであろう。
それを考えると、おのずと真剣になって書くというものだ。
パーティの進行としては、最初に、番号で決まった席に着席することになるのだが、当然目の前には同じ番号の女性が来ることになる。
時間になると、イベント会社のスタッフが、会の進行について説明するのだが、それによると、
「まずは、番号の通りの席におつきになり、最初は1対1での、お見合いタイムとなります。約三分での、自己紹介を行っていただき、女性はそのままで、男性が、時計回りに、移動していただき、最後に元の席に戻ってこられれば、それで終了です。男女比に違いがありますので、誰か余ってしまうことになりますが、その時はすみませんが、相手がいない方は、そのまま三分をやり過ごしてください」
という。
「なるほど、男女比に差があるということは、こういうことになるのか」
と納得した人も多いだろう。
スタッフは続ける。
「ですから、今お渡ししている紹介カードへの記入が大切になります。三分という限られた時間ですので、話をしながら、カードを確認するということであれば、時間の節約にもなるし、それが、時間の有効活用にもなります」
と言った。
これにも、参加者は、納得したことだろう。
さらに、スタッフは続ける。
「それが終わると、少し休憩時間を持ちますので、あとは、2回に分けて、ツーショット時間を設けます。もう一度お話したいと思う相手に、今度は自分から話しかけてください。これが、本当のお見合いという形になりますね」
ということであった。
「会場には、ドリンクと、ちょっとしたスイーツをご用意しておりますので、ご自由にご飲食ください」
ということであった。
「なるほど、これも、気遣いを見せるという意味ではいいことだ」
と考えた。
齋藤は、そんなパーティに、数回参加したことがあった。
当時は、まだ30歳であったが、女性と付き合ったことはあったが、いつも、数か月で別れることになった。
相手から、別れを切り出されるのだが、その理由に関しては、何も言われないのだった。
それも、いつもいきなりだったので、
「なんでなんだ?」
としか思っていなかった。
最近では、少し分かってきた気がする。
「理由に関しては、相手によって細かいところは違うのだろうが、相手が、理由を言わずに別れるのは、相手の気遣いであり、自分を傷つけないようにしてくれている配慮だと思うと、逆に、その理由が分からないことに、自分で自分に憤りを感じる」
ということであった。
だから、
「お見合いパーティに参加してみよう」
と思ったのだ。
さすがに、当時ケイタイなどであった。
「出会い系サイト」
というものに手を出す気にはならなかった。
会社の同僚で。デイ系サイトに手を出したやつがいて、その手口を詳しく教えてくれたのだ。
出会い系サイトにおいては、ほとんどが、サイト内での、DM形式のやり方になる。
まずは、サイト内で、自分のプロフィールを登録し、それを、登録者として、検索できるようにする。
ここまでは、無料なのだ。
そこからが、ポイント制ということになり、あらかじめ100ポイントくらいのサービスが与えられている。
そこで、例えば、
「紹介カード検索すれば、一件について、3ポイントなどと、ポイントが使用されることになる。メールを送れば、2ポイント、相手のメールを見るには、3ポイント必要などということである」
これはうまくできているもので、
「最初に100ポイントあるのだから、細かいやり取りに、そんなにポイントを使わないので、これくらいだったら」