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時間の三すくみ

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 という意識がないというわけではなく、
「意識して、顔を見ようとしていない」
 という、強い意志があったのであった。
 それを相手も分かって、臆してきたのか、最初の意識は、どこに行ったのだろう。
 そう思うと、その男の意志の強さと、自分の意志の強さが次第に交差していって、それにより、金縛りが解けてきた気がした。
 目の前にいる人間を意識することもなくなってきて、まるで何もなかったかのように、家に帰っていったのだ。
「何かを目撃した」
 という意識がある中で、目撃したものを、見ようとしなかった自分に、少し矛盾を感じながら、
「とにかく、急いで家に帰ろう」
 という意識から、足早に、家まで帰ったのだ。
「部屋に入った」
 という意識はなかった。
 部屋の扉を開けた意識はあっても、それがいつのことだったのかということすら忘れてしまっている。
「ただいま」
 とまっくらだった部屋のライトをいつものようにつけると、無意識に誰もいないはずの部屋の奥に向かって話かける。
 その意識はあるのに、それが、まるで、数日前のことのようで、記憶が一気に曖昧になってきたのだ。
 気が付けば寝ていたようで、すでに朝になっていた。
 ベッドに横になっていたのだが、ちゃんとパジャマを着ていた。
「いつ着かえたんだろう?」
 と、着かえた意識もなかったのだ。
 意識が次第にはっきりしてくると、昨夜の友達との話を思いだした。
 彼は、大学時代に、
「約束したことがあったんだぞ」
 と言い出した。
 正直何のことだか分からなかった。
 その時々で約束をしたということはあっただろうが、記憶に残っているものは、なかった。
 ということは、
「その約束をした」
 ということは、その時に、すべて果たされて、解決したことではなかったか。
 そうでなければ、気になって覚えているはずである。それを覚えていないということは、自分の中では、
「解決済み」
 ということに違いない。
 それを考えた時、
「もし、未解決ということがあったのであれば、その約束をしたというのは、この俺だったんだろうか?」
 と考えたのだ。
 そして、
「覚えていないのか?」
 と驚いたようにいうのだが、
「本当に覚えていないのか?」
 と、さらに念を押してくるので、
「あ、ああ」
 と少し、怯えを感じ、臆してしまったかのようにそういった。
 すると、急に、そのテンションが下がっていって、
「そっか、覚えていないのか?」
 と、完全に落胆してしまい、
「じゃあ、しょうがない」
 と、割り切ったかのように、そういったのだ。
 それを聴いて、秋月は、相手が、何か、自分で勝手に納得してしまったということに、拍子抜けしてしまったが、それでも、
「まあ、いいか」
 と感じたのだった。
 ただ、その約束は思い出せないし、彼も勝手に納得してしまったので、これ以上詮索して、せっかく納得してくれた話を蒸し返す必要もないだろう。
 二人の間の共通の感覚は、
「お互いに、自分が納得する」
 ということだったのだ。
 秋月は、自分は納得いっていないが、言い出した相手が納得できたのであれば、
「それでいい」
 と感じたのだ。
「これが、大学時代の二人の関係だった」
 ということを思い出すと、
「そういえば、大学時代にも同じような感覚があったっけな」
 と感じたのだった。
 そして、
「大学時代というものを思いだすことで、最近は、頭痛に見舞われることが多い」
 という、
「偏頭痛になる時の共通点」
 を思いだしたのだった。
「大学時代の思い出として、卒業や就活に苦労した」
 という意識が強かった。
 だから、あの頃は、
「就活では、まわりが皆敵であり、油断してはいけない」
 と思いながら、
「情報に関しては、絶えずアンテナを張り巡らせて、共有するようにしておかないといけない」
 という、当たり前のことであったが、敵視している自分と、矛盾してるということに気づいていたのだ。
 そんな時、
「本当に、就職できるのだろうか?」
 などという意識が強かったことで、なかなか職は決まらなかったが、半分あきらめかけた時、一つの会社から内定をもらうと、それから受ける会社から、どんどん内定がもらえるようになった。
「あきらめてはいけない」 
 とよく言われてきたが、その時は、
「諦めようがどうしようが、決まる時は決まるんだ」
 と思った。
 そして、
「一つ決まると、精神的に余裕が出るのか、次々に決まっていく」
 それは、意識の中にあることではない気がする。
 というものであった。
 だから、その時から、
「何かの困難にぶち当たっても、変に悪い方には考えないようにしよう」
 と思うようになった。
 だから、昨日の、マンホールのところで、
「自分とにらめっこしようとしていた人を意識しないで済んだのは、その時の気持ちが、自分の中で功を奏した」
 ということになるのだろう。
 そして、その時、
「二人同時に何かを見た気がしたのだが、それが気のせいだったのかどうか、気持ちの中で引っかかっていた」
 ということであったのだ。

                 タイムトラベル

 それからしばらくして、友達から連絡があった。
「今度、遊びに行きたいんだけど、どうだろう?」
 というのだった。
「この間来たばっかりではなかったか?」
 と感じたが、それは言わなかった。
 数日後、約束通り友達はやってきて、一緒に飲みに行った。
 それは、まるで、
「デジャブ」
 であるかのように、自分の記憶と見事にリンクしたのだ。
 ただ、
「記憶にある」
 というだけで、相手は、まったく意識していない。
 そう思うと、
「何か気持ち悪い」
 と、デジャブに関して感じていたが、それだけだった。
 気持ち悪いとは思いながら、
「これは当たり前のことなんだ」
 として、それ以上の意識はしなかった。
 デジャブというものを感じた時、
「まるで、前彼が来た時を、また繰り返しているような気がする」
 と思ったが、
「数日前に戻った」
 という意識はなかった。
 だが、数日前のことと、寸分狂わないと思っていることには、違和感があったのだ。
 というのも、
「この感覚は、本当に、数日前と同じことを繰り返している」
 ということになるのだろうか?
 と考えた。
 数日前のことを繰り返すのであれば、
「午前0時から先からのすべての一日が繰り返されるはずではないか?」
 と感じたのだった。
 だから、
「この感覚が終わるとすれば、それは、午後11時59分までではないか?」
 ということであった。
「じゃあ、日にちが変わった瞬間は?」
 と考えた。
 その翌日は、どうなるのだろう?
「前の時の次の日になる」
 ということなのか、それとも、
「昨日から続くはずの、いわゆる今日が改めてやってくる」
 ということになるのか、それとも、
「デジャブになってしまったが最後、このリピートから逃れることができない」
 ということなのか?
 もし、これがリピートだとすれば、
「それは永遠に続くというものなのか?」
 あるいは、
作品名:時間の三すくみ 作家名:森本晃次