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時間の三すくみ

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「政治家の資質の問題だった」
 といえるかも知れない。
 いや、もっというと、
「世間の注目度から、その緊急性を、優先順位という形で考えていたとすれば、地震の時の政治家と、パンデミックの時の政治家とでは、
「質が違った」
 のかも知れない。
 ただ、
「今の政治家は、昔のあの未曽有の大地震というものを知っているわけだ」
 地震が起こった時の政治家は、それ以前に、似たようなひどい状況を見ていないので、初めての対応ということで、
「前例がない」
 ということになり、
「判断に困る」
 ということで、
「若干、ひいき目に見てあげないといけない」
 ともいえるだろう。
 そうなると、今回の
「地盤沈下」
 において、市長の対応は早かったといって、もてはやされたが、実際には、
「他になり手がいない」
 というだけで、再選を繰り返してきた、
「タレント議員」
 でしかない。
 実際に、評判はあまりよくはない。
「あの人は、アナウンサーをしている時に比べて、目つきが悪くなった」
 と言われるほど、
「人間が変わってしまった」
 ということであろう。
 人間というのは、
「某国」
 にも言えることだが、
「えらくなると、人間が変わってしまう」
 ということになるのだろう。
 それを考えると、
「政治家というのは、しょせん、自分のことしか考えていない」
 ということになるのだろう。
 今回の事故があってから、夜中に、
「工事中のところは、そのままにする」
 ということになり、昼間の工事も、
「あまり広げないように行う」
 ということになったのだ。
 そのせいもあってか、
「どうしても、時間が掛かってしまい、結局、工事が長引くということで、地域住民からは、文句が上がっているのだ」
 それを思えば、
「工事を始める前から、もっとしっかり地質調査をしていれば、こんなことにはならないのに」
 ということであるが、
「それはすべてが結果論」
 ということで、
「どうしようもない」
 というところが多いということになるだろう。
 それを思うと、
「一長一短」
 どっちがいい悪いということはいえないに違いないのであった。
 だから、
「片側通行はできる」
 ということなので、別に中に入れないわけではないが、彼はその時、工事中の前のところでタクシーを降りて、
「それ以上中に入る」
 ということはしなかった。
 別に
「ワンメーターくらいケチった」
 というわけではない。
 正直、ここまで来て、ワンメーターなんか関係ない。
 といえるだろう。
しいていえば、
「おつりか、小銭の関係で、どっちがいいか?」
 ということを考えるくらいで、
「例えば、2980よりも、3010円の方がありがたい」
 と思うくらいであった。
 小銭を出す方が、もらうよりも、財布が重くならずにいいということである。
 タクシーを降りて、その穴の近くを通りかかった時、ついつい、横目で、穴の中を覗き込んだ。
 夜でも、事故がないように、穴の方に向かって、まわりから、スポットライトが当てられている。
 その穴の向こうに見えるのは、影になった、丸いマンホールのような穴だった。
「昨年あった、あの事故の後を思いだしていたので、想像していたよりも、小さい穴にしか見えない」
 ということであったが、
「その穴の向こうには、何も見えなかった」
 というほど、小さい穴だったのだ。
「これ以上覗き込むと危ない」
 というくらいに覗き込んでいたが、それを自分でも自覚はしていなかった。
 確かに、
「危ない」
 とは思ったが、背筋が冷たくなる思いがあったわりには、覗くコムことに恐怖を感じたわけではなかったのだ。
 最初は、
「マンホールの穴だ」
 と思っていたので、ただの空洞だと思っていたが、何やら、表面が揺らめいているように見えた。
 そしてすぐに、
「あそこには、水が溜まっているのか?」
 と感じると、今度は、急に恐怖を感じたのだ。
 その理由として、
「まるで井戸のようだ」
 と感じたからだったが、
「井戸であっても、水が溜まっているとは限らない」
 というわけで、
「それよりも、水が溜まっていない空井戸の方が、恐怖を感じる」
 というものであった。
 それを考えると、
「井戸というものが、どういうものなのか?」
 と考えた時、
「昔好きでよく行った、城址を思いだす」
 のであった。
 城址には、
「絶対といっていいほど、井戸がある」
 これは、籠城などした時に、表に出れないことで、
「食糧よりも、絶対に必要な、水」
 ということで井戸があるということだ。
 だから、
「空井戸である」
 ということはありえない。
 もし、
「こんな空井戸が存在する」
 ということで考えられることとすれば、それは、
「隠しの逃げ道ではないか?」
 ということである。
「敵に攻められて、逃げるのに、井戸を使う」
 というのは、ありがちなことであり、さらには、井戸に隠れていて、
「そこからやり過ごした敵を後ろからと前からで、挟み撃ちにする」
 ということも考えられるというものである。
 そんな井戸というものが、かつての、城址に存在していたのを思いだしていると、
「さらに先ほど感じた、寒気であったり、湿気のようなものを思いだす」
 という感覚であった。
 そもそも、
「高所恐怖症」
 で、他の恐怖症も、併用して持っている秋月にとって、
「ここでの井戸に見える、工事中の穴は、不思議な感覚だ」
 と思えてならないのであった。
 その溜まっている水を見ていると、しばらくそこから立ち去れない気がした。少々気持ち悪くて、頭痛もするのに、しかも、家が目の前なのに、動くことができない。湿気で身体が動かせないという気持ちであった。
 すると、何やら、どこからか別の視線を感じるのだった、
 視線を感じたその先を見ると、マンホールのような穴の向こう側からだった。
「だから、視線は逸らす必要はないが、直視することはできない。その先に見えるその顔が、こちらを見ている」
 それは、相手とすれば、
「こちらの視線に決して臆することはない」
 という自信なのか、それとも覚悟なのかが、感じられるのであった。
 こちらも、まったく臆するつもりはなく、
「負ける気はしない」
 と思ったのだ。
 ただそれは、
「負ける気はしない」
 という思いで、
「勝てる気もしなかった」
 ということは、
「下手に視線を合わせてしまうと、お互いに金縛りに遭ってしまい、そのままずっと、その場から立ち去ることができなくなってしまう」
 と感じたのだ。
 それはあくまでも、逃げることができないということを示していて、
「相手もその覚悟があるのかしら?」
 と感じたのだ。
 だから、視線を感じながら、相手を直視できない。
 いや、直視してはいけないと思うのだった。
 その男が視線をこちらに向けた時、反射的に、視線を切ったのだった。
「いや、自分はその人の顔を見たわけではないんだ」
 と感じると、相手も、次第に、こちらが相手の顔を見ようという意識がないのを分かってか、視線の強さに陰りが感じられるようになった。
 こちらとしても、
「顔を見よう」
作品名:時間の三すくみ 作家名:森本晃次