黒歴史と普通という感覚
というのは、
「60分コースやそれより短いコースは、もったいない」
と思う。
他の人たちで、案内所を利用している人は、
「結構早朝の40分コースなどが多い」
と言われる。
理由としては、
「前の日から飲んで、朝帰る前に、ちょっとソープにでも行って」
と、友達数人で来る場合である。
だから、
「ちょっとムズムズしているので、解消して」
ということであって、しかも、
「友達と一緒」
ということであれば、短い時間でちょうどいいのだろう。
しかも、若い連中などで、時間が迫るという感覚もない。
しかし、一人で遊びに来て、いつも定期的に来ている人間とすれば、
「その日だけの予算」
という計算はしない。
だから、
「どうせなら、その一回が、楽しい思いをしないと面白くない」
と感じるのだ。
いくら安いからといって、会話もなく、最後には、
「二度と来ない」
と思うようなことになるのであれば、最初から、
「金を使っておけばよかった」
と感じるのだ。
だから、
「こういうお店で、自分なりの上限はしっかりと持っているが、大衆店として、の予算の範囲内であれば、それでいい」
と思うのだった。
その日は、案内所で、
「ちょうどいける女の子」
ということで話を聞くと、ちょうど、常連の店の女の子が開いていて、しかも、本指名ということで、
「なんだ、最初から予約を入れていたようなものじゃないか」
ということで、事なきをえたのだった。
実際に、店からスタッフが迎えにきてくれたので、相手も自分の顔を見ると、安心した表情を浮かべた。
普段から、フリーであったり、案内所からの客に対しては、一定の警戒心を持っているということであろう。それだけ、
「女の子を大切に思っている証拠だ」
ということになるのではないだろうか。
そんなことを考えていると、スタッフが、
「お久しぶりですね。案内所を使うこともあるんですね?」
といってきた。
「ああ、ええ、今日は会社の飲み会があったもので、一次会で終わってから、フラッと寄ったというところですね」
という。
すると、
「じゃあ、今日はほろ酔いということで?」
と聞くので、
「いえいえ、元々下戸なので、最初の一杯だけですよ、もう酔いも覚めてます」
というと、
「そのようですね」
といって笑顔を見せていた。
自分は、こういうスタッフとの会話も好きだった。
特に、待合室などで、時間を潰すのも、最近は結構楽しくなっていた。
というのは、ここ三年くらい前から、
「趣味で小説を書く」
ということを始めたので、いつもノートパソコンを持ち歩いている。そこで、待合室の広いところでは、パソコンを広げて、作業をすることができるのがありがたく、常連になる店の条件として、
「待合室が広く、そこで作業ができるところ」
というのが、優先順位では高いところにあるのだった。
この日は、ほとんど待つこともないだろうから、パソコンを広げる必要もない。そして、店を決める目安として、もう一つあるのが、
「スタッフの手際のいいところ」
というのがある、
店によっては、
「ネットで予約をしていても、受付から、お部屋へのご案内」
ということで、待合室に居合わせた順番ということで、下手をすれば。30分近く待たされるところもあるのだ。
そういうところは、意外と待合室も狭く、作業もできない。
ただ、こういうお店の特徴として、
「案内が遅れるということで、仕方がない」
ということは往々にしてあるのだ。
というのは、
「通路で、客同士」
あるいは。
「女の子と、客」
というのが鉢合うということは、正直気まずいものである。
というのは、
「いつも入っている子と違って、今日は別の子」
ということで、
「常連さんが、他の客に入った」
ということになり、お互いに気まずくなり、
「本指名客が一人減った」
ということもありえるだろう。
しかし、実際には、もっと大きな問題があった。
というのは、こういうお店で一番気を付けなければいけないのは、
「身バレ」
ということであった、
もしも、客が、女の子の知り合いだったり、身内の人間だったりすれば、
「気まずい」
というだけでは済まされない。
下手をすれば、父親が客だったりすると、自分もそういうお店に来ているにも関わらず、父親の権威を振りかざし、
「お前は何をしている」
ということで、店を辞めさせられることになったり、店で騒がれて、警察沙汰にでもなると、店としては、大変なことである。
ということで店側も身バレ防止のために、店の待合室に防犯カメラがあり、女の子を会う前に、
「女の子に確認させる」
ということになるだろう。
そこまでしているのに、もし、通路で出合い頭に他の客と顔が合ってしまい、
「その人が、実は肉親だった」
などという事態になれば、手の打ちようがないということになる。
だということであれば、最初から、合わないように工夫するしかない。
そうなると、
「自分の相手をしてくれる女の子以外とは、店の中では絶対に逢うことがないようにしないといけない」
ということになると、交通整理が必要で、店の中を、
「一方通行にする」
ということになる。
そうなると、
「他の客が終われば、店から出るまでは、他の客を案内しない」
ということになったり、案内の間、少しの時間を持つということも当たり前となるのだ。
つまり、客が5人待合室にいれば、一人3分のタイムラグがあったとしても、15分ということになる。そこに、変える客が倍だと考えると。30分というのもしょうがないということになるだろう。
それが、
「やむを得ない理由」
ということであった。
だが、さすがに、最初から予約を入れているのに、30分待ちというのはあんまりだ。
待合室が広くて、作業ができるのであればいいが、どうでなければ、
「時間の無駄でしかない」
どういう意味で、
「女の子」
という優先順位を別にすれば、店を選択する時の優先順位は、
「待合室の広さ」
と、
「待ち時間」
ということになるのだ。
もちろん、スタッフの対応ということも、当然であるが、それ以外にも細かいところはあったりする。
そのあたりの情報は、口コミなどを参考にするというのもいいだろうし、一度行った店なら、自分で把握しておくのも重要である。
スタッフの質という意味では、優先順位は低いかも知れない。
スタッフの場合は、結構入れ替わりが激しいという店も多いだろうから、それを考えると、
「優先順位が低いというのも無理もないことだ」
といえるだろう。
今回、案内所からやってきた店は、ちょうど前回最後に来たところで、約三カ月ぶりくらいであったが、自分には、
「まるで、昨日来たような気がする」
というくらいだった。
女の子も、三カ月前の子で、相手もしっかりと覚えていてくれた。
「久しぶりね」
と言われたが、まさにその通りで、こちらも、
「うん、久しぶりだね」
とはいったが、気分は昨日のこと、いつもよりも安心感に満ちた笑顔だったことだろう。
作品名:黒歴史と普通という感覚 作家名:森本晃次