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威厳と呪縛

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 早期退職者の募集というのは、
「いずれこのままいても、リストラ名簿に載るのは、遅かれ早かれ間違いない」
 と感じる人が増えてきた場合、会社としては、
「少々、不利な状態になっても、人件費を削減できるのであれば」
 ということから、社員に対して、
「今、自己申告で退職を言ってくれば、退職金などに色を付ける」
 というものである。
 前述の窓際族の人たちなどは、
「このままいても、どうしようもない」
 と思ってはいるが、
「すぐに辞めてしまうと、路頭に迷うだけだ」
 と考えていたとすれば、早期退職で、少しでも金が入ればということで、その会社の策略に乗る人も多かったことだろう。
 失業者が街に溢れるという状況が増えてきたのだが、会社の方も、リストラだけでは、まだダメという状況になってくると、今度考える方法とすれば、
「企業合併」
 ということであった。
「大きな会社に、助けてもらう」
 ということであるが、基本的には、
「吸収される」
 ということであり、会社のトップとしては、
「自分たちはどうなるか分からない」
 ということになる。
 しかし、このまま放っておけば、会社は破綻し、下手をすれば、借金にまみれて、夜逃げの状態になったり、ホームレスになったりしなければいけないことを考えると、
「経営者」
 という立場はなくなるかも知れないが、普通の生活ができればいいということで、吸収合併もやむなしと考える経営者もいるだろう。
 何といっても、従業員のことを考えれば、何もしないと、
「従業員も巻き込んでの倒産」
 ということになるからだ。
 そうなると、
「退職金どころではない」
 というものだ。
 だから、早期退職希望者が多いというのもうなずける。
 つまりは、
「早期退職で、退職金をもらっておかなければ。もし、会社にしがみついて、会社自体が危なくなってくると、もらえるはずの退職金ももらえず、沈む船に巻き込まれて、死んでしまう」
 ということになるかも知れないと感じたのだろう。
 それを思えば、
「早期退職ということで、退職金だけはもらっておこう」
 と感じることだろう。
 そもそも、そんな対策をしなければいけない時点で、会社は沈みかけているわけだ。その見切りをいつつけるかというのも、従業員として、
「会社もとろも」
 ということにならないようにしないといけない。
 それが、会社員としても、いろいろと覚悟のいる時代になったのだった。
 要するに、
「時代が、混沌としてきた」
 ということである。
 今までは、
「働けば働くほど儲かる」
 ということで、社員が、金のために必死になって働いてくれていたので、会社は、成長してきたのだ。
 しかし、それが、一気に崩れてしまった。
「人は石垣、人は城」
 と言った戦国武将がいたが、そんな人というものを大切にできない時代に突入したということは、
「沈むばかりで、浮き上がることはできない」
 ということになるだろう。
 それを思えば、今までであれば、
「目の前が、数学の単純な式のようなもの」
 ということで、社員は、シャカリキに働き、働く場所もあった」
 しかし、それ以降は、
「働くものがなくなり、今まで一緒に頑張ってくれた人を切り捨てるしか、会社という母体が生き残ることはできない」
 ということになった。
 経営者とすれば、
「会社を潰すということは、社員を巻き込んでの集団自殺のようなものだ」
 ということを考えると、
「若干の社員を犠牲にしてでも、会社を残さないと、この会社だけではなく、まわり全体を巻き込むことで、関連会社が一気に連鎖倒産ということになる」
 と思うだろう。
 実際に、大企業が破綻したことで、関連会社がいくつも煽りを食って倒産するというのを目の当たりにしているからだ。
「経営者は経営者で辛い」
 ともいえるだろう。
 それでも、何とか、
「吸収合併」
 などと繰り返すことで、生き残った企業も多い。
 銀行などは、ほとんどが合併してしまい、今までの名前とまったく変わってしまったというところも多く。
「前はどこの銀行だったのか?」
 ということは、ほとんどの銀行は分からなくなっているようだ。
 何とか分かるところは、それぞれの銀行の名前をくっつけただけで、やたら長い名前になっているというところもある。
 特に、大手銀行がいくつか合併した時、システム統合を無理したために、
「他の会社であれば、経営者の責任問題になる」
 というような案件が、システム統合してから一か月の間に、三件という
「許されないトラブル」
 というものを引き起こし、日本中、いや、世界を巻き込んでの大混乱を引き起こし、政府から干渉されるというとんでもないことになったのも、記憶に新しいところであった。
 バブル崩壊から、もう30年以上経っているのに、まだ、
「バブル崩壊」
 という時代の亡霊のようなものに惑わされているという、
「日本という国は、何とも、情けない国だ」
 ということになる。
 それが、意味としては若干違っているかも知れないが、
「失われた三十年」
 などということと同じことなのかも知れない。
 そんな時代において、
「バブルの崩壊」
 という呪縛から、今まだ解消されていない。
 政府などは、
「バブル崩壊からはすでに解放され、今は新たな局面を迎えているので、今の時代は、バブル崩壊からの影響ではない」
 と考えているかも知れないが、それは大きな間違いではないだろうか?
 下手をすれば、今まだ、昔のバブル時代の世の中を、引きずったまま生きてきた人もいることだろう。
 実際に、会社で現役の人というのは、もうほどんどいないだろうが、中には、そんな時代を覚えていて、君臨している経営者もいるかも知れない。
 特に、大企業は、
「世襲」
 というところも多いだろう。
 もっとも、そんな世襲というのも、なかなか難しい時代になってきて、
「百年近く続いてきた世襲の会社も、一族からではない社長が出てくる」
 ということで、
「今までは、創業者家族の名前を付けていた会社の名前が変わってしまう」
 というのも当たり前に起こっている。
 だから、
「バブル崩壊からあと、経営者の名前から、別の名前に変わった会社があったとすれば、ほとんどは、経営者一族が。会社経営から身を引いたところ」
 ということになるだろう。
 そもそも、そういう、
「同族会社」
 と言われる大企業は、昔の、
「財閥系」
 と言われるところであっただろう。
 それは、戦後日本の敗戦によって、占領軍が掲げた、
「日本の改革」
 という中にあった一つの方針ではないだろうか、
 それが、
「財閥の解体」
 というものだっただろう。
 財閥が解体されたはずなのに、昭和の頃まで言われていた、
「都市銀行」
 というものは、そのほとんどが、
「財閥の名前を冠した銀行名だった」
 といってもいいだろう。
 そういう意味で、昔言われていた、
「都市銀行」
 そして、
「地方銀行」
 という言葉の違いというのは、
「都市銀行というのが、元財閥系」
 ということの区別として言われていたのではないか?
 と考えられるのは、老婆心なのだろうか?
作品名:威厳と呪縛 作家名:森本晃次