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趣味が凌駕するバランス

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 都心というわけではないが、それでも地方では一番の大都市、政令指定都市で、地下鉄もあるところなので、車は必要はなかった。
 そういう意味で、家賃に駐車場代もいらないし、税金や車検代、ガソリン代などがいらないと、月々、数万の倹約ができる、これは大きかった。
 さらに、山崎には、
「これと言ったお金を使う趣味はなかった」
 酒もタバコも、昔からやらない。
 パチンコや公営ギャンブルもやらない。

                 充実感

 まわりの人は、
「何が楽しみで生きてるんだ?」
 といっている人がいたが、山崎には、
「小説を書く」
 という趣味があった。
 この趣味は、高校時代の後半、引きこもりになった時期から初めていた。
 普通であれば、
「引きこもりといえば、ゲームばかりしているんだろう」
 と言われるかも知れないが、彼がゲームに手を出すことはなかった。
 というもの、
「山崎は、結構、面倒くさがり屋だったのだ」
 ゲームというのは、結構根気がいるものではないだろうか。
 一生懸命にやって、クリアしたとしても、何か物足りなさがあるような気がした。実際に、少しだけ引き籠った時にしてみたが、
「何か味気ない」
 と感じ、充実感も、満足感も何もなかった。
 しかし、引き籠る前、結構本を読んでいたので、引き籠った時、
「ゲームするよりも、本を読もう」
 と思ったのだが、本を読むだけでは、引きこもってしまった手前、それだけでは満足できない自分がいたのだ。
 引きこもりということに対して、
「よほど、何か充実感のあることをしていないと、自分で自分を苦しめる」
 ということは分かっていた。
 だから、
「充実感と満足感」
 そのどちらも味わえるだけの何かをしないといけないと感じていたのだ。
 そこで考えたのが、
「小説執筆」
 であった。
 これであれば、パソコン一台あればできるし、何よりも、
「引きこもりから出ていく必要もない」
 ということであった。
 それを考えると、小説執筆という趣味は、実にありがたいことであった。
 その頃からずっと書いていた。
 大学時代も、文芸サークルに入り、同人誌のようなものを作って、それを、
「フリーマーケットなどで、販売する」
 ということもやった。
 それはそれで結構楽しかった。
 ただ、
「プロになりたい」
 という意識はなかった。
 サークルの中には、
「プロを目指したい」
 と思って書いている人も、もちろんいて、彼らは、必死になって、いろいろな懸賞小説に応募したりして、入賞を狙っていた。
 その中には、
「新人作家への登竜門」
 と呼ばれる新人賞もあり、中には、
「最終選考に残った」
 という人もいたりした。
 さすがに、新人賞受賞というところまではいなかったが、
「最終選考に残っただけでもすごいじゃないか」
 と言われていたのだ。
 それを見て、さすがに、
「うらやましいな」
 という気持ちがないでもなかった。
 さすがに、
「プロになりたいとまでは思わない」
 と公言している以上、
「まわりの人に羨ましいと思っているということを知られるのはまずいのではないか?」
 と思っていたが、それでも、
「何も感じていないと思われる」
 というのも、何か嫌で、そういう意味で、自分の中に、
「ジレンマというものがあるのではないか」
 と感じたのだ。
 逆にいえば、そのジレンマがあるから、
「小説を書いている自分を見て、
「しっかり頑張っている」
 と感じ、継続することができると思うと、
「継続することが自分のモットーだ」
 と考えるようになると、
「このジレンマというのは、悪いことではない」
 と感じるのであった。
 小説執筆することが、毎日の充実感に繋がるということは、書き始めたことから感じていたのであった。
 ただ。満足感というところまでは至っていない。
「どうすればいいのか?」
 ということはその時には分からなかった。
 一つ思っていたのは、
「趣味として、充実感を味わうこともできて、継続もできているということは素晴らしいのだが、実際にやっていて、苦痛に思うことがある」
 ということであった。
 小説を書けるようになるまでに、かなりの時間と思考力を使ったような気がする。
「小説を書くぞ」
 と思っても、そう簡単に書けるわけではないのが、
「小説執筆」
 というものであった。
 これは、
「誰もが通る道」
 というものであり、最初から、
「執筆しよう」
 と思ってできるものではない。
 まず最初に、執筆をしようとすると、最大の敵は、環境であった。
 他の人がやっていたように、
「パソコンに向かってやる」
 ということはできなかった。
「じゃあ、原稿用紙に向かって」
 と思ったが、それも無理だった。
「なぜなんだろう?」
 と思ったが、その理由が分かった気がした。
「気が散ってしまうんだ」
 ということであった。
 引きこもって部屋の中だけにいるのだから、
「気が散るなんてないだろう」
 と自分に言い聞かせてみたが、実際にはそうでもなかった。
 気が散るのはこの部屋のせいだと思うと、この密閉された部屋が今まで、何とも思わなかったのに、急に、狭く感じられたり、湿気を必要以上に含んでいるように思えて、息苦しさを感じるほどになっていた。
 それを感じると、
「図書館にでもいくか?」
 ということにしたのだ。
 引きこもっているといっても、
「家族に顔を見せない」
 ということと、
「学校にいかない」
 ということだけで、それ以外は買い物も、自由に行けた。
 何といっても、塾には行っているのだ。
 親の方としても、
「大学受験への意欲はある」
 と思っているだろうから、それほど心配はしていないだろう。
 ただ、親の中での世間体などというものがあるからか、引きこもりが、
「困ったことだ」
 と感じているのは間違いないだろう。
 かといって、刺激するわけにはいかない。
 どこかに相談しているようで、ある時までは、
「出てきなさい」
 と何度も頻繁に声を掛けていたが、急に声を掛けなくなった。
 山崎も、親が、
「きっとどこかに相談して、その人から、相手を刺激しないようにしないといけない」
 と言われたに違いない。
 それが分かったので、時々表に出ても、何も言われないと感じたので、自由に出入りするようにしたのであった。
 そもそも、
「引きこもり」
 というものが、
「ゲームばかりしている」
 というわけではない。
 中には、部屋の中で瞑想したりしている人もいるかも知れない。
 山崎としては、
「人のことは分からない」
 と思っていたが、自分が、
「ゲームばかりしているわけではない」
 ということなので、それだけに、
「外出には、何らこだわりはない」
 と思っていた。
 引きこもりになったのは、学校での、
「苛めがあった」
 というのも、その理由の一つだが、その頃の気持ちとしては、
「あの親父から離れられる」
 つまりは、
「一定の距離を置くことができる」
 と思ってのことだった。
「近くにいると思うだけで鬱陶しい」
 と思う。
 最初は分からなかったが、