対になるもの(考)
と、30年経った今では、そう感じることであろう。
時代はどんどん進んでいき、ここから先、どこに向かうというのか?
「やはり、自転車操業の破綻が、結局は、経済を停滞させる」
というのは、今も昔も同じことで、その間に、
「インフレやデフレ」
というものが絡んできて、今の時代であれば、
「円安」
などという問題が起こり、かつての日本が持っていた、
「超大国」
ということで、日本企業の大半が世界のトップだったなどというのは、もう幻ということになってしまったのだろう。
そんな自転車操業であるが、この自費出版社系の会社というのは、
「まず、必要経費として一番大きいのは、いわずと知れた、人件費ということであろう」
といえるだろう。
人件費においては、まず、原稿を応募してきた人に対して、
「その作品を読み込んで、評価を下し、さらに、批評をする」
ということになるだろう。
その批評というのも、ただ、お世辞を並べるわけではなく、
「最初に、批判的なことを書いておいて、その後に褒めることを書く」
というのが効果的だ。
「あなたの作品は、ここが残念だが、それを補って余りあるだけの内容が書かれている」
ということになると、
「落としておいて持ち上げるのだから、そのギャップで、かなりいいことを言われたと感じることであろう」
さらに、
「褒めるばかりであれば、お世辞にしか聞こえないが、批評が入っていれば、本当に読み込んでくれているということも分かるので、信憑性があり、この人なら、この会社なら信じられる」
ということになるだろう。
それを思えば、
「応募者に、会社や担当者を信用させる」
ということで、成功したといってもいいだろう。
問題はここからで、
「送り付けた内容の見積書で、いよいよ営業ということになる」
ということになるのだが、
「決して安い金額ではない」
ということから、
「まず相手は、すぎには納得するわけもない」
それをいかに説得するかというのが、ここからの営業としての成果になるわけで、もう一つ言えるのは、
相手は、出版に関してはまったくの素人だ」
ということで、
「出版に対しての、すべてのサポートは行う」
ということであった。
だから、人によっては、
「アイデアだけでも、本にできます」
ということで、そこから先のサポートであったり、実際に、文章に起こすということまで、編集者が行うということになる。
それは、出版という意味では、
「ルール違反ではないか?」
とも思える、ギリギリの線ではないだろうか?
実際に、原稿を起こして、作者に見てもらった時、どう感じるかというもの難しいところであろう。
もっとも、
「代筆量」
というのは、作者からいただくことになるだろうが、それがいくらほどになるかというのは、実際に分かるものではないといえるだろう。
小説を出版するまでに、本来であれば、
「きちんとした原稿を本にする」
というのが当たり前だが、ここは、
「売れる売れない」
ということよりも、
「いかに製本して、それを、著者に払わせるか?」
ということが問題なので、
「売れる売れないは、問題ない」
ということになるのだろう。
それを考えれば、本当であれば、すぐに、この
「自転車操業」
のカラクリに気づくのだろうが、それが分からないということは、
「それだけ、世間に対して無知なのか」
それとも、
「自費出版社系の会社のやり方が巧みなのか?」
ということになるのであろう。
「出版するまでを二人三脚で行い、さらには、営業も行い。そして、応募原稿には、批評する」
ということを、一人で果たして、何人を相手にしているのかということを考えると、
「果たして、一人で何人分の仕事をしているのか?」
と思い知らされるだろう。
今でいえば、
「相当なブラックだった」
といえるのではないだろうか?
実際に、
「本を出したい」
として、製本の段階にまで進む人は少ないだろうが、実際に、原稿を最初に送り付けてくる人は、相当いるだろう。
それを考えれば、
「寝る暇ないかも?」
というほどではないかと、容易に想像がつくというものだ。
それでも、かなりの社員はいるだろう。
「人件費もバカにならない」
ということだ。
その次に罹る必要経費ということで考えられるは、
「宣伝費」
ではないだろうか。
この商売で一番必要なのは、
「本を出したい」
と考える人を一人でも手に入れるということであった。
そのためには、興味のある人に会社を認知させることが必要であり、何といっても、最初にすることは、
「宣伝をして、こういう会社があるということを、皆に知らせる」
ということであった。
文芸雑誌はもちろんのこと、
「新聞や、週刊誌などの宣伝部分に、少しでも入れてもらう」
ということが大切であった。
というのも、
「もちろん、認知してもらいたい」
というのも大切なのだろうが、何よりもそのために、
「これだけ宣伝を載せている会社なので、儲かっているということと、メディアに信用があるということを、見る人に信じ込ませることができる」
ということが大切だということであろう。
「本を出したい」
と思っている人とすれば、
「そんな会社があるのか、興味あるな」
と思っているところに、
「これだけ宣伝が乗っているということは、怪しい会社ではないということだろう」
と認識することで、安心させるというのが大切なのだ。
しかも、
「年間発行部数が日本一」
という実績のある会社もあり、
それだけで、世間への認知は、
「ハンパではない」
ということになる。
「新しいジャンルの経営方針」
ということであり、
「その成功例」
ということで紹介されるようになれば、
「一石二鳥」
ところか、
「一石三鳥」
にも、それ以上にもなるというものであろう。
それが、宣伝効果というものである。
さらに経費というと、その他には、事務所の家賃であったり、備品代金であったりと、細かいところはいくらでもあるといってもいいだろう。
それとは別に、これが一番忘れられている部分ではないかと思うのだが、
「倉庫などの、在庫管理費」
というものではないだろうか。
それがどれほどの値段になるのかということは分からないが、
「これは意外と想定外だった」
ということになるだろう。
というのは、
そもそも、筆者に本を出す時の部数として、最低でも、500部くらいは、お願いすることになるだろう。
しかし、それだけ作っても売れるわけではない。
そもそも、
「素人の作品をいくら製本したからといって、本屋が置いてくれるわけはない」
ということは、分かり切っていることである。
作者としても、
「少しでも売れればそれでいい」
ということであり、そもそもの目的とすれば、
「本を出したい」
と思っている人よりも、
「小説家になりたい」
と思っている人が、
「賞ではなかなかうまくいかない」
ということで、
「このままなら、自分の作品が表に出ることはない」