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黒歴史

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 ということであった。
 なるほど、確かにそう考えると、腑に落ちないと思うのも無理もない。
 しかし、警察は、そういうスピリチュアルなことをそのまま信じるというのは危険な感じがして、参考程度に聞いていた。
 というのも。
「確かに彼女が危険な状況を逃れたのが何度あったのか分からないが、あくまでも、回数ということである」
 と考える。
 つまり、実際に逃れたのが、2回だったとして。本当であれば、
「危険に晒されたのが10回あったとすれば、その危険を回避できた確率は、2割にすぎないではないか?」
 ということになる。
 しかし、これは逆に、
「10回というのが、多すぎるのではないか?」
 ともいえることで、それを考えると、
「そもそも、逃れることができたことが複数回あったというだけで、すごい回数であり、逃れる確率がいくら低かったとはいえ、逆に、命の危険に晒される可能性が低いわけではないともいえる」
 ただ、その、危険の度合いがどの程度なのか?
 ということである。
 例えば、
「死ぬまでは行かないまでも、骨折をしたり、転んで気を失ったりしたので、救急車を呼んだりはしたが、すぐに気が付いて、念のために病院で精密検査をしたが、別に異常があったわけではない」
 などということになると、
「それも、生命の危機に入れるかどうか?」
 ということが問題となるだろう。
 しかし、実際に問題になったわけではない。
 人によっては、
「あいつはどんくさい」
 ということで、よく、階段から滑ってこけてしまったりして、
「骨にヒビが入った」
 などという人も結構いる。
 しかも、そういう人は、
「何度も同じような目に遭っている」
 ということで、いつも命の危険に晒されることはないので、
「おっちょこちょいなので、こんなことになるんだ」
 と、口の悪い人から言われていたりするだろう。
 それでも、本人も
「俺が悪いんだ」
 ということで、何も言い返せない。
 それどころか、
「俺が危険な目に遭ったことから、誰かに何を言われようとも、ただどんくさいだけではないか」
 と思えてしまい、他人のいうことを鵜呑みにするという人が多いだろう。
 そうなると、自分で自己暗示に掛けてしまい、
「俺ってどんくさいから、何度も同じようなことで、ケガを繰り返すことになるのかも知れないな」
 と感じてしまうと、実際になってしまうということは往々にしてあるということになるのだろう。
 それを考えると、彼女のように、
「危機を脱する」
 という特殊能力のようなものがあるということになると、確かに、
「簡単に即死するほど、犯行がスムーズに行われたというのは、何か腑に落ちないというところがあるといえるかも知れない」
 というのも、信憑性があるのだ。
 確かに、警察で行われた、
「司法解剖」
 というものでは、
「死因は、鋭利なナイフのようなものでの刺殺」
 ということであり、
「即死状態であった」
 ということであった。
 つまり、
「ナイフで刺されて、出血多量によるショック死」
 ということだったのだ。
 ただ、解剖を行った法医学の先生がいうには、
「傷の深さは、出血多量となるには、少し浅い気がする。即死といっても、少し苦しんだのかも知れない」
 ということであった。
 実際に、
「苦しんだ痕のようなものが、見えた」
 ということなので、少しのたうち回ったという状況だったのかも知れない。
「声を上げたかも知れない」
 とも思ったが、刺された状態で、声を振り絞ったとしても、本当に声が出たのかどうかまでは、死んでしまった後ということであれば、分かるわけもなかったのだ。
 それを考えると、
「殺された女性を、少し調べてみる必要もある」
 ということで、現場の聞き込みが急務だったのだ。
 実際に刺された時間というのは、夜の9時頃だというので、人通りはあったかも知れない。
「大きな駅前の大通りを数十メートルほど行ったところから、狭い路地に入って少し行ったところ」
 というのが犯行現場だったのだ。
 そこは、前述のように、オフィス街であり、その時間であっても、比較的人通りは少ないと思われる。
 しかし、それでも、
「駅前のオフィス街」
 ということで、
「まったく人通りがなかった」
 ということはないだろう。
 一人や二人の聞き込みができて不思議はないわけで、彼女がどういう状況だったのかによって、事件の様相は変わってくる気がした。
 防犯カメラの映像も、重要な事件解決への糸口となるだろう。
 実際に押収したカメラの映像を見ると、
「司法解剖の見地とほぼ同じだったことが分かる」
「被害者の彼女、確かに抵抗はしていないですね」
 ということであったが、よく見ていると、彼女は、刺される少し前まで、まわりをキョロキョロとしていた。
 しかし、ふいに、まわりを気にしなくなってから、足早にその場所を通り過ぎようとしているところからの、一気に襲い掛かってきたという感じであった。
 完全に、不意を突かれ、逃げることもできなかったということだろう。
 それを彼女を知っている人にいうと、
「ああ、彼女は結構用心深いんですが、ある程度まで気にして、自分の中で安心してしまうと、今度はまったくまわりを気にしなくなるんですよ」
 というではないか。
「それだけ自分のそれまでの目に自信があるということかな?」
 と刑事がいうと、
「そうですね、用心深い人が陥るかも知れない、隙のようなものが絶対に襲ってくるので、その瞬間を彼女が持っているのかも知れませんね」
 というのであった。
「なるほど」
 と聞き込んだ刑事が納得した。
 彼は名前を桜井刑事という。
 桜井刑事は、事件解決に今までかなりの成果を挙げている。
 彼は彼なりに推理ができる刑事で、自分が集めてきた情報を元に、自分なりに推理をするのだった。
 まだ、初動捜査の段階といってもいいので、状況証拠を組み立てるための、物証や証言を探しているところなので、
「事件における全体的な推理まではいかないが、細かいところでの、ちょっとだけ前に進むという推理くらいはするのであった」
 ということだ。
 ここで感じたことは、
「彼女が油断した瞬間を、いきなり狙っているということは、犯人は彼女の知り合いか、あるいは、知り合いでなくとも、彼女のことを熟知している人間がやった犯行ではないだろうか?」
 ということだった。
 そして、もう一つ言えるということとして、
「彼女は普段から狙われると思っていたのかどうなのか。微妙な感じがする」
 ということであった。
 ということで、まずは、生活安全課に聞いてみることにした。
「永野静香さんですか?」
 ということで、生活安全課の方でも、調査をしてもらうと、
「ええ、確かに一年くらい前に、相談に来られたことがありました」
 ということであった。
「それはどういうことだったんですか?」
 と桜井刑事が聞くと、
作品名:黒歴史 作家名:森本晃次