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黒歴史

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 と皆不思議に思っていたが、桜井刑事には分かった気がした。
 最初からずっと覚悟を決めて、黙秘権を行使していたが、そもそも、精神的に強いわけではない男であれば、その限界というものはすぐにやってくる。
 そうなった時に考えることは、
「この状況から一刻も早く逃れたい」
 ということであった。
 物証からすれば、もう助かる見込みがないと思ったのだろう。結果、
「死を選ぶしかない」
 と思ったに違いない。
 要するに、
「限界を突破した」
 ということで、桜井は、彼が、必死に黙秘を続けている時、
「彼は犯人ではない」
 と確証し、再度事件を自分なりに捜査し直したのだ。
 最初は、捜査本部から、
「お前は何をやっているんだ」
 と言われたが、その容疑者が、
「留置所で自殺を試みた」
 ということで、ショックも大きかった。
 だから、桜井刑事の行動を責めることはできなかったが、とにかく、
「被疑者死亡」
 ということで、事件を起訴するしかない状態となった。
 それで事件は終わったのだが、その後、別の事件で逮捕した男が、
「自殺した男の事件」
 というのにも、
「自分が関与した」
 と言い出したことで、捜査本部は慌てたが、結局、
「あの事件は、解決済み」
 ということで、
「死人に口なし」
 ということで、結局、
「握りつぶし」
 ということに遭ってしまった。
 これは、桜井刑事にとって、
「最大の黒歴史」
 ということであった。
「辞表を提出する」
 という寸前まで追い詰められたが、最後には思いとどまった。
「これは、結局、俺が最後の墓場まで持っていくしかない」
 ということだと観念したのだろう。
 ただ、この事件は、
「未解決として、曖昧に片づけられる」
 ということよりも、辛いことであった、
 だけど、曖昧に片づけられる事件の多さにもうんざりしていたので、
「それを少しでもなくす」
 ということが自分の使命だと、桜井刑事は感じたのであろう。
 人間には、少なからずの、
「黒歴史」
 というものが存在する。
 桜井には、それが、
「冤罪を生んでしまった」
 ということであった。
 この自殺の問題は、当然、報道されたが、
「なぜ、自殺をしたのか?」
 ということは、その時の捜査員と、上層部しか知らないという、
「トップシークレット」
 だったのだ。
 だから、マスゴミも、
「謎の、獄中自殺」
 などというタイトルで、関心を煽りはしたが、だからと言って、世の中は、
「人のうわさも七十五日」
 というではないか。
 次第に世間の関心も薄れてきて、
「そういう薄れてきたことを蒸し返すだけの材料がマスゴミにはなかった」
 ということで、他の話題に向かって、走っていくのであった。
 マスゴミというのは、そういうものだ。
 いつまでも、世間の関心をつなぎとめておけないことに、執着するということはないだろう。
「そんな暇があったら、新しい話題を探してこい」
 というのが、編集長の口癖なのではないだろうか?
 そういう意味では、
「いかに見切りをつけられるか」
 ということが問題なのだ。
 それを考えると、
「マスゴミというのも単純だ」
 ということになり、
「マスゴミというものは、本当に世間を煽るのがうまいので、食いつかれると厄介だが、うまく利用すれば、結構、うまく使えたりするのではないだろうか?」
 というのは、警察上層部の中で思っている人もいるかも知れない。
 実際に、
「警察の中に、諜報部のような秘密期間があれば、彼らであれば、うまくマスゴミを使って、情報操作」
 をするかも知れない。
「情報操作」
 というものを、
「必要悪ではないか?」
 と考えている人も多いだろう。
 そもそも、
「情報操作というものが、悪なんだ」
 というのは、どこから来たのだろう?
 昔であれば、当たり前に行われていた。
 もちろん、それは、大日本帝国時代のことで、それが、
「やむを得ない場合」
 という但し書きというものがついてのことであろう。
 今の、日本国における、
「日本国憲法下」
 では、
「言論の自由」
「報道の自由」
「宗教の自由」
 という、いわゆる、
「三種の自由」
 といってもいいものが補償されている。
 大日本帝国下の、
「大日本帝国憲法」
 というものの下でも、当然、自由が保障されているというのは当たり前のことであったに違いない。
 だが、それ以上に、
「戦時下」
 であったり、
「動乱の時代で、治安をまともに維持することができない」
 という時代になると、
「三種の自由」
 どころか、行動にまで自由が阻害されることになる。
 というものだ。
「行きたいところにも行けない」
「食べたいものも食べれない」
 さらには、
「国から、赤紙がくれば、戦争にもいかなければならない」
 ということで、
「肉体的に軍隊で耐えられるかどうか」
 という徴兵検査に合格しなければ、入隊したくともできないのだが、逆に、
「肉体的に問題ない」
 ということであれば、強制的に軍隊に入隊ということになるのだ。
 拒否はありえない。国民の義務というものだからである。
「国家のため、そして、天皇陛下のため」
 ということである。
 もし、
「徴兵検査で不合格になって、徴兵免除ということになった」
 とすれば、
「ああ、よかった」
 ということにはならない。
 なぜなら、その時点で、まわりからは、
「お国のために働くこともできない非国民」
 と言われかねないからだ。
 実際に、健康な青年たちは、入隊して、戦場にいかされ。結局、
「お骨となって返される」
 ということになるのだ。
 もちろん、
「英霊」
 ということになるだろう。
 だから、どんどん兵に取られて、戦争で死んでいく人が増えるのだから、
「戦争というものは、いったん初めてしまうと、簡単に終わることができない」
 というのは、
「こういう英霊の人たちのために、やめるわけにはいかない」
 という理由が大きい。
 だから、戦争継続という国家方針があれば、
「初志貫徹」
 のために、情報操作が、不可欠なのだ。
「死んでいった連中に、申し訳ないと思わんのか?」
 と言われ、人情に訴えられると、
「それに対して反対などできるわけもない」
 ということになる。
 それを考えると、
「俺たちにとっての戦争は、勝つか、玉砕しかない」
 と、敗色濃厚になってきたのを知っている人は、そう思うしかなかっただろう。
 だから、
「玉砕戦法」
 であったり、
「カミカゼ特攻隊」
 などということが行われる。
 実際に、
「捨て身戦法」
 というものを使い始めると、勝ち目がないということくらいは、誰の目にも明らかであろう。
 そもそも、
「初志貫徹」
 とは何なのか?
 日本が、宣戦布告した理由は、
「大陸に侵攻して、やめることができなくなった状態で、経済制裁が行われ、経済制裁をやめてほしければ、明治維新の状態に戻れ」
 というものであった。
 ただ、これは、不可能なことである。
 そもそも、
「日本の国土だけでは、人口増加問題に、対応できない」
 というのが一つの理由となって、
作品名:黒歴史 作家名:森本晃次