小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
novelistID. 69613
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

悠々日和キャンピングカーの旅:⑬富士山五合目とその周辺

INDEX|7ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

 リニア中央新幹線は「国家的見地に立ったプロジェクト」と位置付けされていることを再認識したと共に、それを静岡県は、落としどころを失った無茶な反対(私にはそう思えた)で、開通時期をかなり延期させてしまい、もったいないことをしてしまったというのが私の感想だ。

 エレベーターで3Fに昇り、シアターに入った。
 印象的だったのは、走り始めの「タイヤ走行」から高速運転になってからの「浮上する」シーンで、実際は見ることはできないが、乗れば、体感できるのかもしれない。
 そして、500km/hを体感出来るとのことだったが、映像だけではなかなか難しいという印象だった。

 HOゲージのジオラマがあった。
 リニア中央新幹線開通後の山梨を舞台にしたかなり大きなジオラマで、リニアは高架線の上を走っていたが、それよりも、町並みや田舎を走る在来線の方に興味があり、走る列車を目で追っていた。
 毎度のことだが、ジオラマを見る度に、Nゲージ(軌間:9mm)が欲しくなる。
 田舎の風景の中を数両の客車を牽引するSLのC11、そして大正生まれのSLの9600型が十両ほどの貨物車両を牽引、さらには、軽便鉄道の小さなSLが短い客車を1両牽引する情景のジオラマを作りたいと、もう何十年も思い続けている。まだ手を出していないが、夢のままで終わりそうな気がする。

 2Fは、リニアが浮くしくみを知ることができる階だったが、子供たちが遊んでいて、じっくりと見る余裕がなかった。
 しかしながら、磁力のN極とS極が少しずつずれることで、「吸引力」(引きつけ合う力)と「斥力」(反発する力)が連続して作用し、浮上・前進するしくみだと理解しているので、まあそれで十分だと思い、屋外の見学テラスに移動した。
 すると、ちょうどリニアがやって来る時刻で、500km/hで走行中のリニアの写真をデジカメのハイモードの連写機能で撮ることができた。目の前を走るリニアは圧倒的に速かった(こんな感想しか書けない私がつらい)。

 この速度を時間で表現するならば、東京・名古屋間の286kmを40分、東京・大阪間の438kmを67分で結ぶことができる速さだ。
 東京・大阪間については、リニアは空路の速度より若干劣るが、所要時間は早く、且つ1編成当たりの定員は空路の2倍とのことで、Time is money. ビジネスなどの効率がアップするのだろう。
 東京・名古屋間の開通時期は当初2027年だったが、開通が遅れて、早くても2034年以降になるとの見解が表明されている。そして、全線開通後の期待される年間効果額は7,100億円と計算されていて、大いに驚いた。
 効果発生のタイミングが先送りになった今、これは国家としての大損害と言っても過言ではなく、そうなると、その賠償請求が、開通時期を遅らせてしまった静岡県に届かないことを祈るばかりだ。

 最後は多少のボヤキになってしまったが、この紀行文を執筆している2024年の今から約10年後にリニアが開通しそうだが、まだ元気ならば、リニアには是非、乗車したいものだ。

 リニアを後にして、R139を北上して大月市へ、そこで、旧甲州街道を継承するR20に入って、西に向かった。
 関東山地の南部と御坂山地の東部で挟まれた山間の笹子川(相模川の支流)沿いで、JR中央線、中央自動車道、それにR20が徐々に標高を上げていき、3線とも笹子峠のトンネルに入った。

 ちなみに、R20についての歴史を少し紐解く。
 大月市から甲州市の境界をまたぐ笹子峠越えの峠道だったR20は、1958年の新笹子トンネル開通後に、そのルートがR20となり、峠道は山梨県の県道に降格した。
 この新笹子トンネルの長さは2,953mの、当時は日本2位の長さを誇り、山梨から東京圏への物流が中央本線の鉄道輸送からR20を利用したトラック輸送に変化したとのこと。

 そして忘れてはならないのは、中央道の上り笹子トンネルで2012年に発生した「天井板落下事故」で、天井板のコンクリート板が約138メートルの区間にわたって落下し、走行中の車3台が下敷きとなり、9名が死亡した事故だ。それ以降、その構造の見直しや点検方法が改善されたと聞いている。

 新笹子トンネルを抜けたすぐ右側に道の駅「甲斐大和」があり、立ち寄った。
 R20の交通量が多いのか、周囲に道の駅などのパーキングが少ないためか、駐車場がほぼ満車の状況で、駅舎から一番遠い場所に「ジル」を停めざるを得なかった。
 そのショップの前の出店で、ぶどうが売られていた。
 シャインマスカットが安く、ひと房がなんと500円で、驚きながらも、怪しい気がしたので、安価な理由を訊いたところ、少し小粒で、ぎっしりと詰まっていない房だからとのことだったが、味は良いとの説明された。つい買ってしまったが、満足する良い味だった。

 土曜日の今日は、毎週「おたより」を送っている宮城県の某コミュニティFMの某番組の放送のある日だ。リニア館を出た時はもう、この番組が始まっていたので、「ジル」のコンポから聞ける準備を急いで進めた。

 コミュニティFMは、従来のFM放送よりかなり弱い20Wという小さな出力で、市町村単位の特定のエリア向けに放送するFM放送のため、遠く離れた場所では、ネットのサイマルラジオなどにアクセスして聞かなければならない。
 「ジル」の中で今、二人で聞くには、スマホでアクセスすればOKなのだが、2時間半もの長時間の番組のため、かなりのギガ数を使ってしまうため、大容量を安価で契約しているポケットWiFiを起動させ、スマホでサイマルラジオの某コミュニティFM放送にアクセスし、さらに、スマホとコンポをブルートゥースで繋いで、「ジル」のスピーカーで聞き始めた。

 R20の新笹子トンネルを抜けて、勝沼の「ぶどうの丘」に向かっている時に、私からの「おたより」が読まれた。その内容は、家族で南米のコロンビアに赴任した時の事だったので、妻も懐かしく感じながら聞いていた。

 R20から勝沼方面に向かう県道に入った途端、周囲は全てぶどうの果樹園になった。それだけでも、甲州市に入った気がしてくる。
 道路沿いには幾つもの観光農園があり、その駐車場の上まで、ぶどうの木が伸びており、そこから多くのぶどうの房が下がっているのが、何と言っても甲州っぽい風景で、見た瞬間に気に入ってしまった。

 「ぶどうの丘」は、その名のとおり丘の上にあり、ぐいぐいと上っていった。
 その駐車場にはかなりの台数のクルマが停まっていて、一番奥のスペースに「ジル」を停めたところ、 それが幸いしたのか、その横には、とんがり屋根のかわいい鐘楼があり、それは「希望の鐘」とのことで、ガンガン鳴らしてしまった。その小学生のような私の行動に、妻が距離を開けた。

 ここには数年前に来たことがあり、今回は2回目になる。
 初めての時は、家族と娘の友達と一緒に、地下のワインカーヴ(ワイン貯蔵庫)に入って、専用の試飲容器タートヴァンを使って、多くのワインを試飲して、数本のワインを買った。私は運転手だったので、試飲はできず、帰路のクルマの中では、私以外は皆、気持ち良く寝ていたという思い出がある。