小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
novelistID. 69613
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

悠々日和キャンピングカーの旅:⑬富士山五合目とその周辺

INDEX|4ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

 東から雲が湧いてきて、富士山頂に掛かりそうな勢いだ。まだ見えていた山頂の写真を撮ったが、すぐに見えなくなった。
 その撮った写真を見ていて分かったのは、五合目のすぐ上からは木のない山肌が見えていたことから、ちょうど五合目が森林限界なのだろう。

 まずは「小御嶽神社(こみたけじんじゃ)」に参拝して、この旅の安全と家族に健康を祈った。いつも同じことを祈願している。
 その横の展望台からの景色は、雲海で下界が見えないならば絶景なのだが、今は上も下も雲で何も見えなかった。残念。景色のことも祈願しておくべきだった。
 短い参道を戻っているとき、雲が一瞬流れて、山頂が見えたが、見る見るうちに、再び雲で見えなくなった。今日は、このような雲の動きで、山頂付近の景色が目まぐるしく変化する日なのだろう。

 次は、ここで最も目に付く「五合園レストハウス」のショップに入った。
 その入口がたいへん面白く、「富士山世界文化遺産」、「富士山五合目国際観光協会」、「富士山五合目簡易郵便局」、「外貨両替商」、それに「郵便ポスト」があり、日本中および世界中の人を受け入れる場所だと、改めてそう思った。
 ショップの中には多くの情報あり、色々な土産物が売られていた。娘にはここでしか売っていない菓子を、息子には富士山と書かれたウイスキーを買った。

 ショップの外に出てから、そのあたりをぶらぶらしていると、乗馬場の係の女性から、吉田口登山道までの往復乗馬を勧められたが、雲で景色がない今、魅力を感じなかった。
 代わりに、その女性が勧めてくれたのは、ここの西側には天皇陛下が歩いた道があり、今、多少なりとも雲が薄いので、その道を散策してみてはどうかというものだった。
 森林限界の木々の中の散策で紅葉が見えるのかもしれないと思い、ふたりで散策道に入って行った。

 そこは溶岩が冷えたような路面の上に小石が敷き詰められたような森の中の散策道で、しらびそ、ダケカンバ、シャクナゲ・・・の木々が群生していて、場所によっては美しく紅葉していた。私は木の幹や葉の形から木の名前は分からないが、木に付けられたプレートで、それが分かった。
 暫く歩いたところが少し開けていて、そこから、早く流れる雲の間に山頂が見えた。
 往復30分ほどの秋を感じた散策になった。

 戻ってきたとき、少し空腹を感じていたので、「ジル」の中でドリップコーヒーを淹れて、前日に妻が自宅で作ったパンを持ってきていたので、それにハムを挟んで、先ほど買った富士山メロンパンも加えた昼食前の軽い朝食になった。

 五合目をそれなりに楽しんだので、下山することにした。次回は、いつになるか分からないが、その時は、下界を見ながらの乗馬を楽しみたいと思った。
 富士スバルラインで下山途中にあった展望台に立ち寄った。
 そこから見えたのは、雲上の南アルプスの北岳や間ノ岳の頂上で、滅多に見られない展望を味わった。それらは、富士山に次ぐ標高の2位と3位の山だ。穂高連峰の奥穂高岳も同じく3位の標高を持つ。
 間ノ岳は以前4位だったが、奥穂高岳に追い着いたようで、それは、測量精度に依るものなのか、南アルプスの造山作用の結果なのか、そこまでは調べたことはないが、今、標高3位の山はふたつある。その右側には八ヶ岳が見えた。振り向くと、富士山の頂上が雲間に見えた。

 TVの山番組を見ていると、色々な山頂からの眺望の中に、遥か遠くの富士山が見えるシーンがある。その山容は登山家や多くの人の心に残る姿であり、見えると嬉しくなる山なのだろう。
 自宅からの富士山は遠くて小さくて、気象条件にも依るが「見える山」なのだが、どこかに行った際は「見たい山」に変わり、それが見えないと、ものすごくがっかりしてしまう山だ。

 富士スバルラインを下り終えてから河口湖に向かった。
 川口湖の東側に並ぶ大型のホテル群の前の湖畔道路を北上した。ここには多分、高校3年生の修学旅行の時に泊ったホテルがあるはずだが、どのホテルなのか、全く記憶がなかった。帰宅してから、その修学旅行のアルバムに貼っている写真を見て、半世紀近い過去にタイムトリップしてみることにした。

 既に13時を回っている。思いの外、五合目で時間を費やしたことに気付いた。
 山梨県に来ているのだから、昼食はもちろん甲州名物の「ほうとう」だ。誰でもそう思う「べたなメニュー」だが、食べたくなるものだ。
 以前、友人から教えてもらった「甲州ほうとう 小作」の河口湖店で食べた美味しい「ほうとう」を思い出し、もう一度、そこで食べようとしたが、その駐車場は満車の状況で中に入れず、入口には客が行列を作っていたので諦めた。

 別の「ほうとう」の店を探していると、多少の行列があるものの、広い駐車場があったので、そこに決めた。
 注文した「ほうとう」が運ばれてきた。期待しながら、まずは汁を飲んだが、私の好みのみそ味ではなく、どちらかと言えば、美味しくなかった。
 それに、「ほうとう」には必須の南瓜(かぼちゃ)は多分、残念ながら、冷凍ものかもしれない。大いに期待したものに裏切られるとショックが大きい、大き過ぎる。
 そのとき、舌が肥えている妻が私に「ここにはもう来ないね」と。そうだ、もう来ない。

 河口湖の、どちらかと言えば西側の、大きなホテルのない南側の湖畔道路沿いの道の駅「かつやま」に立ち寄った。
 駅舎の中を見て回った後、湖畔道路から湖側に広がる芝生の広場(小海公園)を、小春日和の中、ゆっくりと歩きながら、気持ち良い時間を過ごした。
 ただ残念なのは富士山が見えなかったことで、その替わりでもないが、目の前の湖面越しの御坂山地(みさかさんち)を眺めていた。

 このとき、ふと思ったのは、この御坂山地や西側の天子山地(天守山地)、そして東側の丹沢山地や箱根火山が、いかにも富士山を中央火口丘に持つ外輪山のように見えてくる。そのような学説はないようだが、ひょっとして、もしそうならば、阿蘇山より規模の大きい外輪山になる。

 この御坂山地の最西部に、流入する河川も、流出する河川もない内陸湖の四尾連湖(しびれこ)があり、この季節、紅葉が美しい湖とのことで、江戸時代の頃は、富士五湖に、四尾連湖、泉水湖(せんずいこ)、明見湖(あすみこ)も加えて「富士八海」と呼ばれていたそうだ。
 ただ、四尾連湖までの交通の便が悪く、これまでは、訪れる人は少なく、あまり俗化されていない状況だったが、「ゆるキャン△」で、ここのキャンプ場が登場して以来、聖地巡礼地となっているとのこと。そのファンの私も一度は行ってみたいと思っている場所だ。  

 小海公園の芝生の上で、この近くの温泉をネットで探したところ、西湖の北側の湖畔に「富士西湖温泉 いずみの湯」があり、そこに向かうことにした。

 西湖は川口湖と違って、ホテルが少なく、キャンプ場が多いようだ。その客が利用する温泉が、この「いずみの湯」のように思えた。無色で、匂いはあまりしない、少し温めの温泉だった。