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犯罪という生き物

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「簡単には、解決しない」
 と思っていた。
 それだけに、
「入ってくる情報をすべて鵜呑みにすると、どこかで話が混乱してきて、解決できないということになるのではないか?」
 と考えたのだ。
 そして。
「事件の裏に何か蠢くものがある」
 と考えるようになったのであって、
「今までの捜査で培ってきたものが役に立つかも知れない」
 と感じたのだ。
 それを考えると、
「敢えて、ストーカー犯罪だと一度決めてかかるのもいいかも知れない」
 と考えたのだ。
 もちろん、捜査本部の決定に際して、勝手な捜査はできないだろうが、
「頭の中で想像して推理する」
 ということは、いけないことではない。
 それで、捜査が混乱するということがなければ、許されることであった。
 特に桜井刑事は、今まで数々の犯罪捜査の中で、
「自分ができる範囲での推理を披露したことで、事件解決に導いた」
 ということが結構あったということである。
 もちろん、だからと言って、
「最初から捜査本部に信頼されていた」
 というわけではなかった。
「何を自分勝手なことを」
 と言われて、その推理も、
「勝手な推理で混乱させやがって」
 と言われることが多かったのだが、実際に事件の捜査が進んでいくうちに、
「まるで予言者」
 といってもいいくらいに、推理に則った形の捜査状況となった。
 そう、まるで、推理に従ってというよりも、
「推理によって生まれた結論に、導かれるような捜査状況」
 というものに、さすがの捜査本部の本部長も、納得しないわけにはいかなかった。
 それでも、桜井刑事は、
「偶然ですよ」
 と謙遜していたが、警察というのは、現金なもので、
「一度、信頼ができると、今度はその推理に頼るようになってくる」
 というものだ。
 最初の頃こそ、
「俺たちは、一捜査員の推理になんか惑わされないぞ」
 という、何か挑戦的なところがあった。
 それを考えると、
「桜井刑事の推理を本部が信じるようになったのには、どれくらいの期間と、事件の数があっただろうな」
 というほどであったが、他の捜査員は、
「桜井刑事の意見を、いい加減、本部として取り上げればいいのに」
 と思っていたのに、ある日突然、手のひらを返したように、
「桜井刑事の推理に従って事件を捜査する」
 ということになった。
 それこそ、刑事ドラマなどによくある、
「コロンボ」
 であったり、
「ホームズ」
 というような異名をとる刑事になっていたのである。
 ただ、事件というのは、いつもいつも、探偵小説や刑事ドラマのような込み入った事件ということはない。だからこそ、地道な捜査は必要であり、込み入ってくると、
「桜井刑事の意見を聞く」
 ということになるのであった。
 だから、桜井刑事も、なるべく表に出ようとはしない。
 そもそも、彼の推理というのは、
「地道に足で稼いできた内容に、「さらに信憑性を感じることで成り立っている」
 ということであった。
 つまりは、
「桜井刑事は、推理をする場合に、勝手な推理を展開するわけではなく、あくまでも、自分が証言を聞いてきたり、
「証言をした相手が、いかに信頼できる相手なのか」
 ということまで分かったうえでの推理になるのだ。
「信頼と、確証に裏付けられた推理」
 ということなので、その理屈は、
「桜井刑事にしかできない推理」
 というのが生まれるのだ。
 それを、捜査本部は分かっていない。
 だから、一度桜井刑事を、
「捜査から外し、捜査本部で、本部長などと一緒にいて。情報を元に推理する」
 ということにしようという話が持ち上がった。
 それを、否定したのは、桜井刑事本人であった。
「いえいえ、そんなことをすれば、私の推理には、根拠も信憑性もなくなってしまう」
 ということになったのだ。
 最初は、本部長は納得しなかった。
「桜井刑事は、ここでどっしり構えていればいいんだ」
 ということであったが、それは、本部長自身が、
「ここで事件の真相を、誰よりも先に知りたい」」
 という思いがあったからだ。
 桜井刑事は、それくらいのことは分かっていた。
 だが、さすがに、
「本部長に逆らうには、それなりに理由が必要だ」
 ということで、
「結局、策を弄するというのは、この人には通用しない」
 ということになり、
「すみません、私の推理は、自分が捜査して確証を得たことでないと、生まれてこないものなんです」
 といって、分かってもらうことができた。
 意外なことに、これに関しては、捜査部長は、簡単に納得してくれた。
「分かった。君の言う通りにしよう」
 ということだったのだ。
 それを聴いた桜井は、意外な気がしたが、その保温部長の顔を見ると、どこかホッとした表情に見えたのだ。
「この人には、俺と同じものを感じる」
 と思った。
 というのは、これは、他の刑事も知らなかったのだが、
「私も、昔は、推理に頼った捜査をしていて、ここで推理を働かせるわけではなく、自分で集めてきた情報や裏付けでないと、推理できなかったんだよ。君もきっとそうなんだろうと思うと、納得できる気がするんだ」
 ということであった。
 それを聴いた桜井刑事は、
「ありがとうございます」
 と一言だけいったが、
「こんな時、何をどういっていいのかが分からない」
 ということであった。
 それは、本部長も同じことで、実はそれまで、
「理屈に合わない」
 ということを考えているように思えたが、それは、実際とは違って、
「桜井の考えを、逆から見ているのであった」
 というのは、
「彼の考えをすべて100と考えて、そこから減算することで、自分の今までの推理をしていた感覚と、どこかで折り合いが漬けば、その時、
「桜井刑事の推理方法であったり、その根拠の出所が分かる」
 ということであれば、
「それが最終的な真相なのである」
 という考えであった。
 桜井刑事は。もちろん、今はまだ、初動捜査の段階なので、
「今は情報を集めることが大切だ」
 と思っていた。
 しかも、桜井刑事は、極端なところがあり、
「刑事の魂」
 と言われるようなところを、すべて持っているようなところがあった。
 それは、
「勉強することで納得したからなのか」
 それとも、
「経験から会得したものなのか?」
 ということは、本人も分からなかった。
 もちろん、刑事になることで、その準備に怠ることはなく、本をしっかり読みこんだりもした。
 一つ言えることは、
「推理するにしても、桜井刑事は、その準備段階をおろそかにすることはない」
 ということは絶対にいえるということであった。
 桜井刑事は、今までに感じた推理は、いつも、
「同じパターンにある」
 ということであった。
 それは、
「一つの事件というものを、あらゆる方向から見る」
 ということが大切だということを分かっているからだった。
 それは、角度という意味から、
「上から見たり、下から見たり」
 ということであり。場合によっては、
「まるで、鏡に照らし合わせているようにして見るということもあるのであった」
 実際に、
「警察の通り一遍の捜査では、決して見えない部分を見つける」
作品名:犯罪という生き物 作家名:森本晃次