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犯罪という生き物

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「これだったら、取り締まりなどしなければいい」
 ということになるのだろうが、今度は取り締まりをしないならしないで、
「警察は、税金の無駄遣いをしている」
 と言われ、
「余計なことはするくせに、肝心なことはしない」
 と言われ、それこそ、
「警察の威信は地に落ちている」
 といってもいいだろう。
 それを考えると、
「いくら庶民に愛される警察」
 というものを謳ってみたとしても、そんなものは、
「絵に描いた餅でしかない」
 ということになるだろう。
 それを考えると、
「ストーカー事件」
 にしても、
「飲酒運転の取り締まり」
 ということにしても、結局は、
「警察って、何をやってるんだ」
 ということにしか、結果的にはならない。
 ということであろう。
 しかし、警察としての、
「つらい立場」
 というのも分からなくはない。
 何といっても、
「警察は、事件を未然に防いだとしても、それを褒められることはない」
 ということになるのだ。
 というのも、
「未然に防いだのだから、何かが起こったわけでもないので、それを世間に公表できない」
 ということでの、
「つらい立場になる」
 ということである。
 今回のストーカー殺人事件というものは。その時のストーカー殺人というものと、ほとんど似ているような感じだった。
 さすがに時間帯が、以前のような、
「一番人通りが多い時間帯」
 ということではなく、
「それほど多くない時間帯であるが、一人もいないということは珍しい」
 と言われるくらいの時間帯だった。
 実際に、防犯カメラにも映像としては映っていたが、前の時のように、ハッキリ映っているわけでもなかった。
 しかし、
「女性が男性に刺されて、その場で倒れた」
 ということに変わりなない。
 しかも、言い争っているというのも、間違いではないようで、ただ、顔がハッキリとしないということもあって、一概には、
「ストーカー犯罪」
 とも言えないところであった。
 被害者が倒れているのを歩行者が発見し、警察と消防に通報したことで、救急車がやってきたが、
「その時には、すでに死亡が確認された」
 ということであった。
 警察が捜査をすると、その女性は、
「生活安全課では、被害に対しての報告はない」
 ということであった。
 ただ、彼女の会社で、
「最近、変な男につけられているような気がする」
 といっていたという証言もあった。
 その人は、
「彼女とそんなに親しい間柄ではない」
 ということであったが、他のもっと親しい人には、そのことは話していなかったという。
 というのも、彼女が親しい間柄というのは、
「集団での付き合い」
 ということで、そういう意味では、
「親しい親友のような人はいなかった」
 ということであった。
 そのことについて、会社の同僚も皆周知していることのようで、
「新藤さんという人は、個人的な親友はいなかったと思いますよ」
 といっていた。
「じゃあ、親しくされている男性に心当たりは?」
 と聞かれると、
「いや、そういう人もいないんじゃないかな? 私の知っている限りでは」
 ということであった。
 これは、部内の同僚や先輩、さらには、上司に聞いても、皆同じ意見であった。
 そして、
「もし、そういう人がいるのだとすれば、彼女は、相当まわりに秘密にできるだけの素質のようなものを持っていたことになると思いますが、私には、そんな雰囲気を感じられませんでしたね」
 と答えたのだ。
 確かにその通りのようで、これは、
「同僚、先輩、上司」
 と、皆同じ意見だったようだ。
 そういう意味で、
「裏表のない人だった」
 ということになるかも知れない。
「分かりやすい性格だ」
 ということはいわれていたようで、その内容に関しては、
「人それぞれにいわれることが違っている」
 ということのようだった。
 というのは、
「彼女を恨んでいる人がいたかどうかは分かりませんが、少なくとも、この会社に、殺したいほど恨んでいる」
 という人はいないと思います。
 ということであった。
「じゃあ、ストーカーに狙われているとか、何か、彼女から自分の身に何かが起こるかも知れないとかいう話は聞いたことはないですか?」
 と警察にいわれて、皆、苦笑していた。
「そんなこと分かっているんだったら、警察に行くように促すでしょう」
 と言いたげだったのだ。
 しかし、警察は、それに関しては信用はしていない。
 というのは、
「お前らだって、相談されたからといって、その人に警察に行くように促すことはあっても、責任をもって、警察に連れていくようなことはしないだろう」
 というわけである。
 だから、
「相談されても、結局は、いうだけいって、責任を持つようなことはしないだろう」
 と言いたいのだ。
 警察官だって人間である。感情だってあるのだから、このような話を、鼻で笑うような真似をされると、イライラするという感情となるだろう。
「人間は、切羽詰まったら、誰にでも相談をしてしまう」
 と思う。
 しかも、それが若い人であれば、
「年配の人の意見を聞いてみたい」
 と思うことだろう。
 しかし、実際に相談して、
「するんじゃなかった」
 と思う人も多いことだろう。
 却って迷ってしまって、考えが一つにまとまらないということだっていくらでもあるというものだ。
「特に、高校時代まで相談する人はおろか、友達もいなかったりすると、大学に入って、友達がたくさんできたとしても、相談の仕方自体、どうしていいのか分からない」
 ということになるのだ。
 かすみは、特に高校時代まで、友達もいないタイプだったので、その典型的な例ということになる。
 しかし、それを警察が分かるわけもないので、同僚の態度から、彼女がどういう人間だったのかということを、想像するしかなかった。
 しかし、だからと言って、勝手に思い込んでいるだけでは、そうもいかない。
 ただ、同僚の話を聞いているところでは、彼女は、
「分かりやすい性格だ」
 ということだったので、話を聞いているうちに、
「少しは分かってくる」
 というものである。
 ただ、それも最初から、
「彼女が分かりやすい性格だと思われている」
 ということを考慮に入れたうえで、少し、入り込んだ感じで解釈しないといけないとも思ったのだ。
 つまり、
「話を鵜呑みにはできない」
 ということで、あくまでも、
「同僚は同僚」
 ということだ。
 それを踏まえた上でないと、
「事件そのものを見失ってしまう」
 といえるのではないだろうか?

                 桜井刑事

 今回捜査している桜井刑事は、そんな中で、唯一、他の人とは別に、
「この事件は、ストーカーによる犯罪だといえるのだろうか?」
 と考えていた。
 いや、
「ストーカーによる犯行なのかも知れないが、そんな単純なものではないのではないか?」
 ということを考えていたのだ。
 それは、
「事件自体が単純なものではない」
 ということなのか、それとも、
「事件を取り巻く人間関係であったり、動機などが、単純ではない」
 と考えるのか、どちらにしても、
作品名:犯罪という生き物 作家名:森本晃次