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三つのわだかまり

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 ということになれば、それが果たして正しいのかどうか、分かったものではない。
 そもそも、
「これらの考えの中に、正しいといえるものがあるというのか?」
 ということである。
 正しいとすれば、そこに根拠があるというのか、
 もし、
「正しいというのがあるとすれば、その時々における環境に沿った考えで、一番しっくりくるものが正解だ」
 ということくらいしかないだろう。
 だから、
「軍事クーデター」
 のようなものが発生すれば、それまでは、
「正しい」
 と言われてきたものが、
「実はそうではない」
 ということにならないとも限らない。
 いや、それが、普通に当たり前のこととして起こっているではないか。
 日本であっても、天下人が変わるたびに、そういう事情になっている。
 例えば、
「豊臣を、徳川が滅ぼせば、豊臣の時代には、豊臣びいきのものがもてはやされたが、徳川の時代になると、豊臣が映画を誇った印というものは、ことごとく、このように存在しなかったかのようになる」
 ということであったり、
「明治維新が起こると、徳川時代のものや、徳川の迷信などというものは、すべて否定されることになる」
 ということであった。
 そもそも、明治維新においても、本来であれば、
「大政奉還」
 ということで、政権を無血で返したのであるからそれでいいはずなのに、
「あくまでも倒幕」
 ということにこだわったのは、本当に、
「関ヶ原の時の積年の恨みによるもの」
 といっていいのだろうか?
 徳川もそうだったが、
「何も、豊臣を最後まで滅ぼす必要などないのではないか?」
 という意見もある中で、
「未来に禍根を残さずに、永遠の徳川時代を築く」
 ということでの、ある意味、
「戒め」
 ということでの、
「大阪の陣」
 だったのではないか?
 そうなれば、ドイツに対する締め付けも当たり前のことかも知れないし、それによって、ドイツが生き残るためということで、起こってきた、
「ファシズム」
 というのも、その出現は、
「当たり前のことである」
 といっても過言ではないだろう。
 それを思えば、
「ファシズム」
 という、
「独裁政権」
 というものを悪だとは言えないのではないだろうか?

                 佐久間巡査部長

 そもそも、イソップ寓話というものが描かれた時代というのは、今とはかなり違う時代だったであろう。
 そういう意味で、日本の
「おとぎ話」
 の中にある、
「寓話」
 と言われる、戒めのような話であっても、編纂されたのは、中世の頃ということであり、そもそも、それらの物語の多くは、その時に作られたというものではなく、どちらかというと、
「もっと昔からあった、まるで神話と言われるような時代からあった話を、紡いだものというものを、室町時代に編纂したのが、おとぎ草子と呼ばれるものだ」
 ということである。
 ただ、その中には、
「信じられない」
 と考えられるものもある。
「浦島太郎」
 の話などがそれで、
「この話は、相対性理論」
 と呼ばれるものと酷似しているということで、
「光速で進むものに乗っていると、実際の時間が、ゆっくり進むことになる」
 という理論と、
「浦島太郎が竜宮城から帰ってきた時、地上は、700年が経過していた」
 ということで、
「竜宮城の数日間が自分の知っている世界では、700年だった」
 ということになるのだ。
 そうなると、理論的に不可能を思われることも可能ならしめるのではないかと考えられるわけだが、
「侵略しようとしている宇宙人が地球に到着した時には、すでに、数百年。いや、何十万年という時が経っているのかも知れない」
 つまり、
「宇宙人が、まだまだ成長過程にあった地球に、高等生物がいない」
 ということでやってきたとすれば、
「まさか、今は高等生物がすんでいたなんて」
 ということで、
「計算外の侵略行為が起こるのかも知れない」
 というのは、あくまでも、勝手な想像でしかないだろう。
 そもそも、地球にやってこれるだけの科学力を持っている星なので、
「相対性理論というものくらいは、分かっているはずだ」
 といえるだろう。
 それを見越しての侵略でなければ、
「相対性理論を理解していない」
 という、
「いわゆる探検のようなものだ」
 ということになれば、
「理屈に合う」
 というものではないだろうか?
 あくまでも、勝手な発想なので、何とも言えないが、浦島太郎は、
「謎が多い」
 ということだけは確かなのだ。
「宇宙人から聞いた理屈を、物語にしたのかも知れない」
 と思うと、
「昔の人は、今よりも、頭のできが、柔軟にできていたのかも知れない」
 ということになり、
「発想の柔軟さが、おとぎ話を作った」
 といえるのではないだろうか?
「世界の七不思議」
 と呼ばれるものも、存外、そういうことなのかも知れない。
 西島少年が万引きを許されてから、約10年が経った、すでに大学を卒業していて、新入社員として、立派に働いていた。
 といっても、
「頑張って働いている」
 というだけで、まだ新入社員ということもあり、会社に貢献しているおかどうかということは、疑問であった。
 万引きのことは、すでに本人の頭の中から消えていた。
「あの時、佐久間さんが許してくれたからだよな」
 と思っていたのは、最初の一年くらいのことだっただろうか?
 それも、
「何かの機会があって、やっと思い出す」
 という程度である。
 佐久間巡査部長は、
「少年の厚生」
 ということには、結構頑張っているようだ。
 てっきり、
「警察署に連行されるんだろうな?」
 と思っていたが、そんなことはなかった。別に警察署の方に連絡を取っている素振りもないし、しかも、取り調べというわけでもなく、世間話がほとんどだった。
 もっとも、緊張をほぐしたところで。事件について聴こうというのは、ある意味、
「うまい作戦」
 ということで、佐久間巡査部長の作戦に、
「まんまと引っかかった」
 といってもいいかも知れない。
 彼は、学校では、皆から真面目に見られているという。
 それは、佐久間巡査部長の目から見ても、
「根は真面目な子なんだろうな」
 と思えたのだ。
「どうして、万引きなんかしたんだ?」
 というのが、本当は一番知りたいところだったのだろうが、焦って、そのことに触れるようなことはしなかった。
「部活は何をしているんだい?」
 と聞くと、
「野球」
 とひとこと答えた。
 しかし、この話をした時、少し寂しそうな表情をしたことを、見逃さなかった。
 だから、敢えて聞くようなことはしなかったが、やっぱり気にはなっていたのだ。
「友達はどうだい?」
 と聞くと、それに関しては、普通に答えてくれた。
 多い方でも少ない方でもないということなので、
「気兼ねなく話ができる友達が、数人はいるんだろうな」
 と感じたのだった。
 なぜ、佐久間が友達に話題を振ったのかというと、今回の万引きに、
「悪い友達が絡んでいるのかどうか」
 ということを知りたかったのだ。
作品名:三つのわだかまり 作家名:森本晃次