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時代背景の殺人事件

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 もちろん、思春期というのは、個人差があり、小学校5年生くらいの頃から始まる子供もいると、中学2年生でも、
「まだ、身体の初域的に子供だ」
 という人もいるだろう。
 ただ、
「肉体的な成長と、精神的な成長とに開きがある」
 という人は少ないような気がする。
「身体が早熟であれば、精神面も早く大人になっていて、いわゆる、ませた子供といってもいいのではないだろうか?」
 それを考えると、
「小学生の頃に感じた。親への反発」
 と比較しての、
「早く大人になりたい」
 という感覚は、そもそもの感覚が違うものだろう。
「反発というのは、父親に対してのものであり、早くなりたいと思うのは、大人というものに対してのことである」
 ということになるのだろう。
 それを考えると、
「自分の子供には、自分と同じ思いをさせたくない」
 と思うということは、
「大人になるという楽しみ」
 というものよりも、
「父親のようになりたくない」
 という思いの方が強く、結局は全体として、
「大人になんかなりたくない」
 ということを前面に出すということになるのであろう。

                 両親への疑念

 そんな父親だったが、家での威厳は、かなり落ちてきたのか、
「それまでの威厳が今までの自分を委縮させたのか」
 あるいは、
「自分が大人に近づいた」
 ということなのかのどちらかであろう。
 しかし、そんな父親でも、どうやらリストラにかかることもなく、会社でうまくやっているのか、とりあえず、首になることもなく、正社員で働いていた。
 母親もそんな父親に対して何かをいうこともなかった。
 元々母親は、父親に一切口答えをするようなことはなかった。
「威厳に屈していた」
 ということなのか、それとも、
「静かにして、自分に火の粉が降りかかってこないようにするだけなのか?」
 ということを考えていたが、結局、
「今でも文句を言わない」
 ということを思えば、
「後者なのではないか?」
 と思えた。
 いろいろ考えてみると、母親のこのやり方というのが、
「一番うまくやっている」
 といって方がいいのかも知れない。
 確かに、いろいろ文句を言ってみても、委縮した相手に追い打ちをかけたとしても、家族で、この時代を乗り切らなければいけないところを、これまで、曲がりなりにも、
「大黒柱」
 ということで、矢面に立っていてくれていたことに変わりはないので、それを、余計に苦しめるようなことをするのは、
「本末転倒ではないか?」
 ということになるであろう。
 それを考えると、
「お母さんのように、今までことは、水に流す方がいいかも知れない」
 と思った。
 下手に責め立てたりすれば、今度は開き直られて、
「家に金を入れない」
 とか、
「酒に金を使う」
 ということになったり、まさかとは思うが、
「女に金を貢ぐ」
 などということもありえないとは言えないだろう。
「家に自分の居場所がない」
 ということで、
「他に女を作って、家に帰ってこない」
 などという話を聞いたこともあった。
 それを考えると、
「威厳がなくなった父親を見ていると、気の毒にも見える」
 ということを一度母親が言っていたのを思うと、
「同情を買うタイプなのかも知れない」
 と思うと、
「そんな男が好きな女もいる」
 という、
「母性本能をくすぐるタイプ」
 というのが、自分の父親だと思うと、今度は気色悪くなるという感覚も出てくるのであった。
「これだったら、まだ、関白のような、お山の大将の方がよかったかな?」
 と思ったが、思い出してみると、すぐに、その思いを否定するという感覚に陥ったのであった。
「父親が家で威張っている」
 という光景は、
「もう二度と見たくない」
 と感じるのであった。
 父親にとって、誰が一番くらいなのかというと、それは分からなかった。
 家族それぞれ、父親を憎んでいたようだ。
 確かに母親は、父親に何も言わなかったが、それは、あくまでも、
「敬意を表しているからなのか?」
 と思っていたからで、前述のように、
「どうしようもない夫を、自分が支えないと」
 と思っていたのも、その理由であっただろうが、それも、ずっとその気持ちを持ち続けるということは結構きついに違いない。
 確かに、今の時代は、どこの家庭も、父親の威厳というものがなくなり、
「どこも似たり寄ったりの気持ちになっているだろう」
 と思っていたが、まわりの家はそんなことはなかった。
 特に、親友は、
「親とは仲が良くて、いつも、ため口で話している」
 というではないか。
 それを聞いてびっくりしたが、
「ああ、うちは特別かも知れないな。父親とはまるで友達のような関係で、前から、よく一緒にゲームなどをしていたものだよ」
 といっていた。
 友達の父親は、忙しい時期は決まっていて、本当に忙しい時は、
「会社に泊まり込み」
 などということも多いというが、普段は普通に定時に帰ってくるという。
 食事も普通に一緒に食べるけど、まったく、
「威厳を発する」
 などという態度はとらないという。
「うちなんか、テレビを見ようものなら、怒られるくらいだ」
 というと、
「そんな昔のようなことはない」
 というのだ。
「それって、まだテレビが普及していない頃に、テレビのチャンネル権を父親が握っているというような、そんな時代のことじゃないのかな?」
 ということであった。
「いやいや、うちは、最近までそうだった」
 というと、友達は目を丸くするのだった。
 他の友達に聞いてみても、
「そんな封建的な家族、今時ないぞ」
 といっていた。
「今そんなことしたら、離婚問題になったりするんじゃないか? お前もそうだけど、母親もよく我慢しているよな」
 ということであった。
 そして、
「そういえば、お前のところお兄ちゃんがいるじゃないか。そのお兄ちゃんもそうなのか?」
 ということであり、
「ああ、お兄ちゃんはどうなのか聞いたことがなかったな。でも、今は大学生になり、大学の近くで一人暮らしを始めたけど、あれから、兄貴は、かなり生き生きしているんだよな。大学が楽しいからだと思っていたんだけどな」
 というと、
「それだけじゃないかも知れないな。さっきのお前の話を鵜呑みにすれば、家を出ることができて、それだけでうれしいと思っているんじゃないか?」
 ということであった。
「なるほど、そうかも知れないな」
 と感じた。
 その兄も、来年卒業なので、最近では、時々家に帰ってきて、就活の準備を進めているのであった。
 一応、大学近くの企業を目指しているようだが、できるだけ幅を広げてみているということで、最近は、
「時々、こっちに帰ってきて、就活の資料を集めている」
 ということであった。
 今の家庭は、ほぼ離散状態なので、却って、帰ってきやすいということであろう。
 この家族は、名前を、
「谷口家」
 という。
 谷口家の当主は、谷口功といい、母親を紀子という。
 そして、大学生の兄を勇作といい、年の離れた弟を、康人というのだった。
作品名:時代背景の殺人事件 作家名:森本晃次