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時代背景の殺人事件

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「朝鮮総督府」
 というものを置いて、日本国の一部ということになっていたのだ。
 当時の大日本帝国とすれば、かつての、明治の大戦であった、
「日清、日露」
 という二つの戦争において、基本的に、
「朝鮮を実効支配していた」
 といってもいいだろう。
 そういう意味では、
「朝鮮併合」
 というのは、侵略とはいえないのかも知れない。
 しかも、当時のイギリス、アメリカ、などの欧米は、
「日本の朝鮮半島の支配」
 というものを認めていたのだ。
 もっとも、それは、半分は、
「交換条件のようなもの」
 ということだった。
 当時の日本は、第一次大戦で、軍需景気に沸き、そのおかげで、
「世界の大国」
 に名乗り出たのだ。
 アジアでは、最大の新興国であり、軍事大国としても、大きな影響力を持っていたことだろう。
 それだけに、日本と欧米は、ある意味対等なところもあり、
「交換条件」
 という話も普通にあったりしたのであった。
 というのが、
「朝鮮の支配を認める」
 ということでの、
「米英での、アジアでの権益の問題」
 ということであった。
 それだけ、当時は日本が世界的に認めたことが、大きな影響力を持つということであっただろう。
 というのは、
「イギリスに対しては、インドの実効支配を認める」
 ということと、
「アメリカに対しては、フィリピンの実効支配を認める」
 ということを交換条件に、日本にも、
「韓国併合を認める」
 ということになったのだ。
「米英が認めたのであるから、他の国もそう簡単に、非難することはできない」
 ということになり、それだけ、当時の日本が、
「世界の中心にいた」
 ということになるのであろう。
 その時代は、日本は、微妙な時代でもあった。
「第一次大戦では、好景気に沸いた」
 ということであるが、その少しあとで、今度は、
「帝都に、大地震が起こる」
 という自然災害に見舞われたことで、さらに、動乱の時代を予測させるものだったのだ。
 さらに、世界は、
「ナチスの台頭」
「世界恐慌の時代」
 さらには、
「ソ連による、社会主義政権の台頭」
 ということで、日本は、国内に食糧問題を抱えていることもあって、軍部の力を必要としないといけない事態にもなった。
 これが、日本が、戦争に突っ走るという状況になった、世界情勢であったのだ。
 そんな時代において、やはり大きかったのは、
「世界恐慌」
 と、日本国内の食糧問題だったのではないだろうか?
 その二つの問題が、当時の日本の動乱を引き起こした。
 ソ連の脅威に対して、
「満蒙国境問題」
 というものがあり、さらに、
「世界恐慌によって、日本経済は、まるで天国から地獄といってもよかっただろう」
 といえる。
 しかも、世界の大国は、
「お金を持っている国だけで、経済圏を作る」
 ということで、
「ブロック経済」
 というものが起こったのだ。
 これには、日本は入らなかった。
 日本にとって致命的だったことは、
「資源が乏しい」
 ということであった。
 経済状況が悲惨な状態で、資源が取れないということは、貿易もままならないということであった。
 しかも、当時の日本は、満州支配をもくろんでいて、中国による、
「反日運動」
 というのも激化し、中国に対して、租借地であったり、貿易のかかわりを持っている欧米各国を、日本の動きは、
「注目に値する」
 というものであった。
 それが、世界情勢というものであり、
「日本は、反日の問題と、満蒙国境問題」
 そして、
「国内における、食糧問題」
 とを一挙に解決させるために、
「満州事変」
 というものを画策したのだ。
 これは、
「関東軍による暴走」
 ということであったが、日本政府も追認したということで、のちに、
「軍部の暴走」
 といわれるようになったゆえんであった。
 そもそも、
「日本という国の体制」
 というのは、他の国とは若干違っている。
「政府の下に軍部がある」
 というわけではなく、
「軍部は、天皇直轄だった」
 ということである。
 天皇は、軍部を、
「統帥する」
 という、
「天皇による統帥権」
 というものが、
「大日本帝国で保障されている」
 ということになっている。
 つまりは、
「政府であっても、軍の作戦には口を出せない」
 ということになる。
 それが、
「軍部を独走させる理由」
 となったのだ。
 そんな時代に起こったのが、
「226事件」
 というものであった。
 これは、
「軍部が、満州事変において、なかなか進まない経済復興や、世界からの孤立というものに憂慮し、政府が、私腹を肥やしている」
 ということで、その元凶となる人たちを暗殺するという事件であった。
 しかし、それは、
「建前として言われていること」
 ということであり、実際には、歴史が証明していることとして、
「陸軍内部の派閥争いだ」
 ということであった。
 当時の陸軍には、
「皇道派」
 という勢力と、
「統制派」
 という勢力があり、
「統制派」
 というのは、エリート集団で形成されていて、
「皇道派」
 というのは、農村出身者の貧しくて、教育も受けられなかった人たちだったというのが一般的な見方であった。
 つまり、
「統制派は、キャリア組」
 であり、
「皇道派というのは、ノンキャリア組だ」
 といっても過言ではないだろう。
 実際に、満州事変から、陸海軍でいろいろな事件があった。
 海軍からは、
「犬養首相を暗殺した」
 といわれる。
「「515事件」
 であったり、陸軍としては、
「永田鉄山軍務局長の暗殺」
 といった、事件もあった。
 そこで起こったのが、
「226事件」
 であった。
 これは、本来なら、
「天皇の命令なくして動かせないはずの軍隊」
 というものを使っての、
「軍事クーデターだ」
 といえるだろう。
 つまり、軍事クーデターというものをいかに引き起こしたのか?
 ということであり、それを、天皇は見抜いていたのだ。
 そもそも、暗殺された人物は、
「敵対する統制派に与しているかのような政府要人」
 ということであり、そのほとんどが、
「天皇に対して、進言を行う人たちだった」
 というわけである。
 天皇からすれば、自分の軍隊を勝手に動かされて、自分を補佐してくれる人たちを、派閥争いで殺されたのだから、これは、我慢ができないといってもいいだろう。
 だから、天皇は、二の足を踏む陸軍に対して。
「お前たちがしないのなら、自分が自ら軍を率いて、鎮圧をする」
 とまで言ったのだ。
 さすがに、陸軍首脳は青ざめたことだろう。天皇にそんなことをされては、軍部首脳として、恥ずかしいというどころか、
「切腹ものだ」
 といってもいいだろう。
 だから、軍隊は、彼らを許さず、投降してきた青年将校を、裁判で、弁護人なしの、非公開で、
「全員死刑」
 ということにしたのだった。
 次第に軍部の暴走というものが激しくなると、世の中は、
「国防と、アジア進出」
 ということで、マスゴミも騒ぎ出し、軍部も国民を煽るようになり、さらには、戦時体制というものが生まれてくる。
作品名:時代背景の殺人事件 作家名:森本晃次