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時代背景の殺人事件

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「警察に疑われたままになるかも知れない」
 と考えたとすれば、
「とにかく、濡れ衣は晴らさないといけない」
 と考えるに違いない。
 しかし、彼は、
「警察が濡れ衣は晴らしてくれるに違いない」
 と思った。
 確かに、何も言わないと、口裏を合わせていると思うかも知れないが、
「相手は風営法に守られた店だ」
 ということを考えると、当たり前の返答しかしないだろう。
 そうなると、下手に自分から、その店にいっていたということを話すよりも、店側に対して、
「本人から聞いた話を聞かされるよりも、警察の捜査でたどり着いたと思わせる方が、話っとしては、公平な目で見てくれる」
 と思ったのだろう。
 確かに、その通りだった。
 この店は、会員制で、会員カードがそのままポイントになっていて、ネット予約では、ペンネームを使っていたとしても、防犯カメラで映っているところが分かれば、それでいいのであった。
 ただ一つ、兄の勇作が気になったこととしては、
「防犯ビデオの保存期間」
 であった。
 それまでに警察がたどり着けなければ、
「せっかくの防犯ビデオが、消失してしまうかも知れない」
 といえるかも知れない。
 ただ、
「それならそれでいい」
 と思っていたようだ、
「もし、防犯ビデオが消されていれば、自分のアリバイが証明されないことになる。それならそれで、しばらく、けいさつぃから疑われるというのもしょうがない」
 と思っていたのだ。
 勇作という男は、
「もし、自分が犯人だということで、警察に疑われたままでもいいというのだろうか?」
 ということであった。
 普通なら、そんなことを望む人は誰もいないだろう。しかし、しばらく疑われることで、何かの時間稼ぎができるとすれば、
「勇作は、共犯の片棒を担いでいるのかも知れない」
 と思えるのであった。

                 裏の犯行

 この事件は、一見単純に見えるが、どこかぎこちない犯罪のように見える。
 何といっても、兄の勇作が、
「風俗に行っていた」
 ということを警察に明かそうとはしなかったことである。
 確かに、頭のいい人だということだが、普通に考えれば、
「やはり、自分がわざと不利になるというような証言はおかしい」
 と思うだろう。
 そこに、
「バレてもバレなくても、どちらでもいい」
 という考えが含まれているということが計算されていたなどということは、誰にも分からないだろう。
 そういえば、昔の探偵小説での話の中に、一つ面白い話が乗っていた。
 というのが、
「ある村で、連続殺人事件が起こったが、その村の敵対、あるいは、相対する勢力の片方がいつも殺されるという事件であった」
 という前提のもとに、
「被害者は、事件の中で、いつも、誰が殺されるか分からない」
 という状況において、しっかりと、ターゲットを定めているようだった。
 しかし、実際に、殺された人間においては、
「必ず、相対、敵対する相手の片方だけを狙い撃ちで殺している」
 ということであったが、そこには、誰にも分からない仕掛を用いて、確実に相手を殺すというトリックを使って、犯行を行っていたのだが、その展開の途中で、
「殺人計画メモ」
 というものが見つかったという。
 そのメモは、手帳の切れ端であるが、
「そこには、村の勢力図が書かれていて、殺された人には、×印が描かれていて、確実に殺されているということが分かる」
 ということになっていた。
 その殺人計画メモを描いた人間が、事件とは関係のないところで、
「自分も、似たような計画を立てていた」
 ということで恐ろしくなって、村から逃げようとしたが、犯人の罠にかかって、
「結局、すぐに、死体となって発見されることになった」
 ということであった。
 これが、この時の殺人事件の側面をえぐるというもので、今回の殺人には、
「この時の、殺人計画メモ」
 というものが、
「事件の核心をついている」
 ということになるということを、誰が気づいたであろう。
 この事件において、
「犯人でなければ分からない」
 ということが、含まれているということを、まだこの時は誰も分かっていなかったのだ。
 ただ、そのヒントとして、今回の、
「ソープにいっていなかった」
 ということを刑事に捜査させるということが、犯人側の核心であるというのも当然のことであり、そのかわり、
「警察側にとっても、重要なことだ」
 ということであるのは、ある意味。
「皮肉なこと」
 であり、さらに、
「もろ刃の剣のようなものだ」
 ということになるのだということであった。
「事件というものが、どのように展開していくか?」
 ということは、
「犯人側にとっても、捜査陣にとっても、お互いに似たところを、しかも、核心をついているかのような時は、結局、すれ違うことになり、まるで、限りなくゼロに近い無限の存在というものを思い起こさせる」
 ということになるのであろう。
 ただ、どうして、八木刑事がその時、小説を思い出したのか分からない。それこそ、
「刑事の勘」
 というものであろうか。
 そういえば、昭和の刑事ドラマなどでは、よく、
「刑事の勘」
 などという言葉が出ていたのを思い出した。
 確かに、
「勘に頼ってはいけない」
 とよく言われてはいるが、それも、当時はあくまでも、
「足に寄って集めてきた証拠は証言によって得られた材料を元に組み立てた推理であれば、信憑性はあるというものである」
 それを考えると、事件を解決するのに、
「足で稼ぐ」
 ということと、
「刑事の勘」
 というものは、どちらも必要で、そして、
「切っても切り離せないものだ」
 ということになるのかも知れない。
 それを考えると、今回の事件において、八木刑事の閃きが事件の真相をついているのかも知れないともいえるだろう。
 実際に、証言から考えると、奥さんにしても、息子にしても、
「殺人を犯すまでの動機としては薄いもののように思える」
 ということであった。
 奥さんとしても、
「不倫のことでもめて、殺そうとするのであれば、計画的な殺人はしないだろう」
 これが旦那だけの不倫、あるいは、自分だけの不倫という形であれば、それぞれに立場上、
「どちらかが恨まれる」
 ということになるだろうが、これが、夫婦揃っての不倫ということであれば、立場的には同じであり、それぞれに、
「相手に対して何もいう権利はない」
 ということになるだろう。
 また、息子にしても、そうであった。
 最初、
「ソープに言っていて証言できなかったことが、何かあるのか?」
 とも思い、捜査をしてみると、
 どうやら、ソープ嬢をしている人が、かつての幼馴染で、自分が好きだった相手だったということのようだ。
 実は彼女の同じように、彼のことを好きだったようで、
「お互いに、結婚したい」
 と思うようになったようだ。
 ただ、この思いは、息子の方が大きいと思っている。
 男というものから考えても、
「相手を助けたい」
 と思うと、結婚にまで一気に気持ちが昂るのも当たり前だ、
 彼女の方も、
作品名:時代背景の殺人事件 作家名:森本晃次