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二重人格国家

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 ただ、勧善懲悪という感覚はあるので、
「まだ警察の方がいいか?」
 という、減算法的な考え方になっているだけだった。
 二人がコンビを組むことが多く、上司の下瀬警部補が、二人を最初に組ませたのだ。まわりからは、
「少しかみ合っていないのではないか?」
 という意見が出ているようだが、下瀬警部補は、
「いやいや、そうでもない」
 と思っていた。
 実際に、最初よりもうまくかみ合っているようになっていて、
「まるで、刑事ドラマの凸凹コンビのようではないか?」
 といわれるようになったというものである。
 事件は、センセーショナルではあったが、一見、それほど難しくないように思えた。
 体育館で死んでいるのは、一人の男で、胸にナイフが突き刺さっている状態で、これだけの出血ということは、
「かなりえぐられている」
 ということなのか、
「もし、きれいにえぐっているということであれば、ここまで血が流れるということじゃないだろうから、犯人は素人なのかも知れない」
 とも思えた。
 そもそも、通り魔や連続殺人犯でもなければ、
「皆素人といってもいい」
 ということになるだろう。
 実際に、
「素人の犯行」
 ということであれば、
「返り血も浴びているだろう」
 ということで、
「その服はどうしたんだろう?」
 と、思い、刑事二人は、その近辺を探しているようだった。
「刺殺ということは、最初からナイフを持ってきたということなので、衝動的な犯罪ではないだろうな」
 と山本刑事はいった。
 これが、どこかの事務所の金庫を破っている最中に、警備員を刺し殺したというのであれば、
「強盗を見つかっての、衝動的な犯行だ」
 といえるかも知れないが、そうではないのだ。
 体育館に金目のものがあるともいえないし、死んでいる男は、私腹を着ているので、警備員ということもない。
 まず、刑事は三人の発見者に、
「この人に見覚えは?」
 と聞いたが、三人とも、半分顔を背けながら、
「いいえ」
 と答えた。
 いきなり刺殺死体を見せつけられて、そのショックの大きさは、ひどいもので、どうすればいいのか自分でも分からないということであった。
 ただ、この三人曰く、
「誰だか分からない」
 ということであった。
 ここまでは、皆共通に聴ける話だったが、
「証言を引き出す」
 ということであれば、
「まわりの手前話ができない」
 ということになったとすれば困るので、門倉刑事は、いつものように、それぞれに、個別に話を聞くことにした。
 まず、山本刑事と、門倉刑事で一人ずつ聞いて、もう一人には待っていてもらうことになるのだが、その間、待っている人はかなりの時間待つことになるかと思ったが、そうでもなかった。
 結局、個別に話を聞こうとしても、どちらの証言からは、真新しいことは聴けなかった。
 彼らが合宿をしていて、その体制として、朝当番で用具の用意をするということ、その時間としての、タイムシートを説明するくらいで、あとは、
「昨日の夕方には何もなかった」
 という当たり前のことを話しただけだった。
 もし、ここで何かがあったのであれば、その時に警察に通報しているわけであるから、それも当たり前のことであった。
 それらの説明は、形式的なことでしかない。
 ということであり、
「二人は何も知らない」
 ということを証明もしているようなものだった。
 最後の一人に聞いても同じことで、何も知らないということに変わりはない。
 そのうちに、騒ぎを聞きつけた、朝練の人たちもやってきて、一様に、びっくりしていた。
 刑事は、
「この中で代表者は誰ですか?」
 ということで、監督が、
「私が監督ですが」
 ということで、話を聞かれることになった。
 監督は確かに大人であるが、大学生も大人といえば大人である。
 監督という立場上、引率者であり、リーダーなので、警察に代表者といわれると確かにそうだが、実際に、こんな経験はないということで、少しビビっているといってもいいだろう。
 ただ、監督に聞いても、何も答えは出てこない。そのわりに、刑事の勘として、門倉刑事は、この部活の面々の雰囲気に、何かしらの違和感があるのを感じていたのだ、
 そこで思ったのは、
「誰も分かっていない」
 という思いであった。
 というよりも、
「それぞれに、心ここにあらずで、バラバラのことを考えているような気がするのだが、実際には、共通性のあることのような気がする」
 と感じた。
 この雰囲気は、今に始まったことではなく、今までの捜査からも、
「よくあることだ」
 ということで感じたことなのは分かっていた。
 だから、
「共通点」
 というキーワードが出てきたのであった。
「その共通点というのが、何かの犯罪ということであり、皆で何かを隠蔽しようとしているのではないか?」
 と感じたことであった。
 ただ、それが、目の前の殺人事件にかかわることなのかどうか分からない。少なくとも、殺害された人を誰も知らないというのは本当のことのようだ。これだけの人がいれば、もしウソをついている人がいるとすれば、一人や二人は、ボロを出すというものだろうからである。
 それを思えば、
「何かを隠している」
 と感じさせるものであっただろう。
 ただそれは、
「直接、事件と関係があることなのかどうか、そのあたりが分からない」
 ということである。
 確かに、事件というものが、まだ幕を開けたばかりなので、その全貌が分かっていないので、警察とすれば、
「今は、情報を集める時期」
 ということで、少々の関係のないと思われることであっても、情報としては、
「漏らしてはいけないこと」
 ということで、考える必要があるだろう。
 それを思うと、
「聞き耳を立てるというのは、大切なことだ」
 といえるだろう。
 ただ、事件とすれば、ある程度、単純なものなのかも知れないとも思えたが、考えていくうちに、難しいのではないかとも考えられる。
「人殺しがあって、死体が見つかった。凶器は残っていて。犯人はいない」
 という状況で、一つ分からないところは、
「なぜ、殺害現場がここなのだろう?」
 ということであった。
 だから、
「被害者が誰なのか分かる」
 ということであれば、ここで発見されたことに不可思議さは感じない。
 だが、誰も知らないということは、逆に、
「犯人の方が、この場所に関係がある」
 といえるのではないだろうか?
 確かに、犯人がここの関係者だということになると、犯人としては、
「何と愚かなことをしたのか?」
 ということになる。
 まるで、
「犯人がここの関係者だといっているようなものではないか」
 ただ、
「犯人に本当は殺害の意志はなく、ナイフはただの脅迫のつもりだけだったとすれば、この馬首であっても不思議はない」
 といえるのではないか?
 いや、それよりも、
「このナイフが本当に犯人の用意したものなのかということも怪しいもので、逆に被害者が持ってきたのかも知れない」
 ともいえるだろう。
 鑑識が判定する前に、刑事にも分かっていたこととして、
「争った跡がない」
 ということだった。
 となると、
作品名:二重人格国家 作家名:森本晃次