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二重人格国家

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 夕飯の時間を七時ということになっていたので、それぞれに、風呂に入ることになったのだ。
 さすがに、3つの部活が同時に合宿できるだけあり、まるで、温泉センター並みの大きな風呂が3つあったのだ。
 部員が全員入ろうとすると、2回に分けなければいけないのだが、今回は、他にどこの使用していないということで、一度の入浴で済むことになる、
 だから、夕飯を7時ということにしておけば、逆算して、いつもであれば、5時までには上がらないといけないが、今回は、6時まで練習ができるということで、実際には5時半までの練習で、その後の片付けに、30分が必要だということであった。
 それだけ部活は、ちょうどいい感じになり、夕飯も時間で、部員はある程度疲れ果て、
「部屋でゆっくりする」
 という人が多かった。
 ゲームなどをスマホでやる人が多いので、
「皆ロビーに集まって何かをする」
 ということもほとんどなく、合宿所での賄いのおばさんなどは、
「時代も変わったわよね」
 といっていたのだ。
「時代が変わった」
 といって、その時代がいつのことだったのかということは、誰にも分かるというものではなかった。
 皆のそれぞれの表情から、皆それぞれに、その時期が微妙に違っているという感覚だということは分かっているかのようだった。
 ただ、おばさんたちの学生時代といっても、まだまだ昭和にも届かない。
 それを考えると、
「スマホなどはなかったけど、ケイタイ用のゲーム機のようなものはあったので、それをやっていたかも知れないわね」
 ということは考えていたのだ。
 ただ、その頃では、まだ少しの人数であっても、食堂に集まって、皆で楽しめるゲーム。
 つまりは、
「トランプ」
 であったり、
「将棋」
 のようなことを楽しんでいた。
 という状態だったような気がする。
 その頃、マネージャーだった経験のある人も中にはいて、
「そうね、あの頃は、食堂でゲームをしている子供たちのために、食堂のおばさんたちが、夜食におにぎりなんか作ってくれたのを覚えているわ」
 というのだった。
 その頃だろうから、こんなに立派な合宿場がある大学なとなかっただろう。
「今の時代でも、ここまでの合宿所は、そうはないだろう」
 と思っているだけに、
「今の学生は、そのありがたみを分かっているのかな?」
 と感じていた。
 合宿場においての、
「夜の時間」
 というのは、
「大学生の体育会系の生徒にとって、一種の安らぎであったり、楽しみだったといえるんじゃないかしら?」
 と、その頃の学生を知っているおばさんは、自分が、マネージャーだった時代を思い出して、懐かしんでいるのであった。
「時代が進むというのは、いい面もあれば、決していいとは言い切れない面もある」
 といえるのではないか?
 それを考えると、
「恵まれているということはいえるのだが、だからと言って、学生が悪いわけではない。何が悪いのかということを誰が判断できるというのか?」
 と考えるのであった。
 その日も学生は、
「明日も早い」
 ということで、11時までには、ほとんど全員が寝静まっていたのであった。
 次の日は、
「朝練」
 というものがあって、基本的には、
「道具を使わない練習」
 ということだった。
 しかし、下級生は、その間に、当番で、
「練習場の整備をしたり、ボールや、用具などを、用具室から出してくる」
 という仕事があるのだった。
 それはもちろん、朝食前の仕事で、朝練が約一時間ということなので、6時過ぎには、練習と、朝の準備とを手分けして行うことになっていた。
 いつも、道具の用意をする当番は、3人で行うようになっている。今日もその3人がいつものように、道具置き場に入り、まだ少し眠い目をこすりながら、用意をしていた。
 部員によっては、
「朝練よりも、こっちの方が楽でいい」
 という人もいて、今日は、3人のうち2人が、そういう部員で、だからこそ、逆に、結構テキパキと作業をするので、残りの一人は、結構楽ができるので、
「これはありがたい」
 と思うようになっているのであった。
 だから、
「練習の方がいい」
 と思っている人は、基本、片付けも、掃除も嫌いなので、用意も好きなはずがない。
 それを思うと、ついつい他の2人が一生懸命にやっている間、自分は楽をしようと思うのだが、逆に時間を持て余してしまうことになったりする。
 だが、それを後の2人は咎めたりしないので、結構楽であった。
 だから、
「お前は、ゆっくりしていていいぞ」
 というくらいで、それこそ、
「俺たちは、結構無我夢中でやっているので、もし、俺たちが忘れていそうなことがあれば、その時は、注意してくれよな」
 というほどであった。
 それを聞くと、
「ああ、そうだな。俺に任せとけ」
 と、楽な立場なのに、結構悪くは考えていないのだった。
 その日も、同じパターンで、2人の作業を漠然と見ていたが、何やら、いつもと違うような気がしたのだ。
 それが、どこからくるのかということは正直分からない。
「今回の用意が、テキパキしていて、時間が経つのが早く感じるからかな?」
 ということを考えてみたが、どうもそうではないようだった。
 時間が早く進んでいると思って時計を見ると、
「もう終わりに近いのか?」
 と思っていたが、実際には、まだ半分も時間が過ぎていない。
 ということは、
「感情よりも、実際の方が時間の進みが遅いのだから、逆にいつもよりも嫌な時間の進み方だ」
 ということになるだろう。
 それを思うと、
「俺はどうすればいいのか?」
 ということを考えてしまい、それを考えると、
「いつものように、2人ばかり見ていない方がいいかも知れないな」
 と感じ、普段は見ないところに集中してみたりしたものだった。
 それを感じながら、まわりを見ると、
「やはり、最初に感じた違和感のようなものが残っている」
 と思えて仕方がなかったのだった。
 それを思い出すと、またしても、まわりが気になるようになり、次第に、2人よりも、まわりのことが気になりだしたのだ。
 そして、
「この感覚は今までに感じたことがあるものだった」
 と感じたが、それがいつだったのか、まったく分からなかったのだ。
 そんなことを考えていると、まわりを見ることを、
「最初から自分がその場の雰囲気を怖がっていた」
 ということに気が付いた。
 そこにあるのは、何やら影のようで、その影が、蠢いているように見えたのは、実際は、風があったからなのだが、その時はそうは思わず、
「まるで幽霊か何かのような気がする」
 ということからだった。
 幽霊が見えたのか、見えなかったのかということは、正直分かっていなかった。
 しかし、そこに見えている影は、まるで、
「ろうそくの灯し」
 のようで、そもそも、ろうそくなどというと、仏壇の前でしか見ることがないくらいだったので、その影がどのようなものかということすら感じることはなかった。
 見えているとしても、その感覚が、目の前にあるようであればあるほど、その揺れによる違和感が、どこから来るのか分かっているようで、分かっていないのであった。
作品名:二重人格国家 作家名:森本晃次