悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州・富山の旅
その後、木曽森林鉄道にもディーゼル機関車が導入され、3台の蒸気機関車は1960年に引退。
日本が高度経済成長時代を迎えた頃、運材はトラックへと変化し、木曽森林鉄道の廃線が決まった。
ところが、廃線となった森林鉄道の保存を望む声が高まり、「森林鉄道記念館」の建設が決まり、自然休養林として新しい国有林の活用を拓いた赤沢の園内に、運行当時の車両や資料が集められ、保存を目的にした軌道が敷設された。
この施設が大きな注目を集めたのは1985年に挙行された伊勢神宮の式年遷宮行事で、その習わしには一級の天然檜材が求められ、御用材を運ぶ森林鉄道の姿がテレビや新聞を通じて全国に配信され、準備に2年を掛け、1987年の夏に、観光用として赤沢森林鉄道の運行が開始された。
以上、ネット情報を要約した内容だ。
森林鉄道に乗車でき、この鉄道の歴史も学ぶことができて満足したあとは、「ジル」の中で昼食を取り、駐車場の入口付近の「森林資料館」にも立ち寄り、木材の運搬の歴史を振り返った。
再び林道を走り抜け、R19に戻り、やっと北上を開始した。
昨日立ち寄った道の駅の「木曽福島」、そして車中泊した道の駅「日義木曽駒高原」を通過して、旧藪原宿を通り過ぎたあたりで木曽川から離れ、中央分水嶺の鳥居峠を鳥居トンネルで潜り抜け、R19は日本海に流れる信濃川の支流の奈良井川に沿って走り始めた。
道の駅の「奈良井木曽の大橋」と「木曽ならかわ」には立ち寄らず、しばらく走って木曽路を抜けて、松本盆地の南端の塩尻に入った。
塩尻市街に入るとすぐ、篠ノ井線の跨線橋を渡り、その先の交差点で、R19は左折し、進行方向は真北になった。
R19を北上して行くと、いつも目に付くのは「EPSON」と書かれた巨大なビルで、美しい建物だ。このあたりでは特に目立ってしまう。
ここがエプソンの本社ビルだと思っていたが、ひとつの事業所のビルだとあとで知った。地元の人を除いて、R19を走る私のように旅をしている人の多くは誤解しているのかもしれない。ちなみに本社は、諏訪湖の東側にあるのだが、この塩尻事業所の方が本社建屋の雰囲気を感じる。
更に北上して松本方面に向かうと、R19は次第に渋滞の様相を見せてきた。その渋滞の中で、今からの行先を考え始めた。
たとえば、R19をこのまま走り続けて長野方面に行くならば、既に16時を回った今からでは、次第に暗くなってしまう山間は走りたくない。一方で、北上して安曇野を抜けるならば、車中泊は、前回と同じ道の駅「白馬」になりそう。
そういえば、明日はどこを旅するのかも決めていない中で、この時間から、かなりの距離を走るのは無鉄砲過ぎるし、それに、色々な場所で楽しんだ今日、多少のくたびれ感もあり、そろそろゆっくりしたい気持ちが募ってきた。
その結果、安曇野を北上するR147の東側の高瀬川(槍ヶ岳周辺に源を持ち、安曇野を流れたのちに犀川に合流)の対岸を、同じく北上する安曇野アートラインと呼ばれる県道51号線沿いには道の駅「池田」があり、さほど遠くないことから、そこに向かうことに決めた。
そう決めたとき、翌朝、晴れているならば、道の駅あたりから、朝日に映える常念岳を見ることができるのではないかと、ひとつの楽しみが湧いてきた。
以上のあれこれと考えた内容を文章にするとかなりの文字数になったが、その実際に考えた時間は多分、1分も掛かっていないはずだ。
色々と考えを巡らして結論に至るまではかなり速かったが、渋滞の中で「ジル」の車速は遅いままで、「午後3時までに車中泊場所を決めて、5時までに到着する」という「マイルール」には外れてしまった。
この「マイルール」とは、これまでの「キャンピングカーの旅」の経験で身に付いたもので、ほぼ間違いのない結果を導いてくれる。たとえば、道の駅の閉店時間の早いところは5時なので、その前に到着すれば、夕食用の地のモノのお惣菜を買うことができるといった具合だ。
「気ままな旅」を標榜する旅のスタイルを追求しようとしている中に、「マイルール」が存在するのは少し矛盾しているようだが、いい感じの「気ままな旅」にしたいための、ちょっとした押さえどころだ。「気ままな旅」は「変化に応じた最善策を選ぶ旅」で、決して「いい加減な旅」ではないと思っている。
安曇野アートラインを走っている時、対向車のキャンピングカーに挨拶をしたところ、男女揃って、かなり大きな挨拶を返してくれた。それだけでも嬉しいのだが、そのキャンピングカーが静岡ナンバーの同郷の人だったことが更に嬉しかった。ひょっとして、彼らは私の「ジル」の浜松ナンバーに気づいた反応だったかもしれない。
道の駅「池田」に到着した。
駅舎の営業時間はもう終わっていて、夕食用の地元の美味しいものを買うことができなかった。
駅舎の隣がトイレだが、その隣にコンビニがあったので、夜間、コンビニに来る客のクルマのドアの開閉音やエンジンを掛ける音が聞こえてきそうなため、道の反対側にあった駐車場に「ジル」を移動させた。そこは「信州あづみ野・池田町ハーブガーデン」の駐車場で、トイレがあった。ラッキー。
そこで小休止していた男性に、このあたりの温泉について訊いたところ、丁寧に応えてくれた。
駅舎が既に閉まっていたことを話すと、近くの食品スーパーについても教えてくれ、更には、車中泊するならば、この県道は、R19から安曇野を経由せずR147に抜ける裏道なので、夜でもトラックが走ることも教えてくれ、その他にも色々とアドバイスをくれた。サンクス。
この駐車場には既に、長距離トラックがエンジンを掛けて停まっていたので、出来る限り離れた場所に「ジル」を移動させた。
夕食は、ぶたジン(味付き豚肉)を炒めて、焼いた椎茸にしょう油と、バターがなかったのでマーガリンを塗って、生野菜の替わりに野菜ジュースを飲んだ。ぶたジンの量が多かったので米は食べず。
それでも食べ過ぎて苦しかったので、夕食後に県道をウォーキングしながら、夜空を見上げたが、星はほとんど見えなかった。多分、曇っていたのだろう。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州・富山の旅 作家名:静岡のとみちゃん