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静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
novelistID. 69613
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑫信州・富山の旅

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 しっかりと私のことを憶えていた彼との会話は先ず、取材させて頂いた際の懐かしい話、今現在のミツオカのベストセラーモデルのバディの話、セカンドライフに入った私の「キャンピングカーの旅」の話など、アポも取っておらず、勤務中に突然に訪ねてきたおじさんとの時間を取って頂き、ホントにサンクス。
 最後に、ゲートの中で「ジル」を駐車したあたりで撮らせて頂いた写真については、どこに掲載して構わないとの承諾を頂き、光岡自動車をあとにした。
 その時、A氏が今乗っているミツオカのクルマを訊き忘れたことに気付いた。ヒミコからバディに乗り換えているかもしれない。

 JR富山駅を目指し、神通川(じんずうがわ)の左岸の土手の道を走っていると、対岸の河川敷らしい場所にある富山空港が見えてきた。駐機している飛行機はなく、地方空港らしい風景だ。それは、大都市の主要空港から飛んで来た飛行機が着陸してからすぐに、復路に就いてしまうためだからだ。

 神通川を渡って左折して北上するR41に入った。やがて、左の車窓から富山城址が見え、間もなく正面にJR富山駅が見えてきた。それは私の知っている駅舎ではなく、北陸新幹線の開通で新しく建て替えられた駅舎だった。それに伴い、R41界隈も、色々な部分が新しくなっていたのかもしれないが、過去の佇まいの記憶がなく、よく分からなかった。

 富山駅からは北上し、富山湾沿いの道に出てからは西に走った。富山湾が見えるのかと思ったが、民家や堤防、防風林などがあり見えなかった。
 やがて新富山港の入口に架かる白い斜張橋(しゃちょうきょう)の新湊大橋(しんみなとおおはし)の主塔が見えてきた。近づくにつれ、その巨大さが分かってきた。橋に続く高架のアプローチに入ると、次第に高くなり、その左右には素晴らしい景色が広がっていた。海側には小さな入り江があり、そこに帆船が停泊していた。停泊している帆船を上から見下ろすのは初めてだった。

 実は、静岡県の清水港に入港した帆船をパラモーターのフライトで、眼下に見下ろすチャンスがあったが、何かの用事でフライトできなかった。
 今、眼下に帆船が見えることが嬉しくて、嬉しくて、橋を渡り終えると、ぐるりと回るループ橋で一気に地上に下りて、その先の交差点を左に折れ、帆船が見える公園の駐車場に入「ジル」を停めた。

 帆船に向かって歩いてゆくと、新湊大橋を背景に帆船が美しく見え始め、空気がまあまあ澄んでいる今、湾越しに立山連峰の剣岳が見えており、その三つの被写体を入れた写真を何枚も撮った。
 帆船まで行くと、それは恒久係留されている海王丸だと分かり、内部見学ができるミュージアムになっていた。
 寄港して停泊しているとばかり思って急いでここまで来たのだが、急ぐ必要はなく、少々ガッカリした。冷静に周囲を見れば、人影は少なく、寄港中とは思えない状況に気が付かなかった私自身に呆れてしまった。それに、事前に調べておけば、心が躍ってからすぐに落胆することはなかったはずなのに・・・。

 ここは、かつては「海の貴婦人」と呼ばれた帆船の海王丸を中心とした「海王丸パーク」で、休日には、老若男女、多くの人がやってきて、幾つものエリアでのんびりと憩う場所なのだろう。加えて、新湊大橋、立山連峰などの素晴らしい景色が広がっていて、皆に愛される素敵なベイエリアなのだろう。

 海王丸を遠くから、近くから眺めているうちに、ふと我に返り、今夜の車中泊の場所をまだ決めていなかったことを思い出した。
 私の「キャンピングカーの旅」にはルールがあり、と言っても、拘束感はないし、違反しても、私が私にペナルティを課すことはない。その中のひとつに、「午後3時までに宿泊場所を決める」という項目がある。
 既に午後4時を回っていたので、「海王丸ミュージアム」は次回の旅のときにして、今からは、富山湾沿いにある二つの道の駅の、先ずは、道の駅「雨晴(あまはらし)」に向かうことにした。

 川をふたつ渡り、雨晴トンネルを抜けると、山が富山湾にまで迫っている場所では、今走っているR415とJR氷見線が窮屈に並走し、その先に見えたのは、人気のテラスのある真っ白な道の駅の建物で、その外観は道の駅とは到底思えず、海を見渡せるホテルか何かのようで、おじさんの私は似合わない。

 道の駅の駐車場に「ジル」を停めてからすぐ、砂浜に下りた。
 ポスターなどでよく見る「手前に有磯海(ありそうみ:女岩)の岩礁、奥には富山湾越しに雪化粧した立山連峰」の写真は、この雨晴海岸から撮られた風景で、ここは絶景スポットだ。その写真の右側に、義経岩も入れた写真もあるが、前者の方が有名だ。
 ここは、俳聖松尾芭蕉の「奥の細道」で詠んだ景勝地で、往時を偲ぶ風景地として評価されている。

 ところが今、立山連峰には雲が掛かっており、残念ながら、海に浮かぶ有磯海の写真になってしまった。
 潮が幾分引いているようで、砂浜から岩場を回って、義経岩の裏側に行き、その先の砂浜を少し歩いた。
 道の駅のすぐ下の砂浜に戻ってきた頃、能登半島に沈む夕日で、富山湾の上の雲が幾分、夕陽色になってきたが、その空を見上げているうちに、夕陽色はグレーになり、夜の帳が始まろうとしていた。

 白い駅舎の2階の展望デッキに登った時、再び雲の色に変化が起きていて、その写真を撮りたくなったものの、デッキからのカメラアングルはイマイチなので、急いで砂浜まで下りたが、最高のタイミングが過ぎていた。それでも写真を撮ったが、まあまあの出来映えだった。

 ネットの情報によると、これから寒くなるにつれ、発生率が高くなる「けあらし」という海面上に立つ霧と、雪に覆われた立山連峰のコラボレーションは絶景とのこと。
 そのリアルな景色を是非、見てみたいものだ。また来るしかない。時間の余裕はあるし、まだ健康体だ

 今夜の車中泊場所については、この道の駅の駐車場はあまり広くないため、車中泊のクルマで混雑するかもしれないと思い、少し先の、広い駐車場のある道の駅「氷見」に向かうことにした。

 思い出したことがもうひとつあった。所持金が2,000円になっていたことだ。
 実は今日一日、信用金庫(信金)を探していたのだが、目にしたのは、富山銀行等の銀行ばかりで、信金は見当たらなかった。
 氷見市内に入ってから信金を発見し、まだ現金主義の私は、旅の資金を補充することができた。

 信用金庫とは、信用金庫法に基づき、地域の中小企業や住民等を対象として、地域の繁栄を図り、相互扶助の理念に基づく金融機関で、全国に254もの信用金庫が存在している(2021年現在)。
 そのどこで現金を引き出しても、手数料が掛からないのは、旅好きな私にとってはたいへん嬉しい。

 道の駅「氷見」に到着した時は、既に駅舎のショップの営業時間は終わっていた。
 ちょうど1年前に妻とふたりで、キャンピングカーで回った能登半島の旅で立ち寄った際は、駅舎内で、富山湾で獲れた魚を見て回り、氷見うどんを食べて、駅舎の海岸側の比美乃江公園(ひみのえこうえん)の展望台に登り、最後は足湯を楽しんだので、残っているのは、道の駅に併設された温泉「総湯」に入ることのみだ。