悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州・富山の旅
■9/26(4日目):新潟県糸魚川 ⇒ 富山県滑川市(道の駅「ウェーブパークなめりかわ」)
【走ったルート】 道の駅「マリンドーム能生」から東側の道の駅「うみてらす名立(なだち)」まで走り、そこを折り返し地点にして糸魚川に戻り、「ジオラマ鉄道ステーション ジオパル」、「フォッサマグナミュージアム」に立ち寄り、大火跡の糸魚川市街地を巡ったあとは、北アルプスが日本海に落ち込む「親不知」に立ち寄り、富山湾に面した道の駅「ウェーブパークなめりかわ」で車中泊。【走行距離:116km】
【忘れられない出来事】 富山湾産の「子持ちホタルイカの沖漬け」を夕食用のおかずにと買ったが、「ジル」に乗ってからすぐ、封を開けて、ひとつ食べてしまった。あっさりしたしょう油味が、「子持ち」の分、少し芳醇な感じがした。これぞ富山の味か。
イカの数え方は確か、いくつかあったはずで、調べたところ、泳いでいる間は「匹」、水揚げされると「杯」、干すと「枚」とのこと。瓶(ビン)に入っていた沖漬けのホタルイカは泳いでいるようなので、その数え方は「匹」になるのだろうか。
【旅の内容】 明け方、「ジル」の屋根に当たる強い雨の音で目が覚めた。バンクベッドの天井の高さは約60cmなので、そこから雨音がピシピシと聞こえてくる。この旅で初めての雨の朝を迎えるのかと思っているうちに、再び眠ってしまった。
そして、地域の同報無線の6時の放送で目が覚めた。その頃には雨が止んでいて、日が差すときもあったが、今日は曇りだ。
初めてのことだが、朝から焼きそばを作った。
と言っても、沸かした湯を注ぐだけでできるカップ焼きそばだが、少し余分に湯を沸かしたので、それでインスタントコーヒーも作った。そして、手間いらずのバナナ。超簡単な朝食を取りながら、今日の行先を考えた。
日本のあちらこちらを走っていると、まだ走っていない道があれば、そこを走りたくなるもので、欲を言えば、同じ道でも、上りと下りでは見える景色が異なるため、少なくとも2回は走りたい。さらに季節を考慮すると、何回も走ってこそ、その道の周囲の景色を理解したと言えそうだ。
そんなことを思っていると、まだ走っていないこの糸魚川市から上越市にかけての日本海沿いのR8が目の前にあるならば、走りたくなってしまった。ただ、今日は、曇っているため、その半分くらいを走ることにした。
具体的には、道の駅「マリンドーム能生」から東側に、R8のシーサイドラインと呼ばれる区間を走って、道の駅「うみてらす名立(なだち)」までとした。
頚城(くびき)山塊から続く山が日本海に落ち込む景色は、かすかな記憶になってしまった北海道の広尾から襟裳岬に続く黄金道路の景色や北海道の留萌から羽幌に向かうオロロンラインの景色に似ていた。
山が海に迫る場所の海沿いの道を走るならば、どこも似たような景色になるのかもしれないが、そう書いてしまうと、日本の各地の風景に失礼な気がする。プロの旅人(?)は多分、風景の機微に通じているのだろうが、私はまだのようだ。
そして海を見た。今日の日本海から打ち寄せる波は、私の住んでいる太平洋の遠州灘の波に比べると、おとなしくて、かわいい。
しかし、冬になると、遠州灘の波をはるかに凌ぐ荒々しく打ち寄せる。その映像をTV等で見たことがあり、そこを「ジル」で走るには、風をまともに受けてたいへんそうだし、あとで表面に付いた塩を洗い流す必要もありそうで・・・、荒々しい波が打ち寄せる時のR8は走らないのが良さそうだ。それ以前に、荒天時は通行止めになるやもしれない。
そんなことを思いながら走っていると、道の横から砂浜の上にかけて、朽ちた木造の小屋が並んでいた。2階は道に面していたが、その1階は何かの倉庫で、多分、舟の倉庫の舟屋か? その佇まいは印象的で、絵画の題材には最高の景色だ。
それにしても、冬は荒れる日本海に面している舟屋とは、信じ難い景色だった。
そこを通過しながら、この場所の「○○舟屋遺跡」などの看板を探したが、見当たらなかった。
海沿いのR8を走るとやがて、道の駅「うみてらす名立(なだち)」の案内標識が見えてきた。それから間もなく、道の駅とは到底思えないほどの大きな建物が見え、その先の信号を左折して、道の駅の駐車場に入った。
駅舎のショップは食彩鮮魚市場で、多くの海産物が並んでいた。そこに、「子持ちホタルイカの沖漬け」があった。「ホタルイカの沖漬け」は大好物だが、「子持ち」になると、味がどう変わるのかと思いながら、夕食用にと買ってしまった。もちろん、富山湾産のホタルイカだ。
何やら珍しい清酒があり、たった今、入荷したとのことで、その言葉に誘われてしまい、つい買ってしまった。アルコール好きの息子への土産にちょうど良い。
この道の駅には温泉もホテルも、プールもあり、リゾートのような感じの施設が併設されていて、だから大きなサイズの建物だと分かった。
「ジル」に戻ってから、すぐに運転しようかと思ったが、先ほどの朽ちた木造の舟屋が気になり、調べることにした。
スマホではなく、パソコンで調べることにしたので、運転席から背もたれ越しにダイネットに移った。
ポケットWiFiのスイッチを入れて、ネット検索を始めた時、先ほど買った「子持ちホタルイカの沖漬け」がどうも気になり、封を開けて、1匹摘まんで口に入れたところ、期待以上の美味さだった。ご飯が欲しくなる。
ネットで調べたところ、あれは「旧筒石漁港舟屋群」だった。その写真も検索したところ、丹後半島の伊根の舟屋の多くは、浮いたままの船を収納できるが、ここの舟屋は、海面から船をスロープに引き上げ、舟屋に納める構造だった。
天然の穏やかな湾に面した伊根に対して、ここは、日本海に面しているので、舟の収納方法に大きな違いがあるのだろう。
画像検索したときに、舟屋群の西側の筒石の集落の写真も出てきた。
山が迫る狭い土地のためか、3階建ての家屋が多く、路地は狭い。この佇まいも絵画の題材に良さそうだ。写真に撮るならば、生活臭が見えるような生の路地写真になるのだろう。
そこをGoogle map のストリートビューで見てみた。路地は生活の道そのもので、興味が湧いたものの、「ジル」は通行できそうにない道幅のようで、加えて軒先が「ジル」に接触しそうで、通行は無理だと判断した。
その代わりに、この路地をゆっくりと散策したくなった。そのタイミングは晴れた日の、漁船が戻って来る早朝で、人の往来があって、路地のリアルを見ることができる時がいい。次回の旅のときのひとつの楽しみとして確保しておくことにした。
後日、TVの旅か鉄道の番組で見たのは筒石駅のトンネル内のホームの映像で、そこは地上から40mの深さのある珍しい駅だ。
以前から、地下深いトンネル内にホームがある駅の存在は知っていたが、それが、この筒石にあるとは知らなかった。
かつての北陸本線は日本海に面していたが、度重なる地滑りなどの問題があり、その対策としてのトンネルが掘られたが、住民の強い要望で、改札口から上りのホームまでは280段の階段、そして下りのホームまでは290段の階段のある駅ができたという。
筒石の集落を散策する旅の際に、この駅も訪れることに決めた。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州・富山の旅 作家名:静岡のとみちゃん