悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州・富山の旅
それもそのはず、姫川は糸魚川静岡構造線にほぼ沿って流れ、その西側は後立山連峰(白馬連峰)の支脈で、その稜線は長野県と新潟県の県境であり、一方の東側は、妙高山、火打山、焼山、雨飾山(あまかざりやま)から成る頸城山塊(くびきさんかい)で、それら東西の山々からの土砂の流入も多く、豪雨による土砂災害が絶えず、R148やJR大糸線(長野県松本駅~新潟県糸魚川駅)が不通となることがたびたびあり、暴れ川として知られているような場所だ。
それでも、このR148は、古くは「塩の道」とも呼ばれた千国街道に沿っており、当時は、信州を支えた日本海との重要な交易路だった。次回は、千国街道を当時の面影を探しながら走ってみるのもよさそうだ。
厳しい山間の道が終わり、少し開けた場所に出てから間もなく、北陸自動車道と北陸新幹線の下を潜ると、日本海が見えた。
先ほどまでの厳しい下り勾配の山間の道だったのが嘘のようで、無事に日本海にたどり着いたことに安堵する気分だった。
予定ではR8を西に向かって、北アルプスが日本海に落ち込むポイントに行くはずだったが、糸魚川といえば「ヒスイ海岸」、今、青空が広がり白い雲が見えて気持ちの良いこともあり、「ヒスイ海岸」に行ってみようと、ハンドルを右に切り、東に向かった。
海岸沿いに「ジル」を停める場所を探しながら走っていたところ、「ヒスイ海岸」と書かれた大きな看板が立っていて、そこは、海沿いに縦列に駐車するような細長い駐車場で、「ジル」を停めた。
そこから「ヒスイ海岸」の景色の写真を撮ろうとしたが、テトラポッドが邪魔をするので、駐車場から砂浜に下りた。そこは小さな石ころの海岸だ。
時折、大きな波が打ち寄せ、そこにいた子供らはキャーキャー騒いでいて、その景色は一服の清涼剤のようで、暑い日差しを浴びながら、気持ちの良い海風に吹かれながら、その光景を暫く眺め、数枚の写真を撮った。
そういえば、NHKで放送されていた「グレートトラバース 日本百名山ひと筆書き」の主人公で、それを達成した田中陽希さんが、この「ヒスイ海岸」を歩いたことを思い出した。
彼の偉業は、日本列島に点在する日本百名山の登山を、南から北へ、徒歩と海峡区間はカヤックで移動しながら、全行程7,800kmを208日で踏破して、北海道の利尻島の利尻山(利尻富士)で完結したことだ。その後、彼は二百名山にも三百名山にも登ったスーパーマンだ。
前述のように、学生の頃、私は、九州の山々を登った経験があり、登山は趣味のひとつだった。この「グレートトラバース 日本百名山ひと筆書き」の番組を見ながら、彼の前人未踏ぶりを毎回、羨望を越えて、感服しながら見ていた。
「ヒスイ海岸」の写真を撮った後に、ふと足下を見ると、緑がかった丸い石があり・・・、というのは冗談だが、この無数の石の中から、ヒスイを発見するのは大変難しいように思えた。
そもそも、ヒスイは姫川の流域で産出され、流れ出たヒスイは川を下り、糸魚川市内のこの海岸に打ち上げられるとのこと。海岸で1日かけて探せば数個のヒスイを拾うことができるようで、ときにはルビーやサファイアが見つかるとのこと。たいへんリッチな海岸だ。ヒスイ海岸長者がいるのかもしれない。
「ヒスイ海岸」の景色を堪能していたとき、この旅の初日に車中泊した道の駅「日義木曽駒高原」で出会った静岡ナンバーのバンコンの旅人が勧めてくれた道の駅「能生(のう)」を思い出し、ここからはさほど遠くなく、そこに向かうことにした。
山が海に迫っている狭い場所では、右の車窓には、えちごトキめき鉄道の日本海ひすいライン(北陸本線の一部)、左側は、海岸と並行して一列に並ぶ民家の景色が続いた。
鉄道がトンネルに入ってからのR8は、海の真横を走り始め、その先で能生漁港を通過するとすぐ、道の駅「マリンドーム能生」に到着した。
ここには、日本一のベニズワイガニ直売所「かにや横丁」、加えて、地場の新鮮な魚介類が揃う「鮮魚センター」の店舗がL字の形で並び、ものすごい数の客が押し寄せ、軒先のテーブルで食べている。殆どの人がカニを食べていて、小さな子供が、カニ、カニと親におねだりしている。初めて見る道の駅の「買い食いの風景」に最初は驚き、たじろいだが、焼き牡蠣(カキ)を食べたのちは落ち着いたのか、数軒の店を回って、夕食用のおかずを物色し、刺身とエビフライを買った。
ところで、ベニズワイガニのシーズン(旬)を知らなかったので調べたところ、ほぼ1年中水揚げされるようだが、11月〜1月頃が最も美味しいとのこと。
今は9月だが、それでも、こんなに込み入っているので、この直売所の「かにや横丁」は地域で知られた場所なのだろう。ネットには旬の頃の写真が載っていたが、おびただしい人の数だった。
それに、ここには新鮮な魚介類のメニューが豊富な食事処、地元の糸魚川の全ての酒蔵の酒が揃う酒屋、そして土産物売り場もあり、ものすごく集客力のある道の駅だと思った。
まだまだ駐車場には多くのクルマが停まっていたが、営業時間が終わる頃には、駐車場を退出するのだろう。それを期待して、車中泊する場所を歩きながら探すこととした。
ここには、キャブコンが2台、バンコンが3台、トレーラーが2台、それ以外に車中泊するセダンも見掛けたことから、車中泊人気のある道の駅のようだ。
道の駅の駐車場の奥に「RVパーク」があった。初めて見た。
そこに停まっているクルマは、100Vの電源から延長コードで車内に電気を引き込んでいた。それに、クルマ1台分の駐車スペースが広く、サイドオーニング(タープ)を出して、その下で、椅子とテーブルで何かやっていた。
私の「ジル」にもサイドオーニングがあり、椅子もテーブルも積んではいるが、ひとり旅なので、それらをわざわざ準備するのも、片付けるのも億劫で、「ジル」の広い空間のダイネットの中でゆっくりとくつろげるから、それでよしという状況だ。
それに、サブバッテリーの補助充電用に、屋根に取り付けられ太陽光パネルがしっかりと機能して充電が上手くいっているようで、旅先での100Vの外部電源からの充電は必要ない状況だ。
ネットで調べたところ、区画使用料と電源使用料の合計は2,500円/日なので、夕食のおかず以上の値段だった。
以上から今夜は、RVパークは使用せず、駅舎の横のスペースに「ジル」を移動した。その場所は、幹線道路からも、大型トラックの駐車スペースからも距離があり、近くにトイレが有り、車中泊に適した場所だ。
駅舎の裏は、海に面した広大な芝生広場で、夏の夕方を楽しむ多くの人がいた。間もなく夕陽が沈む時間だ。
そこから、海に沈む夕陽の写真を撮ろうとしたが、漁港の堤防が入ってしまうため、西に移動することにした。しかし、歩いても、歩いても、海に沈む夕陽の写真が撮れるスポットはなく、能生漁港をぐるりと回り、更に歩いて行くと、小さく海に突き出た岬から架けられた赤い橋の先に小島が見え、その先は海水浴場のような景色が広がっていて、そこを写真撮影ポイントに決めた。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州・富山の旅 作家名:静岡のとみちゃん