悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州・富山の旅
コロナ禍の今、殆どのホテルが開店休業の様相だったが、一番奥にあった「星野リゾート 界 アルプス」の駐車場には多くの車があり、活況を呈していた。ブランド力はコロナ禍でも強いようだ。
そのとき、マーケットインやプロダクトアウト、SWOT分析とか、幾つものマーケティング用語が頭に浮かび、それがきっかけで、現役の頃に担当していたユニークな仕事を思い出した。
それは「マーケティング&セールス委員会」の事務局の仕事で、いくつもの事業を展開している勤務先の既存の事業以外で、委員会が設定した複数テーマ毎に、全社員を対象にしてメンバーを募集し、面接を経てメンバーを絞り込み、活動期間は1年間、活動予算が確保され、中には海外出張するグループもあり、検討結果次第では起業も視野に入れたタスクフォース活動を推進していたことを思い出した。
このタスクフォースのメンバーは、所属部門の仕事を遂行しながら、この委員会のテーマにも取り組む「二刀流(two-way player)」だ。私は、主要業務を抱えながら、この事務局を担当していたので、私も二刀流だった。
以上は、大谷翔平選手が二刀流で騒がれる以前のことで、当時は「マルチ人間」という呼び方があったように記憶している。
大町温泉郷の南側の県道を山麓方向に進んだあたりで、小さなかわいい花を付けた畑が広がっていた。白い絨毯だ。そこは多分、そば畑で、そばアレルギーの私はアクセルを踏む足に力が入った。そして、黒部ダム行きのトロリーバスの扇沢駅に向かった。
その途中には美しい赤松林があり、その横はゴルフ場と別荘地だ。暫く進むと自然林に変わり、やがて、路肩に駐車しているクルマが増えてきた。その近くには、登山口があるようで、地図で確認したところ、今朝「北アルプス展望美術館」から見えた朝日が当たっていた爺ヶ岳の登山口だった。
そこから先は、扇沢駅の駐車場が満車になっているためか、道路の横の駐車場に停めるように係員が指示してくるが、扇沢駅を走りながら見るために来たことを伝えて、直進した。
扇沢駅の駐車場はやはり満車で、多くの観光客がいた。
私もそうだが、コロナ禍の非常事態宣言中のシルバーウィークでもある今、ワクチン接種も進み、コロナ新規感染者数が減ってきている状況で、政府の判断の前に、世間は行動を起こしているようだ。
次回、この扇沢駅には、黒部ダムを見たいと言っている妻と来ることにしよう。
黒部ダムを訪れたことのある私だが、それは高校3年生の修学旅行のときのことなので、かれこれ半世紀近くも前のことだ。その間、黒部ダムやその周辺の景色は変わっていないだろう。そう言い切れるほど、しっかりと記憶してはいないが。
扇沢駅から、少なくとも室堂まで、出来れば富山県側の立山駅までを楽しみたいと思っている。
扇沢駅までの急勾配の坂道は車重が3トンもある「ジル」は、ゆっくりと上ってきたが、帰路は逆に、猛スピードになってしまうため、オーバードライブからドライブへ、更にセカンドギヤまでシフトダウンして、ブレーキを多用せずに下ってきた。やがて、勾配は緩くなってきた。
県道沿いにリンゴ畑が見えたので、道の横のスペースに「ジル」を停めて、リンゴ畑を眺めていた。すると、その収穫作業をしている人たちがいたので、リンゴの木の写真を撮る了解を頂き、写真を撮らせて頂いた。
そのあと、作業中の男性に「一番美味しいリンゴをひとつ売ってください」とお願いすると、ここのリンゴ園のオーナーじゃないので、一旦は断られたが、「表面に少し傷がついたリンゴは売り物にならないが、味は一緒ですので、お分けしますよ」と、籠の中のリンゴをひとつ、私に渡してくれた。
それはシナノドルチェという品種のリンゴで、着ているTシャツでリンゴを拭いて、ひと口食べると、美味しい味と香りが鼻孔をくすぐった。三口目くらいで、蜜の多いリンゴだと分かった。
リンゴを食べながらになったが、彼との会話が始まり、この地はそば畑やリンゴ畑が多いこともあり、彼の好物はそばとリンゴという落ちだった。私はそばアレルギーなので、その分、リンゴを食べているという更なる落ちに至った。
会話の最後に、あと2~3週間もするならば、北アルプスの頂上付近は冠雪することを教えてくれた。美味しい味と楽しい会話にサンクス。
リンゴを食べながらの運転になり、R148に戻ってから北上を始めた。
仁科三湖(にしなさんこ:木崎湖、中綱湖、青木湖)は前回の旅で立ち寄ったので、運転しながら、助手席の車窓風景としてチラッと見ただけで、道の駅の「白馬」に向かった。
そこまでの道中、2台のキャブコンとすれ違い、手を振ると反応があり、キャブコン同士のつながりは深いのだろうと思っているうちに、道の駅に到着した。
つい先日、車中泊した道の駅「白馬」なので、「また来たよ」って感じだ。
昼食用におやき(あんこ)をひとつ買って、冷蔵庫に入れておいた別の道の駅で買ったおやき(野沢菜、かぼちゃ)の合計3つを「ジル」の電子レンジで温めて、ダイネットで、野菜ジュースを飲みながら、完食した。
この道の駅は人気があるのだろう、多くのクルマが立ち寄って来る。駐車場はそれほど広くないので、いつも満車に近い状況だ。そういえば、駅舎内のショップの品揃えは良く、レストランでは手打ちのそばが自慢のようだ。
三つのおやきで満腹になったあと、道の駅をあとにした。
栂池高原スキー場の最寄りの白馬大池駅の前を通過し、白馬連峰のスキー場の景色が終わる頃、R148を走る「ジル」の車窓には、日本海に注ぐ姫川のV字谷の景観が始まり、更に走ると、左右の山の斜面が迫ってきた。
そのあたりから、幾つものトンネルが続いた。ハンドルを取られそうになったのは、トンネルの中を吹く風の影響なのか?
トンネル内の走行で緊張したのか、小休止目的で、道の駅「小谷(おたり)」に立ち寄った。
ここのショップは他の道の駅とは異なり、ごちゃごちゃ感はなく、少し高級な感じの雰囲気が広がっていた。それは、黒い木材が使用された店舗づくりがその雰囲気を醸し出しているようで、疲れた身には優しい店内だった。
どこかのカウンターバーのように、棚に並べられた地酒やワイン、そしてカウンターの生ハムに興味を持った。と言って、つまみを食べながらアルコールは飲めないが、妻がいたら、笑顔で楽しい時間を過ごしたことだろう。
レストランは高めの値段設定のようだったが、多くの客が入っていた。
ここは温泉が併設されており、その建屋の奥には、ステンレス製の光輝く親子恐竜のモニュメントがあり、親竜は翼竜を咥えていた。道の駅には似合わない恐竜のモニュメントがある理由を道の駅のスタッフに訊いたところ、彼女もそう思っていたようで、結局、理由は分からず仕舞いで終わった。
この道の駅から糸魚川までのR148は姫川沿いに走り、トンネルや洞門が連続し、それらは内部でカーブしており、加えて、下り勾配は厳しく、気を抜いた運転はできないほどの厳しく険しい道が続いた。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州・富山の旅 作家名:静岡のとみちゃん