悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州・富山の旅
別荘は、避暑や避寒をしながらの「生活の場」であり、自宅と異なる環境での気分転換などの「空間」なのだろう。私は別荘を持っていないので、それらは推測の域を越えないが、そんな感じだと思っている。
一方のキャンピングカーは「旅を楽しむ手段」で、旅に出てからの「移動」や「宿泊の場」であり、腰を据えた「生活の場」ではなさそうだ。
加えて、旅に出ると、少し大袈裟だが「未知との遭遇」を繰り返す。それが旅の神髄だ。ちなみに、今の世の中で、全く知らないことに出会うことはレアなケースだと思うが、殆どは、知識として知っている(スペイン語 saber)ことを実際の体験などで知る(同 conocer)ことなのだろう。そういうことは「別荘ライフ」ではあまりないのかもしれない。これも推測だが。
以前から、別荘とキャンピングカーを比較して、どちらがベターなのかを考えていたのだが、上記の3つのシーンで比較したところ、両者は比較対象ではないことが分かってきた。それに、それぞれに素敵な時間があることもおおよそ分かった。それらに甲乙を付けるのは無意味な気がしてきた。
これまで、キャンピングカーは「走る別荘」だと思って気をよくしていたが、それは自己満足に過ぎないようで、しかし、そう思えなくもないようで、まあ、楽しく走って、楽しく泊って、マイセカンドライフを有意義なものにしていこうとの結論に至った。
そして、元気なうちは「キャンピングカーライフ」を満喫・堪能して、それが億劫になってからは、「別荘ライフ」が良いのかもしれない。その時は、我が家を売却して、どこかの中古の別荘でも買うことになるのかもしれない。呼び名は別荘ではなく避暑地の自宅になるのだが。
そのときは、その自宅から、キャンピングカーで旅に出るというのが「ベストライフ」かもしれない。
最後に、世間の目から見ての比較だが、別荘を持っていると言えば「リッチ」、キャンピングカーを持っていれば「そこそこリッチ」かもしれないが、「気ままな旅が好き」という印象を与えるのだろう。
今は、以上のように思っているが、これからも「キャンピングカーの旅」を続けている中で、考えは変わってゆくかもしれない。
話を「キャンピングカーの旅」に戻そう。確か今、私は「北アルプス展望美術館」の駐車場にいたはずだ。
「ジル」から数台分離れた駐車スペースにクルマが入り、私と同世代くらいの女性が北アルプスの眺望を楽しみながらも、時々、「ジル」の方を見ている。多分、彼女はキャンピングカーに興味があるのかもしれない。そこで、声を掛けた。
彼女は新潟県の柏崎の人で、これまでにかなりの登山をやってきた様で、その山々が見えるこの場所が好きだという。ここで一度、車中泊を経験したこともあり、その時は夜景がきれいだったと話し始めた。
彼女は九州の長崎出身で・・・、私も九州出身なので、学生の頃の九州の山々の登山歴を話すと、彼女は、大分県のくじゅう連峰の中の大船山(たいせんざん)が好きとのことで、私もそうで、確か3回ほど登った記憶がある。この偶然は嬉しかった。
ひとしきり登山の話のあとは、学生の頃にバイクで日本一周した際に柏崎のユースホステルに泊った話など、お互いに共通する色々な話が続き、楽しいひとときだった。
今朝は朝日に映える美しい北アルプスの山々を見て、北アルプスから下山してきた男性との会話、山好きな女性との会話が続き、楽しい旅の1ページになった。
そして、ここまで来たのだから、「北アルプス展望美術館」に入ってみようと思ったが、開館時間まではかなり待たねばならないため諦め、次回の旅で、立ち寄ることに決めた。
大学生の頃、クラシックギターが弾けて、油彩画に興味を持ち、少林拳をやっていた友人Tの影響を受け、熊本城の二の丸公園にある県立美術館で開催された二科展に毎年足を運び、美術の造詣が深くなりたいと思っていた。
しかし、その門も叩かず、何もしないまま、遠ざかってしまった。ちょっと苦い思い出ではあるが、美術展には今でも時々、足を運んでいる。
想い出をたどっているうちに、北アルプスに雲が掛かり始めていた。昨夜、行きたいと思った「長峰山展望台」に向かうことを諦めることにした。これも次回の旅にとっておくことにした。
今日の2ページ目は、前回の旅で、夏の白馬連峰のスキー場のゲレンデを見て回ったので、それらを眺望しながら走ったあとは温泉に入り、日本海に抜けて、北アルプスが海に落ち込むあたりを見ることに決めた。
「北アルプス展望美術館」をあとに、安曇野アートラインを北上し、R147に合流した。ここは立山黒部アルペンルートの長野県側の玄関口の信濃大町で、県道45号を上っていけば、その起点となるトロリーバスの発着所の扇沢駅にたどり着く。
その道を走りながら気付いたのは、対向車線でのネズミ捕り(スピード違反の取り締まり)で、対向車が近付いてきたので合図を送った。分かっただろうか? その先にある大町温泉郷の「薬師の湯」に今、向かっている。そこは、ネット検索で探した日帰り温泉だ。
ちなみに、キャンピングカーはそもそも、速度を出して走るクルマではなく、特に私はのんびりと車窓を見ながら走るため、先行車との車間距離はいつもかなり開いていて、ほぼ制限時速で走っているため、ネズミ捕りを感知するレーダーは不要で、取り付けていない。
大町温泉郷の看板が立っている交差点で右折するとすぐ左側に「薬師の湯」の案内が出ていた。正しい名称は「アルプス温泉博物館 湯けむり屋敷 薬師の湯」で、この温泉郷の源泉は、近くの高瀬渓谷にある葛温泉から引湯されている。
広い駐車場にジルを停めて、「薬師の湯」の趣のある入口から中に入ると、北アルプスの山々の写真が幾つも掲げられており、その麓にある温泉地の雰囲気に包まれた。
先ずは露天風呂に漬かったところ、湯の中で手足の緊張が溶けてゆくようで、最高に気持ちが良かった。ちょっと早いが、秋風が顔を撫でているようで、湯につかった体と顔の温度差が気持ち良い。暫くしてから、内湯にも漬かったが、やはり露天風呂の方が好きだ。
身も心も癒してくれる日本の温泉、温泉文化は最高だと、つくづくそう思ってしまう。ただ、この湯に漬かりながら、北アルプスの山並みが見えなかったのはちょっとだけ、残念だった。
この温泉は、北アルプスから下山した人が入る温泉の様で、そういう感じの人があちらこちらにいて、その時間帯にちょうど居合わせたのだろう。気のせいか、キャンピングカーの旅人の私は、手足を伸ばして湯につかっているのに、彼らを前にすくんでしまいそうな感じだった。
湯上りの際に気付いたのは、冷房のない脱衣所でも暑くなく、そのいい感じ室温に、少し早めの夏の終わりを感じた。
「ジル」に戻ってからは、冷蔵庫で冷やしていたコーラを取り出して飲んだ。美味かった。
飲みながら思い出したのは、「薬師の湯」の割引券を持っていたことで、たかが50円の割引なのだが、使うことを忘れたことが残念だった。
初めて来た大町温泉郷だったので、温泉街を「ジル」で回ってみた。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州・富山の旅 作家名:静岡のとみちゃん