欲による三すくみ
といってもいい。
そもそも、
「人間は埋まれば柄に平等だ」
などという、ありえない思想を騙っている連中がいるが、そんなバカなことがあるはがない。
なぜなら、
「民主主義が、自由競争の時代なので、強いものは大きく儲けるが、弱いものは、強い者の踏み台という形で、何とか生きることができるくらいの悲惨さだったりする」
といえるだろう。
しかも、中には、
「生まれながらに病気を持っている」
という最初からハンデのある人もいるし。親の貧富が、そのまま育っていくうえで影響されることになるのだ。
確かに、
「裕福な家に生まれれば、それが幸福なのか?」
と言われればなんともいえないが、
「お金があるに越したことはない」
ということであり、しかも、
「お金というのは、どれだけあったとしても、多すぎるということはない」
ということで、そこでも、
「何が平等なのか?」
ということになるわけである。
だから、老人の間でも、
「貧富の差」
というものは、かなりのものがあり、その差によって、
「裕福な老人が狙われる」
ということになるのであろう。
ただ、政府は、
「これまで世の中を支えてきた老後の人たちを、まるで、姥捨て山であるかのように、老人を葬っている」
といってもいい状況で、その中でも、老人を狙う犯罪が横行していて、それを取り締まることもできないという、
「政府」
であったり、
「警察」
というものを、
「税金泥棒」
と揶揄して、何が悪いということなのか?
そう思うと、
「今がどういう時代で、その中で生き続けるのが、欲望に満ちた世界だ」
ということになるのであろう。
そして、まず最初に、長門は、一人の奥さんを脅迫した。
それは、そんなに難しいことではなかった。というのは、奥さんが、
「以前に万引きを試みた女性の母親だった」
からであった。
母親は、長門に脅されることで、完全に、
「長門の言いなりだった」
長門に脅かされた母親が、どうして言いなりになったのか、それが、
「自分の保身のためなのか」
それとも、
「娘のためだった:
ということなのか、それとも、
「家族の名誉を守るだめだった」
ということなのか、それは分からない。
しかし、母親は言いなりになった。
そして、それをいいことに、今度は娘への脅迫も進めた。娘にも母親の犯行を騙り、母親が自分に言いなりになっていることをいうと、娘も逃れられなくなった。
娘は母親のような気持ちとは違い、完全に、長門という男に怯えていたということなのだろう。
まだ高校生くらいの女の子なので、大人に抗うことができなかった。しかも、家では、口うるさいとはいえ、大人として恐怖すら感じている母親が、言いなりになっていると聞くと、どうすることもできなくなったのだ。
それを考えると、
「娘が、どのようにしてお金を調達するか?」
ということも、長門のいう通りにしないといけなかった。
長門が、懲戒解雇となったのは、味を占めて他の人にも同じようなことをしようとしたのが、悪かったのだが、それは、別に長門にとって、別に構わなかった。
この金持ち二人の母子から、搾り取るだけ搾り取るつもりだったので。
「警察に捕まりさえしなければそれでいい」
ということであった。
最初は、
「余罪を調べられればどうしよう」
と思っていたが、案外警察は、通り一遍の捜査しかしなかったのか、この母子にまではたどり着かなかった。
しかし、それが却って、今度は長門にとっての、
「鉄壁な計画」
となったのだ。
警察は、一度調べて、
「他に余罪がない」
ということであれば、この事件を最初は起訴すべきかと考えたが、被害者側が、世間体を恐れてか、
「起訴しないでほしい」
と言ったことで、不起訴になり、結局、初犯ということもあり、会社を懲戒解雇になるということもあって、それ以上踏み込むことはなかった。
だから、ほとぼりが冷めた時から、今度は、また母子への脅迫を始める。
その時には、
「もう俺には怖いものもなければ、警察が一度捜査しているので、警察が捜査をすることはない」
といって、二人に迫れば、二人は、それを聞いて、震え上がった。
「一度、男の言いなりになった。そして、それぞれに、母も、娘も脅迫されているということが分かってしまうと、世間体というだけではなく、家族だからなのかどうか自分たちも分からないが、かばうという気持ちになっていたのだ」
しかも、お互いに、
「自分のせいで、娘が」
あるいは、
「母親がこの男の餌食になっている」
と思い、自分がここで抗えば、すべてが崩壊してしまうと考え、
「自分さえ我慢すれば:
と考えていたのだ。
長門とすれば、そうなってくれるのが、一番のいいことであり、
「警察に疑われることもない」
そして、
「二人をそれぞれ脅迫することが、お互いに抗うことのできない状態に落とし込むことができるのだ」
ということで、保身にもつながると思ったのだ。
それを考えると、
「長門が、懲戒解雇になった」
ということも、別に困ることではなかった。
「俺は、この二人から、一生分の金をゆすり取ってしまえばいいんだ」
ということだったからだ。
「しょせんは、向こうが勝手に感じた欲による天罰が下ったんだ」
と考えたのだ。
大団円
長門は、自分の人生が少なからず、
「理不尽だった」
と思っている。
就職の際も、
「自分よりも、成績の悪いやつが、自分よりもいい会社に入社して、自分は、何とか百貨店に入社できたが、それも、コネがあるかないかというだけのことで、特に、家族のコネであったり、お金の力で生きてきたような人間に、憎しみを感じていた」
のだった。
だから、この母子のように、
「本来なら、何不自由することもなく生活できているにも関わらず、結局、それに甘んじた生活をすることで、自分たちが、万引きをしてこのようなことになる」
ということを、許せなかった。
最初は、
「脅迫」
とまでは思っていなかったが、
「どうしても、家族に知られたくない」
ということで、身体を預けることで、その罪を許してもらおうとした。
それを見た時、
「無性に腹が立つ」
と同時に、
「立場さえよければ、世の中どうにでもなるんだ」
という思いから、
「この女利用してやろう」
と思った。
娘の方も、
「女の性」
ということから、一度関係ができると、そこは、すでに言いなりだった。
ひょっとすると、
「長門の身体におぼれたのかも知れない」
だから、脅迫をして、金のために風俗に身を落としたというのも、
「金のためだったのか?」
それとも、
「男のひもになってもいい」
という気持ちがあったのか分からない。
それだけ、
「世間知らずの娘だった」
といってもいいだろう。
母親にしても、そうだった。
結局、長門は母親も自分のものにして、母子ともに、
「完全な操り人形にした」
のだった。
お互いに脅されているということは知っていても、それぞれ、
「この男は自分のもの」